医療等IDの導入を前提とした医療情報を患者自身が管理可能な基盤に関する制度・技術の検討

文献情報

文献番号
201721035A
報告書区分
総括
研究課題名
医療等IDの導入を前提とした医療情報を患者自身が管理可能な基盤に関する制度・技術の検討
課題番号
H28-医療-指定-022
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
山本 隆一(一般財団法人医療情報システム開発センター 理事長室)
研究分担者(所属機関)
  • 樋口 範雄(武蔵野大学法学部)
  • 中島 直樹(九州大学・附属病院メディカル・インフォメーションセンター)
  • 田中 勝弥(東京大学・附属病院企画情報運営部)
  • 吉田 真弓((一財)医療情報システム開発センター・医療情報利活用推進部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,985,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、現在整備の議論が行われている医療等IDについての活用方策やユースケースを明らかにし、その一つしてのお薬手帳、かかりつけ連携手帳、生活習慣病手帳などが電子化され、患者等がみずからの医療情報を管理・活用することが具体的な政策目標となっていることを踏まえ、患者等のプライバシの確保と情報の利活用においてより高次のバランスが求められることから、その為の制度整備および、整備されるべき技術基盤の要件を明らかにすることにある。
研究方法
1.医療等IDの検討状況を整理し、活用方策およびユースケースを整理する。研究班全体で実施する。
2.知識格差のある中で、プライバシ侵害のリスクに応じた適切な同意のあり方について、従来の加療方針の決定や臨床試験におけるICのあり方、海外での同意に関する先行研究等を調査し、公益性を加味した上でリスクに応じた同意のあり方を分類し、今後の研究の作業仮説を構築する。山本・樋口が主体で、研究班全体で実施する。
3.上記に基づき2回のWEBアンケート調査を行う。1回目は基礎調査とし、プライバシ侵害に対するリスクのとらえ方と作業仮説で作成した同意のあり方のパターンの識別性を確認し、結果に基づき仮説の微調整を行う。2回目はより具体的な例示により、患者になりうる一般の市民および医療従事者が、同意のパターンによる有効性と受容性を明らかにする。市民(患者等になりうるもの)は主に山本、田中、吉田が、医療従事者は主に中島が実施する。
4.2,3で明らかになった同意をPHR上で表現可能な基盤の要件を定義する。特にBroad consentで収集した場合のopt-outの手法について明確にし、また、二次利用のあり方を体系化し、未知の利用目的が生じた際の具体的同意の推測が可能かを技術的に検討する。田中が主体で、研究班全体で実施する。
結果と考察
結果:1は医療等IDの制度整備の検討状況を踏まえ、研究班会議で整理し議論を行った。医療等IDの整備が明確ではないが、現状で活用方策やユースケース等を取りまとめた。2は実施した。3は医師を対象とした基礎調査を昨年3月に実施し、その結果を元に仮説を立て2回目調査を3月に実施した。4は引き続き行う予定である。年度最後にシンポジウムを開催予定としていたが、昨年11月にJCMI37にて本研究の研究発表を実施し、12月にAMEDの別事業にて同様のシンポジウムを2度開催した事により、医療従事者や研究者から広く意見を徴収できたため、本研究としては開催せず、結果を報告書にて反映させた。
考察:現在多くのITを用いた地域医療連携事業では「共同利用」として医療情報のアクセス同意を得ている。共同利用とは、本来、流通範囲が自明で、共同利用することに合理性がある場合に限定される。地域医療ネットワークを越えた情報連携が厚生労働省推奨標準であるXCA等で可能となりつつある現状では共同利用をこれ以上拡張することには無理があり、本人の診療目的に限定されて適応される黙示の同意を積極的に採用すべきと考えられる。そのためには、ITを用いた地域医療連携が診療目的に限定されるような、システム上の要件や運用規則を早期に整備する必要がある。また診療目的から外れる利用の実態を明確にし、我々がPHRの実証事業で実現した、ワンタイムパスワード方式を、医療等IDと組み合わせて活用する必要があると考えられる。医療等IDのユースケースの一つとして地域医療連携を越えた情報連携が挙げられている中、患者のプライバシ権や自己決定権を確保しつつ、有効な情報利用を進めていくためには同意のあり方の再分類が必要なことは明らかであり、なおかつ、全国で統一した運用が必要であり、本研究では極端例としてのワンタイムパスワードと診療目的の黙示の同意を適切に組み合わせた状況を想定し、患者にとっても医療健康サービスプロバイダにとっても過度な負担のない方法を明らかにし、提言をまとめることしたい。
結論
地理的制約を超えた連携医療が可能となるIDの整備を前提としたITを用いた地域医療連携システムの普及にあたって、本来の診療目的に適応される黙示の同意と診療目的とは言い切れない場合の個別同意を適切に組み合わせる標準的なシステム仕様ならび運用規則が必要で、これらを早期に整備することによって、真に有用なITを用いた医療連携を進めることができる。

