地域医療構想・地域医療計画を効果的に実装するためのデータ解析・活用方法の開発

文献情報

文献番号
201721001A
報告書区分
総括
研究課題名
地域医療構想・地域医療計画を効果的に実装するためのデータ解析・活用方法の開発
課題番号
H27-医療-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
今中 雄一(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 國澤 進(京都大学 医学研究科)
  • 廣瀬 昌博(島根大学 医学部)
  • 徳永 淳也(九州看護福祉大学 看護福祉学部)
  • 本橋 隆子(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 超高齢社会が進展する中、保健医療介護制度の改革は喫緊の課題である。地域医療構想・地域医療計画を効果的に実現するためには、限りある医療資源について、疾病別の機能分化・拠点化と連携強化等を含む具体的な設計方法が必須である。
 本研究では、様々な源の大規模なデータベースを構築して解析し、パフォーマンスの高い(質、効率、アクセス等が良い)医療システムを再構築するため、データ解析・活用の方法を研究開発し、提案・呈示することを目的とする。
研究方法
 大規模データベースを使用し、各種定量化・統計手法・臨床知識基盤を用い、地域医療計画・地域医療構想に役立たせるために、疾患やセッティングごとの具体的な課題と集団において解析を行う。用いるデータは、レセプト・ナショナルデータベース(NDBデータ)、DPCデータ、地域別医師数データ、国民生活基礎調査データと介護給付費等実態調査データ、広域国民健康保険・後期高齢者医療保険レセプト・介護保険レセプトデータ、追加調査データ、全国都道府県の地域医療計画テキストデータなどである。対象領域は、脳梗塞、心筋梗塞、認知症、糖尿病、胃がん、肺がん、乳がん、救急医療、認知症、精神科薬物療法、訪問診療・在宅医療を含む。
結果と考察
【NDBデータ解析】全国の二次医療圏間で脳梗塞症例へのtPA実施率は約1%~6%、心筋梗塞症例へのスタチン処方率は約6%~80%など、指標値のばらつきが示された。
【DPCデータ解析】全国二次医療圏単位でのレせプト解析(2011,2015)では、急性心筋梗塞症例において、早期アスピリン投与率が50%~100%、53%~100、βブッカー投与率は23%~94%、29%~92%と、大きなばらつきが見られた。また、4年間でいずれの指標においても全国的に実施率の上昇が見られた。
 上記、2件とも、結果の公表基準により指標値0%地域は有無にかかわらず結果に含まない。
【医師数の地域格差】医療需要の異なる年齢構成を調整すると、地域格差はより大きくなり、充足状況も悪化していることが示された。また、需要調整人口対医師数は、地方で医師供給量が小さい地域で減少し、都市部でも減少している地域がみられた。診療科別の解析では、内科・外科・整形外科・産婦人科・小児科・麻酔科で格差改善はみられず、都市と地方の格差はより拡大傾向にあり、医師数の地域間格差や診療科偏在に対してさらなる対策を講じる必要があると考えられた。
【介護データ解析】介護給付費等実態調査の個票データを用い、要介護度別人口、介護サービス利用の人数、サービス量・変遷、要介護度悪化率の評価、医療と介護の代替性などの地域レベルの解析等を行った。
【各種データ解析】各種データを用い、地域の医療の質・安全・経済性の要因等の解析や地域医療も含めた地域包括ケアシステムの評価指標の基盤に関する解析を行った。
・訪問診療体制の医療機関レベルに加え、地域別の充実度とその変遷の定量化
・在宅患者の入院予測モデルの構築
・精神科領域の処方実態、大量処方の要因分析
・介護保険関連データを駆使し、認知症発症、要介護度悪化の予測モデルの構築。
・休日や学会期間などの診療体制と治療成績への影響
結論
 医療介護の資源・財源が有限のもと医療者・介護者、行政、市民、企業などあらゆるステークホルダーが協働し(社会的協働Social Joint Venture)、医療の質・安全を守りつつ医療システムの大胆な再構築を進めることが、益々重要となってきている。そのためには、データを最大限に活用して医療介護システムを可視化し、その情報をステークホルダー間で共有し、全体最適を目指してより大きな価値を生むべく原資の投資先をシフトし、全てのステークホルダーが主体的に協働していくプラットフォームを築いていく必要がある。
 また、全国の地域医療計画のデータベース化が、地域を超えた比較参照やベストプラクティス普及のために有用と考であり、これらの発展により、地域間比較・参照や計画内容の向上に資することが期待される。
 当研究において、地域医療構想・地域医療計画を効果的に実装するため、大規模なデータベースを活用し、地域ごとの医療・介護のシステムの質や経済性等について、諸々の側面からパフォーマンスを定量化することができた。今後、系統的に指標体系を用いて包括的に、計画内容の向上に資することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201721001B
報告書区分
総合
研究課題名
地域医療構想・地域医療計画を効果的に実装するためのデータ解析・活用方法の開発
課題番号
