サリドマイド胎芽症患者の健康、生活実態の把握及び支援基盤の構築

文献情報

文献番号
201724016A
報告書区分
総括
研究課題名
サリドマイド胎芽症患者の健康、生活実態の把握及び支援基盤の構築
課題番号
H29-医薬-指定-006
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
日ノ下 文彦(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 腎臓内科)
研究分担者(所属機関)
  • 大西 真(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 消化器内科 )
  • 田嶋 強(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 放射線診断科 )
  • 今井 公文(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 精神科 )
  • 田上 哲也(国立病院機構京都医療センター 健診センター)
  • 長瀬 洋之(帝京大学医学部 内科)
  • 芳賀 信彦(東京大学医学部 リハビリテーション医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
12,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「サリドマイド胎芽症(サ症)者の人間ドック健診」を継続しながら、整形外科・リハビリ科領域の問題にも重点を置き今後の診療・支援体制を強化することにした。全国的な第2次健康生活実態調査を実施し、今後進行が予想される老化や初老期の問題を把握して、研究班の活動、診療の資料にすることも目的とした。研究班の主な成果や活動内容はサ症研究会ホームページ (HP) 等を通じて積極的に情報発信するとともに、サリドマイド薬禍を風化させない為の活動も継続する。前年度に作成した「サリドマイド胎芽症診療ガイド 2017」の英訳や欧州の専門家との交流など国際展開も推進する。
研究方法
1.人間ドック健診と「こころの健康 QOL(生活の質)に関する検討」:国立国際医療研究センター病院、帝京大医学部附属病院、京都医療センターにてサ症者の人間ドック健診を継続し、受診者に精神科アンケート調査も実施する。
2.健康ミーティング:各地域(5ブロック)で開催されるサ症者の交流会(「健康ミーティング」と称す)にリハビリの専門家と研究班長が参加し、サ症者の様々な疼痛や苦痛、ADLの障害等について直接耳を傾け個別調査を実施する。
3.第2次健康生活実態調査:厚労省が定期的に実施している「国民生活基礎調査」に準じたアンケートを全国のサ症者に送り、匿名化された回答を分析して、結果を2018年度内に公表する。
4.国際展開と広報活動:①2017年3月に刊行した「サリドマイド胎芽症診療ガイド 2017」の英訳に着手。②ドイツで開催される国際シンポジウムに研究班スタッフを派遣。③サ症研究会HPをアップデート。④できる限り学会発表、総説・論文投稿を実施。⑤海外のサ症研究者、専門家との交流を継続。
結果と考察
1.健診受診者は総数24名(うち20名がリピーター)であった。Body Mass Index でみると肥満の範疇に入るサ症者は少ないものの、体脂肪率高値、脂質異常症、脂肪肝は比較的多く、体内脂肪の蓄積傾向が確認できた。見た目の肥満はなくても脂質異常症等 生活習慣病の治療、予防は今後重要である。血圧測定では、上肢で測定できないサ症者に対し下肢血圧で上肢収縮期血圧を推測するのは臨床的に意義が大きい(上肢で測定できないサ症者でも高血圧の存在を確認可能)と思われる。健診受診者においてCT や腹部超音波検査により、脊椎の異常や脂肪肝、無胆嚢症など、日常診察で捉えられない問題点を指摘できたのは有意義であった。
2.研究班長、リハビリ専門医と理学療法士がサ症者の健康ミーティングに参加し日常生活上の問題点を聴取したほか、リハビリの専門家が個別相談(面談)、診察を実施した。さらに、今後の健康管理の為の講演や内科系の健康相談も実施した。参加サ症者は計41名で、37名がリハビリ専門医の個別相談を受けたほか、14名が内科の個別健康相談を受けた。
3.第2次「健康・生活実態調査」を2017年12月に実施し、2018年2月までに173名から回答を得た。2018年度内に調査結果を公表予定。
4.国際展開と広報活動:①「サリドマイド胎芽症診療ガイド 2017」を英訳し、翻訳された内容を執筆者と編者で校正した。2018年度内に英語版を刊行予定。②ドイツで開催された国際シンポジウム “Mobility Maintenance of People with Thalidomide Embryopathy” (Sep 23 to 24, 2017, Hamburg, Germany) に研究分担者の芳賀が出席。③サリドマイド胎芽症研究会HPを2018年2月にアップデート。④文献と学会発表: Fumihiko Hinoshita. Consideration of the Light and Dark Sides of Medicines: The Thalidomide Example. Adv Case Stud. 1(1). AICS.000501, 2017. 日ノ下文彦. 編集余滴 薬害について思うこと. 医療 71 (8/9): 372, 2017. 曽根英恵, 大友健, 他. サリドマイド胎芽症者の痛みとQOL(生活の質)に関する研究. 第30回総合病院精神科医学会総会. 富山, 11月, 2017. ⑤英国の The Thalidomide Trust から “Falls and Balance Issues in Thalidomide Embryopathy” の資料提供を受けるなど欧州の専門家との交流継続。
結論
本研究班の活動は多岐に渡るが、計画した活動・研究はほぼ完遂できた。すべての活動を通じて得られた成果や実績を今後サ症者にフィードバックして少しでもサ症者の健康増進、問題の解決につなげていきたい。

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201724016Z