行政推進施策による労働災害防止運動の好事例調査とその効果に関する研究

文献情報

文献番号
201722001A
報告書区分
総括
研究課題名
行政推進施策による労働災害防止運動の好事例調査とその効果に関する研究
課題番号
H27-労働-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
大幢 勝利(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 研究推進・国際センター)
研究分担者(所属機関)
  • 日野 泰道(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 建設安全研究グループ)
  • 高橋 弘樹(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 建設安全研究グループ)
  • 吉川 直孝(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 建設安全研究グループ)
  • 梅崎 重夫(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 安全研究領域)
  • 岡部 康平(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 機械システム安全研究グループ)
  • 藤本 康弘(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 化学安全研究グループ)
  • 島田 行恭(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 リスク管理研究センター)
  • 佐藤 嘉彦(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 化学安全研究グループ)
  • 冨田 一(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 研究推進・国際センター)
  • 濱島 京子(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 電気安全研究グループ)
  • 三浦 崇(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 電気安全研究グループ)
  • 高木 元也(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 リスク管理研究センター)
  • 呂 健(ロ ケン)(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 リスク管理研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
8,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
労働安全衛生行政は、第12 次労働災害防止計画において、労働災害発生件数の減少等を目標として掲げている。この目標のため、行政が労働災害防止関係団体や個別の企業に働きかけ、これら関係者の自主的な取組を促進することにより、政策の推進が図られている。これらの行政推進施策等については、参考とすべき好事例が数多くあると考えられ、中小事業場等に水平展開することにより労働災害の防止に寄与することが可能となる。しかし、その好事例について調査された研究はほとんど見受けられず、さらに、その効果について検討された例も少ない。そこで、本研究では、今後の行政推進施策等への反映が可能な好事例をヒアリング等により調査し、他への展開の可能性の検討を行う。その結果を踏まえ、行政推進施策等による労働災害の発生率の低下等の波及効果を、各種経済指標等との比較により分析すること等により、今後の施策等に効果的と考えられる取組みについて検討することを目的とする。
研究方法
平成29年度は、行政推進施策等による好事例やその効果を検討するため、以下の4項目を対象に研究を進めた。
1)建設業における好事例の収集と安全意識や安全対策の変化の調査
2) 製造業・陸上貨物運送事業における好事例の収集と安全意識や安全対策の変化の調査
3)小売業・飲食店における行政推進施策の好事例モデルの提案等
4)労働災害の発生率の低下等の波及効果の分析
結果と考察
研究方法に示す4項目に基づき、以下の5分野の研究を実施した。
1)仏国の建設業に関する調査
仏国の建設業における安全衛生の考え方を調査するため、仏国の安全衛生機関等を訪問し、行政施策等の効果を調査した。調査の結果、発注者が安全衛生調整者を雇用し、建設プロジェクトの一連の流れの中で、安全衛生をマネジメントするような規定があるが、実際には成果を挙げているようには見受けられなかった。
2)化学プラントにおけるリスクアセスメントの好事例調査
台湾にある勞働及職業安全衛生研究所と國立雲林科技大學を訪問し、化学プロセスの安全性に関する情報交換を行った。今後も情報交換・相互交流を続けていくことで、双方の取り組みの向上が期待される。
3)アーク溶接作業での感電災害防止における好事例調査
交流アーク溶接作業に関わる感電災害防止を中心として、現在の事業場における取り組み状況をアンケート調査した。構造規格と指針の認識度は、改正後6年経過しても30%程度に止まっていること、指針に盛り込まれた自動電撃防止装置の始動感度測定も20%程度に止まっていることが把握できた。
4)小売業・飲食店を対象とした好事例調査
これまでの研究で、小売業・飲食店用労働災害防止パンフレットを制作・配布し、それを活用した新たな行政推進施策を提案したが、今年度は、アンケート調査等により、それによる行政施策推進効果を検証した。その結果、現場の実態に基づきその特性に応じた行政支援策を打ち出すことにより、行政支援効果は高くなることが明らかとなった。
5)労働災害の発生率の低下等の波及効果の分析
建設投資額と各年の建設作業員数との比を求め、過去に発生した死亡災害発生件数との関係について分析を行った。その結果、建設投資1兆円あたりの建設作業員数の大きさは、建設業全体の労働災害の発生可能性を理解する上で重要な指標の一つになりうるが、東日本大震災が発生した平成23年を境にしてその傾向が変化しており、建設現場における安全対策に係わる何等かの極めて重要な変化(技術的改善等)が生じていると考えられる。
結論
本研究では、行政推進施策等による好事例やその効果を検討するため、以下の5つの分野における好事例収集と分析等を行った。
1)仏国の建設業に関する調査
2)化学プラントにおけるリスクアセスメントの好事例調査
3)アーク溶接作業での感電災害防止における好事例調査
4)小売業・飲食店を対象とした好事例調査
5)労働災害の発生率の低下等の波及効果の分析
 その結果、2020東京オリンピック・パラリンピック工事安全協議会運営のため厚生労働省に協力した。また、平成28年度に小売業・飲食店における新たな行政推進施策の好事例モデルを提案することを目的に、研究成果から安全教育ポイントなどを抽出し、それらを基に労働災害防止用パンフレットを制作したが、本年度もニーズが高く全国の都道府県労働局及び労働基準監督署等に送付し新しい労働安全衛生行政施策を提案した。研究終了後も、国内外の好事例について厚生労働省等に情報提供を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2018-06-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201722001B
