文献情報
文献番号
201718002A
報告書区分
総括
研究課題名
食品由来感染症の病原体情報の解析及び共有化システムの構築に関する研究
課題番号
H27-新興行政-一般-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
泉谷 秀昌(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
- 熊谷 優子(秋田県健康環境センター 細菌班)
- 平井 昭彦(東京都健康安全研究センター 微生物部)
- 松本 昌門(愛知県衛生研究所 生物学部)
- 勢戸 和子(大阪健康安全基盤研究所 微生物部細菌課)
- 河合 央博(岡山県環境保健センター 細菌科)
- 世良 暢之(福岡県保健環境研究所 病理細菌課)
- 伊豫田 淳(国立感染症研究所 細菌第一部)
- 片山 和彦(北里大学 北里生命科学研究所 感染制御・免疫学部門)
- 三瀬 敬治(札幌医科大学医学部 医療人育成センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
9,720,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
食品由来感染症の病因物質である細菌およびウイルスの病原体情報を、分子疫学的解析手法を用いて取得し、当該情報を効果的に共有することで感染源の究明、感染拡大予防に資することを目指す。当該分子疫学解析手法の開発、精度管理による解析精度の向上、解析結果のデータベース化を図り、より精度および信頼性の高いエビデンスに基づく情報共有システムの確立を行う。
研究方法
細菌グループ(細菌G):全国地研6ブロック代表研究分担者および感染研より構成され、主として腸管出血性大腸菌(EHEC)に関する病原体情報の解析および共有化システムを開発、検討する。解析手法はIS-printing system(ISPS)、multilocus variable-number tandem-repeat analysis(MLVA)法およびパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)法が含まれる。精度管理試験を実施し、解析精度の維持向上ならびに解析手法の問題点の集約および整理を行う。解析結果をデータベース化し、電子メール、食中毒支援システムなどを活用した病原体情報の共有化を進める。
ウイルスグループ(ウイルスG):下痢症ウイルスの統合データベースGatVirusWeb(GVW)の構築、維持、更新ならびに解析ツールの開発を行う。データベースの遺伝子検索の自動化、利便性の向上など、機能の向上を図る。ロタウイルスの迅速簡易型別法の一つとしてポリアクリルアミドゲル電気泳動(RNA-PAGE)パターンの解析アルゴリズムの開発を行う。本システムのGVWへの実装に向けた環境整備を図る。
ウイルスグループ(ウイルスG):下痢症ウイルスの統合データベースGatVirusWeb(GVW)の構築、維持、更新ならびに解析ツールの開発を行う。データベースの遺伝子検索の自動化、利便性の向上など、機能の向上を図る。ロタウイルスの迅速簡易型別法の一つとしてポリアクリルアミドゲル電気泳動(RNA-PAGE)パターンの解析アルゴリズムの開発を行う。本システムのGVWへの実装に向けた環境整備を図る。
結果と考察
ブロック代表研究分担者を通じて協力地研を対象にアンケート調査を実施した。腸管出血性大腸菌の分子疫学解析手法の実施状況に関し、ISPSが主要な位置を占めていた。ISPSに関し、近畿、九州及び東海北陸ブロックにおいてデータベースの更新が行われ、各ブロック内で情報共有が行われた。ISPSの判定に影響を与えるエキストラバンドに関して情報取集を行い、その泳動像集をハンドブックとしてとりまとめた。ISPS、PFGEおよびMLVA法に関し、各ブロック内で精度管理試験を実施し、各地研の解析能力の維持向上に努めた。試験内容は各ブロックの環境に応じたものであった。ISPSについてはブロック代表の協力のもと全国版データベースの更新が行われた。PFGE法については、従来からのBionumericsサーバを用いたデータベースの更新を行った。MLVA法については感染研内のin houseデータベースの構築を進めた。情報共有は電子メールもしくは食中毒調査システムを利用し、広域株、集団事例発生時には回覧等を発信し、情報共有に努めた。回覧についてはおよそ30回実施した。
下痢症ウイルスデータベースGatVirusWebの構築を行った。3大遺伝子データベース(NCBI,EMBL,DDBJ)から下痢症ウイルス関連情報を取得するサブデータベースシステムの構築を行った。検索画面、配列比較などの機能向上を行った。NoroNetへのリンクを構築し、リンクを介したタイピングツールの利用を可能とした。RNA-PAGEをベースにしたロタウイルス病原体解析システムを開発、泳動パターン認識ソフトウェアを開発した。当該システムをGatVirusWebのサブシステムMultiNA Webとしてオンライン化し、βテストを実施できるようにした。
下痢症ウイルスデータベースGatVirusWebの構築を行った。3大遺伝子データベース(NCBI,EMBL,DDBJ)から下痢症ウイルス関連情報を取得するサブデータベースシステムの構築を行った。検索画面、配列比較などの機能向上を行った。NoroNetへのリンクを構築し、リンクを介したタイピングツールの利用を可能とした。RNA-PAGEをベースにしたロタウイルス病原体解析システムを開発、泳動パターン認識ソフトウェアを開発した。当該システムをGatVirusWebのサブシステムMultiNA Webとしてオンライン化し、βテストを実施できるようにした。
結論
毎年変化する多様な食品由来感染症病因物質に対応するため、病原体解析手法の開発、精度管理および情報収集は重要である。解析結果のデータベース化は、膨大なデータを効率的に解析するために必要である。必要な病原体情報を必要な時に効果的に共有することは集団事例への対応、広域事例への対応など感染症対策のために重要である。病原体サーベイランスを向上するために、今後もさらなる精度管理、病原体解析技術の精度向上、情報共有のあり方についての検討が必要である。
公開日・更新日
公開日
2018-05-02
更新日
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