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201721035B
報告書区分
総合
研究課題名
医療等IDの導入を前提とした医療情報を患者自身が管理可能な基盤に関する制度・技術の検討
課題番号
H28-医療-指定-022
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
山本 隆一(一般財団法人医療情報システム開発センター 理事長室)
研究分担者(所属機関)
  • 樋口 範雄(武蔵野大学・法学部)
  • 中島 直樹(九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンター)
  • 田中 勝弥(東京大学医学部附属病院・企画情報運営部)
  • 吉田 真弓(一般財団法人医療情報システム開発センター・医療情報利活用推進部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、現在整備の議論が行われている医療等IDについての活用方策やユースケースを明らかにし、その一つしてのお薬手帳、かかりつけ連携手帳、生活習慣病手帳などが電子化され、患者等がみずからの医療情報を管理・活用することが具体的な政策目標となっていることを踏まえ、患者等のプライバシの確保と情報の利活用においてより高次のバランスが求められることから、その為の制度整備および、整備されるべき技術基盤の要件を明らかにすることにある。
研究方法
本研究の全体計画および方法は下記の1~4に記載の通り。
1.医療等IDの検討状況を整理し、活用方策およびユースケースを整理する。研究班全体で実施する。
2.知識格差のある中で、プライバシ侵害のリスクに応じた適切な同意のあり方について、従来の加療方針の決定や臨床試験におけるICのあり方、海外での同意に関する先行研究等を調査し、公益性を加味した上でリスクに応じた同意のあり方を分類し、今後の研究の作業仮説を構築する。山本・樋口が主体で、研究班全体で実施する。
3.上記に基づき2回のWEBアンケート調査を行う。1回目は基礎調査とし、プライバシ侵害に対するリスクのとらえ方と作業仮説で作成した同意のあり方のパターンの識別性を確認し、結果に基づき仮説の微調整を行う。2回目はより具体的な例示により、患者になりうる一般の市民および医療従事者が、同意のパターンによる有効性と受容性を明らかにする。市民(患者等になりうるもの)は主に山本、田中、吉田が、医療従事者は主に中島が実施する。
4.2,3で明らかになった同意をPHR上で表現可能な基盤の要件を定義する。特にBroad consentで収集した場合のopt-outの手法について明確にし、また、二次利用のあり方を体系化し、未知の利用目的が生じた際の具体的同意の推測が可能かを技術的に検討する。田中が主体で、研究班全体で実施する。
結果と考察
結果:1は医療等IDの制度整備の検討状況を踏まえ、研究班会議で整理し議論を行った。医療等IDの整備が明確ではないが、現状で活用方策やユースケース等を取りまとめた。2は実施した。3は医師を対象とした基礎調査を昨年3月に実施し、その結果を元に仮説を立て2回目調査を3月に実施した。4は実施した。年度最後にシンポジウムを開催予定としていたが、昨年11月にJCMI37にて本研究の研究発表を実施し、12月にAMEDの別事業にて同様のシンポジウムを2度開催した事により、医療従事者や研究者から広く意見を徴収できたため、本研究としては開催せず、結果を報告書にて反映させた。
考察:現在多くのITを用いた地域医療連携事業では「共同利用」として医療情報のアクセス同意を得ている。共同利用とは、本来、流通範囲が自明で、共同利用することに合理性がある場合に限定される。地域医療ネットワークを越えた情報連携が厚生労働省推奨標準であるXCA等で可能となりつつある現状では共同利用をこれ以上拡張することには無理があり、本人の診療目的に限定されて適応される黙示の同意を積極的に採用すべきと考えられる。そのためには、ITを用いた地域医療連携が診療目的に限定されるような、システム上の要件や運用規則を早期に整備する必要がある。また診療目的から外れる利用の実態を明確にし、我々がPHRの実証事業で実現した、ワンタイムパスワード方式を、医療等IDと組み合わせて活用する必要があると考えられる。医療等IDのユースケースの一つとして地域医療連携を越えた情報連携が挙げられている中、患者のプライバシ権や自己決定権を確保しつつ、有効な情報利用を進めていくためには同意のあり方の再分類が必要なことは明らかであり、なおかつ、全国で統一した運用が必要であり、本研究では極端例としてのワンタイムパスワードと診療目的の黙示の同意を適切に組み合わせた状況を想定し、患者にとっても医療健康サービスプロバイダにとっても過度な負担のない方法を明らかにし提言にまとめた。
結論
地理的制約を超えた連携医療が可能となるIDの整備を前提としたITを用いた地域医療連携システムの普及にあたって、本来の診療目的に適応される黙示の同意と診療目的とは言い切れない場合の個別同意を適切に組み合わせる標準的なシステム仕様ならび運用規則が必要で、これらを早期に整備することによって、真に有用なITを用いた医療連携を進めることができる。

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201721035C

収支報告書

文献番号
201721035Z