報告書区分
総合
研究課題名
行政推進施策による労働災害防止運動の好事例調査とその効果に関する研究
課題番号
H27-労働-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
大幢 勝利(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 研究推進・国際センター)
研究分担者(所属機関)
  • 日野 泰道(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 建設安全研究グループ)
  • 高橋 弘樹(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 建設安全研究グループ)
  • 吉川 直孝(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 建設安全研究グループ)
  • 梅崎 重夫(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 安全研究領域)
  • 岡部 康平(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 機械システム安全研究グループ)
  • 藤本 康弘(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 化学安全研究グループ)
  • 島田 行恭(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 リスク管理研究センター)
  • 佐藤 嘉彦(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 化学安全研究グループ)
  • 冨田 一(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 研究推進・国際センター )
  • 濱島 京子(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 電気安全研究グループ)
  • 三浦 崇(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 電気安全研究グループ)
  • 高木 元也(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 リスク管理研究センター)
  • 呂 健(ロ ケン)(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 リスク管理研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
労働安全衛生行政は、第12 次労働災害防止計画において、労働災害発生件数の減少等を目標として掲げている。この目標のため、行政が労働災害防止関係団体や個別の企業に働きかけ、これら関係者の自主的な取組を促進することにより、政策の推進が図られている。これらの行政推進施策等については、参考とすべき好事例が数多くあると考えられ、中小事業場等に水平展開することにより労働災害の防止に寄与することが可能となる。しかし、その好事例について調査された研究はほとんど見受けられず、さらに、その効果について検討された例も少ない。そこで、本研究では、今後の行政推進施策等への反映が可能な好事例をヒアリング等により調査し、他への展開の可能性の検討を行う。その結果を踏まえ、行政推進施策等による労働災害の発生率の低下等の波及効果を、各種経済指標等との比較により分析すること等により、今後の施策等に効果的と考えられる取組みについて検討することを目的とする。
研究方法
行政推進施策等による好事例やその効果を検討するため、以下の4項目を対象に研究を進めた。
1)建設業における好事例の収集と安全意識や安全対策の変化の調査
2) 製造業・陸上貨物運送事業における好事例の収集と安全意識や安全対策の変化の調査
3)小売業・飲食店における行政推進施策の好事例モデルの提案等
4)労働災害の発生率の低下等の波及効果の分析
結果と考察
研究方法に示す4項目に基づき、以下の7分野の研究を実施した。
1)欧州の建設業に関する調査
海外の建設業における安全衛生の考え方を調査するため、海外、特にヨーロッパの安全衛生機関等を訪問し、行政施策等の効果を調査した。調査の結果、発注者、設計者、施工者、作業員が一体となって、建設プロジェクトにおける設計、施工、供用、補修、解体といった一連の流れの中で、共同で安全衛生に取り組み、成果を挙げていることが明らかとなった。
2)食品加工用機械における好事例調査
食品加工用機械の好事例を水平展開するための、新たな視点として、①労働安全衛生規則に則った対策をしていることの情報表示、②行政が好事例を収集し公開する際の問題、について検討した。
3)化学プラントにおけるリスクアセスメントの好事例調査
化学プラントにおける、爆発火災災害防止に関するリスクアセスメントの好事例について、米国、欧州と台湾を調査した。その結果、欧米での好事例が得られたとともに、台湾での情報交換により双方の有益な情報が得られた。
4)アーク溶接作業での感電災害防止における好事例調査
交流アーク溶接作業に関わる感電災害防止を中心として、災害分析や好事例調査、および現在の事業場における取り組み状況をアンケート調査した。その結果、安全管理体制の好事例が得られたが、構造規格と指針の認識度は、改正後6年経過しても30%程度に止まっていることが把握できた。
5)トラックからの墜落防止における好事例調査
荷役作業の安全対策ガイドラインの解説等で示された設備のうち、トラック積載型および荷主庭先据え置き型の両タイプの墜落防止機材が実用化されていることが分かった。また、トラックからの墜落防止対策は、米国においても重要な課題の一つとされており、様々な機材が製品化されていることがわかった。
6)小売業・飲食店を対象とした好事例調査
休業4日以上の死傷災害データの分析結果などを基に、小売業・飲食店用労働災害防止パンフレットを制作・配布し、それを活用した新たな行政推進施策を提案した。その結果、アンケート調査により、現場の実態に基づきその特性に応じた行政支援策を打ち出すことにより、行政支援効果は高くなることが明らかとなった。
7)労働災害の発生率の低下等の波及効果の分析
企業の安全活動、労働安全行政施策の推進等による効果を明らかにするため、各国の政府機関や大学が公開している論文や調査報告書を収集した。また、波及効果の分析の結果、建設投資1兆円あたりの建設作業員数の大きさは、建設業全体の労働災害の発生可能性を理解する上で重要な指標の一つになりうるが、東日本大震災が発生した平成23年を境にしてその傾向が変化しており、建設現場における安全対策に係わる何等かの極めて重要な変化(技術的改善等)が生じていると考えられる。
結論
本研究で得られた、建設業や製造業、陸上貨物運送事業等における、海外や行政推進施策等による好事例は、第13次労働災害防止計画において掲げられた、これら業種の労働災害件数減少や、死亡災害の撲滅に寄与することができると考えられる。特に、2020年東京オリンピック・パラリンピック工事安全協議会運営のため厚生労働省に情報提供するとともに、小売業・飲食店における新たな行政推進施策の好事例モデルを提案することができた。

