食品用途となるナノマテリアルの暴露による毒性評価に関する研究

文献情報

文献番号
201723022A
報告書区分
総括
研究課題名
食品用途となるナノマテリアルの暴露による毒性評価に関する研究
課題番号
H29-食品-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部)
研究分担者(所属機関)
  • チョウ ヨンマン(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部)
  • 安達 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
  • 西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
  • 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター安全性予測評価部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
10,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、食品・食品容器包装用途として用いられ、経口及び経皮から暴露されるナノマテリアルについて、アジュバント作用などの免疫毒性を含む安全性評価に資する評価方法の整備とデータの蓄積と、食品関連分野を中心としたナノマテリアルの暴露状況やリスク評価に関する国際動向の把握を目的とする。
研究方法
マウスを用いて、コレラ菌由来毒素 (コレラトキシン、CT)並びにそのBサブユニット (CTB)を卵白アルブミン (OVA)と混合物にし、経皮暴露した。その後、抗原であるOVAを腹腔内投与し、アジュバント作用を検討した。また、ヒトで皮膚感作性を示す小麦タンパク加水分解物 (HWP)の抗原作用を検討した。さらに、AgNPの急性毒性について、表面積を考量した投与量 (直径 10 nm AgNP 0.2 mg、直径 60 nm AgNP 1.2 mg、直径 100 nm AgNP 2 mg)で腹腔内投与し、その影響の検討とともに、NAC、Vitamin C (Vit C)、Vitamin E (Vit E)及びL-buthionine-(S,R)-sulfoximineを経口投与1時間後、AgNP 10nm (0.2 mg)を腹腔内投与し抗酸化剤の影響を検討した。OVA 20μg及び表面未処理の酸化チタンB(ルチル型、粒子径35 nm)、酸化亜鉛B(粒子径35 nm)、酸化チタンD(アナターゼ型、粒子径15 nm)及び酸化亜鉛A(粒子径25 nm)の腹腔内投与及び皮膚暴露による感作性を血清中の抗原特異的IgE、 IgG1、及びIgG2a抗体のELISA法で検討した。国際動向については、欧州食品安全機関(EFSA)が主催している食品及び飼料分野におけるナノテクノロジーのリスク評価に関する科学ネットワーク及び、食品接触材料の科学ネットワークに関して調査した。
結果と考察
感作性は、全OVA処置群で血中のOVA特異的IgG1及びIgEがVehicle群より有意に増加したが、CT及びCTB投与の影響は認めなかった。アナフィラキシーは、OVA処置群では惹起30分後の体温がVehicle群より有意に低下・低下傾向及び血中ヒスタミン濃度並びにアナフィラキシースコアの有意な増加・増加傾向を示したが、CT及びCTB投与の影響はみられなかった。HWP 5.4、27及び135 μg 群で、血中のHWP特異的IgG1及びIgEがVehicle群より有意に増加した。一方、HWP 27及び135μg 群でVehicle群よりも惹起30分後の体温の有意な低下・低下傾向及び血中ヒスタミン濃度並びにアナフィラキシースコアの有意な増加・増加傾向を認めた。AgNP 10 nmの投与 6時間後、肝臓の肉眼及び病理組織学的検査で顕著な変化を認めた。肝臓内の銀濃度は投与量の少ない10nmでは低値と病変の強度とは相関せず、AgNPの急性毒性は粒子のサイズに依存することが確認できた。直接活性酸素類を消去するVit C 及びVit Eよりも、GSHの前駆体であるNACの方がAgNPの急性毒性を有効に抑制した。抗酸化剤投与でAgNPによる毒性が抑制されたことは、その毒性メカニズムに少なくとも一部は酸化的ストレスの関与が示唆された。酸化チタン(ルチル型、粒子径35 nm)及び酸化亜鉛(粒子径35 nm)は、抗原腹腔内投与時のアジュバント効果を示すが、抗原経皮感作は増強しないことが示唆された。
結論
今回の検討条件では、CT及びCTBは明らかなアジュバント効果を示さなかった。一方、HWPは、OVAと同様の皮膚感作性及びアナフィラキシー作用をもち、マウスを用いた免疫毒性の評価に有用な物質と考えられた。また、直径10 nmのAgNPのマウス腹腔内投与で観察される急性毒性は、表面積の増加ではなく、粒子のサイズに依存していることが確認され、その機序として、少なくとも一部は酸化ストレスの関与が示唆された。さらに、酸化チタン(ルチル型、粒子径35 nm)及び酸化亜鉛(粒子径35 nm)は、抗原腹腔内投与時のアジュバント効果を示すが、抗原経皮感作は増強しないことが示された。先行研究の結果と考え合わせ、ナノマテリアルの経皮感作増強効果は粒子径により異なり、粒子径が小さいナノマテリアルの方が経皮感作増強効果が大きいことが示唆された。また、国際動向に関しては、改訂中のガイダンスには、2011年版より詳細な分析法やin vitro分解性などを用いた評価基準、ナノマテリアルに適用可能な生物学的試験(in vivo/in vitro)法に関して網羅的な情報を収載したものになっていた。また、食品接触材料の科学ネットワークでは、容器等の印刷用インクに含まれるナノサイズの顔料に関しての分析法や今後の評価指針等の方向性について関心が高まっていることが示された。

公開日・更新日

公開日
2018-06-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201723022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,400,000円
(2)補助金確定額
10,325,000円
差引額 [(1)-(2)]
75,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,357,858円
人件費・謝金 2,583,338円
旅費 1,372,904円
その他 1,010,960円
間接経費 0円
合計 10,325,060円

備考

備考
必要な消耗品について、予定より低額で購入可能となった品目が発生したため。

公開日・更新日

公開日
2019-03-13
更新日
-