文献情報
文献番号
201721005A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全指標の開発及び他施設間比較体制の検討と病理部門等と安全管理部門との連携が院内の医療安全体制に与える影響に関する研究
課題番号
H28-医療-一般-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
伏見 清秀(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医療政策情報学)
研究分担者(所属機関)
- 内藤 善哉(日本医科大学大学院 統御機構診断病理学)
- 長谷川 友紀(東邦大学医学部 社会医学)
- 後 信(九州大学病院 医療安全管理部)
- 小松 康宏(群馬大学大学院医学系研究科 医療の質・安全学講座)
- 尾林 聡(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 生殖機能協関学 ・ 東京医科歯科大学 医学部附属病院 医療安全管理部 )
- 坂谷 貴司(日本医科大学付属病院 病理診断科)
- 鳥羽 三佳代(東京医科歯科大学 医学部附属病院 クオリティ・マネジメント・センター)
- 堀口 裕正(国立病院機構本部 診療情報分析部)
- 森脇 睦子(東京医科歯科大学 医学部附属病院 クオリティ・マネジメント・センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
【所属機関異動】
研究分担者 小松康宏
聖路加国際病院 腎臓内科(~平成29年10月31日)
↓
群馬大学大学院医学系研究科 医療の質・安全学(平成29年11月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
近年特定機能病院における重大な医療事故が相次いだ。これを受けて国は、大学附属病院等の医療安全確保に関するタスクフォースを設置し、その結果、医療安全管理体制に関するガバナンス体制の再編・整備・強化が急務であることを打ち出した。また、診療行為に関連した予期せぬ死亡事例等の報告を医療法に位置付け、平成27年10月に医療事故調査制度を開始した。本制度では、医療事故調査の1つとして剖検を挙げており、これは医療機関の安全管理において、病理部門や臨床各部門との連携体制の構築強化を示唆するものである。このような背景から、全国の医療安全をモニターし体制整備と効果を検証することが喫緊の課題である。本研究は、我が国の医療安全体制の評価を行うため、(1)医療安全に特化した指標の開発、(2)病理部門や臨床各部門、医療安全管理部門との連携が安全確保に与える効果の検証、(3)自院の安全体制を他施設と比較・評価するシステム構築の検討、を目的とした。
研究方法
本研究は3段階で実施した。第1段階は、専門家により、医療安全指標に必要な指標を検討した。第2段階は、検討された指標をDPC調査研究班のデータにより病院機能別等の分析および汎用可能性に関する検証を行った。更に、アウトカム指標については、2つの指標(手術あり患者の肺血栓塞栓症発生率、75歳以上退院患者の予期せぬ骨折発生率)について個別に検証した。第3段階は、日本病理学会研修認定施設のうち、医療事故関連の解剖症例数が多い135施設を対象に医療安全や診療・治療方針決定に関する質問紙調査を実施し、病理医のどのような関与が医療安全の推進に寄与するかを調査した。また、医療法施行規則に基づく報告制度である医療事故情報収集等事業の報告書から、病理に関する主な医療事故事例を抽出し、本研究テーマである病理部門と医療安全管理部門との連携の可能性について検討した。
本年度は、初年度に引き続き、研究の第2段階、第3段階について実施した。
本年度は、初年度に引き続き、研究の第2段階、第3段階について実施した。
結果と考察
初年度にベンチマーク用指標として開発した6指標(指標1:脳卒中患者に対する静脈血栓塞栓症の予防対策の実施率,指標2:手術ありの患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率,指標3:手術ありの患者の肺血栓塞栓症の発生率,指標4:中心静脈注射用カテーテル挿入による重症な気胸・血胸の発生率,指標5:75歳以上退院患者の入院中の予期せぬ骨折発症率,指標6:経皮的心筋焼灼術に伴う心タンポナーデ発生率)の中からアウトカム指標の個別検討を行った。その結果、手術あり患者の肺血栓塞栓症発生率については、現段階ではDPCデータによる計測は手法に限界があることが明らかとなった。一方で、当該指標については、改善活動のターゲットを絞り込むという観点から術式もしくは領域別のプロセス指標を作成することが更なる質改善に繋がることから、帝王切開術を例に6つの指標を作成した。75歳以上退院患者の予期せぬ骨折発生率に関連した分析では、骨折リスクスコアの開発を行った。
病理に関連した質問紙調査では、117施設(回収率86.7%)から回答を得た。その結果(1) 病理解剖報告書作成からCPC実施に至るまで多大な業務の上、医療の質向上に貢献していること、(2)医療事故調査制度に対する理解不十分な医師の存在、(3)医療事故対策に向けたon-siteでの病理医の必要性、等が明らかになった。更に、現在注目されている未読症例問題により、病理部門と医療安全部門との有用な連携に関する検討が必要であることを再確認した。当該連携の可能性について、病理に関する医療事故の発生段階は様々であり、関与する職員も病理部門と医療安全管理部門に限定しないことがわかった。また、最近社会的関心が高い放射線検査領域の画像診断書の不十分な確認に端を発した問題は、病理診断報告書未読問題に共有できる教訓的内容が含まれていた。
病理に関連した質問紙調査では、117施設(回収率86.7%)から回答を得た。その結果(1) 病理解剖報告書作成からCPC実施に至るまで多大な業務の上、医療の質向上に貢献していること、(2)医療事故調査制度に対する理解不十分な医師の存在、(3)医療事故対策に向けたon-siteでの病理医の必要性、等が明らかになった。更に、現在注目されている未読症例問題により、病理部門と医療安全部門との有用な連携に関する検討が必要であることを再確認した。当該連携の可能性について、病理に関する医療事故の発生段階は様々であり、関与する職員も病理部門と医療安全管理部門に限定しないことがわかった。また、最近社会的関心が高い放射線検査領域の画像診断書の不十分な確認に端を発した問題は、病理診断報告書未読問題に共有できる教訓的内容が含まれていた。
結論
医療機関に蓄積される電子データを利活用することで、各医療機関の実態把握が可能であり問題点抽出及び改善活動に繋げられる。ベンチマーク指標と内部監査用指標による評価で、多施設比較と自院の質向上に向けた取り組みが推進できると共に、医療法施行法規則で求められる平時からのモニタリング体制も構築できる。これは、医療の質の維持向上に向けたシステマティック改善を齎す一助になると考える。医療安全指標を開発する技術の研究成果と、病理部門に所属する職員を対象とした意識調査等の実態を踏まえ、その効果を測定して我が国の医療安全の向上を図ることが期待される。
公開日・更新日
公開日
2018-06-06
更新日
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