H27-医療-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
今中 雄一(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 國澤 進(京都大学 医学研究科)
  • 大坪 徹也(京都大学 医学研究科)
  • 廣瀬 昌博(島根大学 医学部)
  • 徳永 淳也(九州看護福祉大学 看護福祉学部)
  • 本橋 隆子(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 超高齢社会が進展する中、保健医療介護制度の改革は喫緊の課題である。地域医療構想・地域医療計画を効果的に実現するためには、限りある医療資源について、疾病別の機能分化・拠点化と連携強化等を含む具体的な設計方法が必須である。
 本研究では、様々な源の大規模なデータベースを構築して解析し、パフォーマンスの高い(質、効率、アクセス等が良い)医療システムを再構築するため、データ解析・活用の方法を研究開発し、提案・呈示することを目的とする。
研究方法
 大規模データベースを使用し、各種定量化・統計手法・臨床知識基盤を用い、地域医療計画・地域医療構想に役立たせるために、疾患やセッティングごとの具体的な課題と集団において解析を行う。用いるデータは、レセプト・ナショナルデータベース(NDBデータ)、DPCデータ、地域別医師数データ、国民生活基礎調査データと介護給付費等実態調査データ、広域国民健康保険・後期高齢者医療保険レセプト・介護保険レセプトデータ、追加調査データ、全国都道府県の地域医療計画テキストデータなどである。対象領域は、脳梗塞、心筋梗塞、認知症、糖尿病、胃がん、肺がん、乳がん、救急医療、認知症、精神科薬物療法、訪問診療・在宅医療を含む。
結果と考察
【NDBデータ解析】全国の二次医療圏間で脳梗塞症例へのtPA実施率は約1%~6%、心筋梗塞症例へのスタチン処方率は約6%~80%など、指標値のばらつきが示された。
【DPCデータ解析】全国二次医療圏単位でのレせプト解析(2011,2015)では、急性心筋梗塞症例において、早期アスピリン投与率が50%~100%、53%~100、βブッカー投与率は23%~94%、29%~92%と、大きなばらつきが見られた。また、4年間でいずれの指標においても全国的に実施率の上昇が見られた。
 上記、2件とも、結果の公表基準により指標値0%地域は有無にかかわらず結果に含まない。
【医師数の地域格差】医療需要の異なる年齢構成を調整すると、地域格差はより大きくなり、充足状況も悪化していることが示された。また、需要調整人口対医師数は、地方で医師供給量が小さい地域で減少し、都市部でも減少している地域がみられた。診療科別の解析では、内科・外科・整形外科・産婦人科・小児科・麻酔科で格差改善はみられず、都市と地方の格差はより拡大傾向にあり、医師数の地域間格差や診療科偏在に対してさらなる対策を講じる必要があると考えられた。
【介護データ解析】介護給付費等実態調査の個票データを用い、要介護度別人口、介護サービス利用の人数、サービス量・変遷、要介護度悪化率の評価、医療と介護の代替性などの地域レベルの解析等を行った。
【各種データ解析】各種データを用い、地域の医療の質・安全・経済性の要因等の解析や地域医療も含めた地域包括ケアシステムの評価指標の基盤に関する解析を行った。
・訪問診療体制の医療機関レベルに加え、地域別の充実度とその変遷の定量化
・在宅患者の入院予測モデルの構築
・精神科領域の処方実態、大量処方の要因分析
・介護保険関連データを駆使し、認知症発症、要介護度悪化の予測モデルの構築。
・救急搬送時間と病院紹介回数の要因解析
・休日や学会期間などの診療体制と治療成績への影響
・健診データに基づく高齢者の肺炎発症予測
・薬剤耐性菌の健康及び経済的影響
・医療の質と医療費の説明モデルの相違
・全国地域医療計画の参照データベース化とAI活用(IBM Watson)の試行
・ICU入室患者のAI・機械学習によるリスク予測:マルチタスク学習の応用
結論
 医療介護の資源・財源が有限のもと医療者・介護者、行政、市民、企業などあらゆるステークホルダーが協働し(社会的協働Social Joint Venture)、医療の質・安全を守りつつ医療システムの大胆な再構築を進めることが、益々重要となってきている。そのためには、データを最大限に活用して医療介護システムを可視化し、その情報をステークホルダー間で共有し、全体最適を目指してより大きな価値を生むべく原資の投資先をシフトし、全てのステークホルダーが主体的に協働していくプラットフォームを築いていく必要がある。
 また、全国の地域医療計画のデータベース化が、地域を超えた比較参照やベストプラクティス普及のために有用と考であり、これらの発展により、地域間比較・参照や計画内容の向上に資することが期待される。
 当研究において、地域医療構想・地域医療計画を効果的に実装するため、大規模なデータベースを活用し、地域ごとの医療・介護のシステムの質や経済性等について、諸々の側面からパフォーマンスを定量化することができた。今後、系統的に指標体系を用いて包括的に、計画内容の向上に資することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201721001C

収支報告書

文献番号
201721001Z