公開日・更新日

公開日
2018-06-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201722001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ロンドンオリンピック・パラリンピックの関連工事の死亡災害0の好事例を調査し、「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会 大会施設工事安全衛生対策協議会」運営のため厚生労働省に情報提供した。また、「建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律」制定にあたって、研究成果を情報提供した。
臨床的観点からの成果
臨床的観点からの成果はない
ガイドライン等の開発
ガイドライン等の開発に参考された成果はない
その他行政的観点からの成果
小売業・飲食店の労働災害防止用パンフレットを制作したが、そのニーズが高く全国の都道府県労働局及び労働基準監督署等に送付し新しい労働安全衛生行政施策を提案した。
研究成果を活用し、平成30年度厚生労働省委託事業「建設工事の設計段階における労働災害防止対策の普及促進事業」を実施し、報告書を提出した。
令和3年2月に、「日本建設職人社会振興議連」職人基本計画見直し検討会からヒアリングを受け、研究成果を参考に建設工事の設計段階での安全確保の方策について海外の事例を交え説明した。
その他のインパクト
小売業・飲食店における新たな行政推進施策の好事例モデルを提案することを目的に、災害分析や好事例調査からから安全教育ポイントなどを抽出し、それらを基に労働災害防止用パンフレットを制作した。
また、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会 大会施設工事安全衛生対策協議会の報告書作成に貢献した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
22件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律
その他成果(普及・啓発活動)
2件
パンフレット「小売業の労働災害を防止しよう」「飲食店の労働災害を防止しよう」

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
豊澤康男,大幢勝利,吉川直孝
日英比較に基づく建設工事の労働安全衛生マネジメント等の検討
土木学会論文集F6(安全問題) , 71 (2) , I_1-I_12  (2016)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
2023-05-25

収支報告書

文献番号
201722001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,710,000円
(2)補助金確定額
10,495,000円
差引額 [(1)-(2)]
215,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 532,688円
人件費・謝金 0円
旅費 1,347,716円
その他 6,145,305円
間接経費 2,470,000円
合計 10,495,709円

備考

備考
自己資金を利用したため

公開日・更新日

公開日
2019-01-31
更新日
-