文献情報
文献番号
201717013A
報告書区分
総括
研究課題名
意思疎通が困難な人に対する人的及びICT技術による効果的な情報保障手法に関する研究
課題番号
H28-身体・知的-一般-010
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 哲也(新潟大学 自然科学系(工学部))
研究分担者(所属機関)
- 小林 真(筑波技術大学・保健科学部)
- 南谷 和範(大学入試センター・研究開発部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,348,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ICT機器は,情報弱者とも表現される視覚障害者が情報の入手と発信を単独で行うことを可能にする重要な道具である.その視覚障害者による利用実態を把握することを目的としてアンケート調査を実施した.
研究方法
調査の実施は,中途視覚障害者の雇用継続を支援するNPO法人タートルに委託した.タートルは,視覚障害者が参加する約50のメーリングリストで回答者を募集した.回答もメールで回収した.調査期間は1ヶ月である.調査では,回答者のプロフィール,ICT機器の利用状況(全般),携帯電話,スマートフォン,タブレット,パソコンの利用状況(詳細)を尋ねた.
結果と考察
1. 回答者
有効な回答者数は303人となった.年齢分布は50歳代が最も多く76人(25.1%)と4分の1を占め,これに40歳代65人(21.5%)と60歳代54人(17.8%)が続いた.障害者手帳の等級は,1級の人が最も多く207人(68.3%),2級の人が68人(22.4%)で,両級で回答者のほとんどを占めた.視覚を使った文字の読み書きができるロービジョン者は89人(29.4%),できない全盲は214人(70.6%)であった.
2. ICT機器の利用状況(全般)
携帯電話の利用者数は180人(全回答者の59.4%),スマートフォンは161人(53.1%),タブレットは64人(21.1%),パソコンは285人(94.1%)であった.全盲とロービジョンの間で携帯電話とスマートフォンの利用率に有意な差は見られなかったが,タブレットとパソコンの利用率には有意な差が見られた.これは,ロービジョン者にとってタブレットは視覚補助具として有効なため,利用率が高いためと考えられる.2013年の同様な調査の結果と比べると,全盲の人,ロービジョンの人ともに,スマートフォンの利用率が倍増した.タブレットの利用率はロービジョンの人では2倍近くまで伸びたが,全盲の人では伸び率は1.4倍程度であった.その一方で携帯電話の利用率は,全盲の人とロービジョンの人の両方で2013年から20%ほど低下した.スマートフォンの利用率が上がり,携帯電話の利用率が下がる現象は日本の一般社会で起こっている変化と同じである.年代が上がるほど携帯電話の利用率が高くなり,年代が下がるほどスマートフォンの利用率が高くなることが分かった.タブレットとパソコンの利用率では年代による差異は顕著ではなかった.ICT機器の利用率に地方自治体区分間に有意な差は見られなかった.
3. スマートフォンの利用状況
3.1. 機種
全盲の人・ロービジョンの人ともにiPhoneの利用者が最も多く,それぞれの利用率は91.9%と80.0%であった.
3.2. 補助機能
スマートフォンの利用を補助する機能として,全盲者は111人中110人(99.1%)とほとんどの人が音声読み上げを利用し,これ以外の補助機能の利用者数は10人以下と少なかった.これに対してロービジョン者では,文字サイズの拡大,画面拡大,色設定の変更・反転表示という視覚的な補助機能の利用率が高い(40.0%~70.0%).音声読み上げも48.0%が利用していた.
3.3. 文字入力
文字入力の際,全盲者とロービジョン者に共通してソフトウェアキーボードの利用率が9割前後と高かった.全盲者では,音声入力とハードウェアキーボードの利用率もそれぞれ53.2%,35.1%と高い.ソフトウェアキーボードの種類は,全盲者ではローマ字キーボードと日本語テンキーの両方とも半数強の利用者がいたが(それぞれ61.1%と55.8%),ロービジョン者ではテンキーが75.6%と利用率が高く,逆にローマ字キーボードは40.0%に留まり,両者の間で違いが見られた.スクリーンリーダ利用者にキーの確定方法を尋ねたところ,全盲者ではスプリットタップ,ダブルタップ,タッチ入力,ダブルタップ&フリックの順で利用率が高かった.
3.4. 利用しているアプリ
全盲の人に便利とされたGPSナビゲーションアプリの利用者は61人(全盲のスマートフォン利用者の55.0%)であった.アプリ名の具体的な回答の多くはBlindSquareとGoogleマップであった.視覚障害者向けに開発された画像/物体認識アプリの利用者は63人(56.8%),色の識別と光認識アプリはそれぞれ41人(36.9%)と25人(22.5%)が利用しており,これらの数値から全盲者に役立っていると言える.
有効な回答者数は303人となった.年齢分布は50歳代が最も多く76人(25.1%)と4分の1を占め,これに40歳代65人(21.5%)と60歳代54人(17.8%)が続いた.障害者手帳の等級は,1級の人が最も多く207人(68.3%),2級の人が68人(22.4%)で,両級で回答者のほとんどを占めた.視覚を使った文字の読み書きができるロービジョン者は89人(29.4%),できない全盲は214人(70.6%)であった.
2. ICT機器の利用状況(全般)
携帯電話の利用者数は180人(全回答者の59.4%),スマートフォンは161人(53.1%),タブレットは64人(21.1%),パソコンは285人(94.1%)であった.全盲とロービジョンの間で携帯電話とスマートフォンの利用率に有意な差は見られなかったが,タブレットとパソコンの利用率には有意な差が見られた.これは,ロービジョン者にとってタブレットは視覚補助具として有効なため,利用率が高いためと考えられる.2013年の同様な調査の結果と比べると,全盲の人,ロービジョンの人ともに,スマートフォンの利用率が倍増した.タブレットの利用率はロービジョンの人では2倍近くまで伸びたが,全盲の人では伸び率は1.4倍程度であった.その一方で携帯電話の利用率は,全盲の人とロービジョンの人の両方で2013年から20%ほど低下した.スマートフォンの利用率が上がり,携帯電話の利用率が下がる現象は日本の一般社会で起こっている変化と同じである.年代が上がるほど携帯電話の利用率が高くなり,年代が下がるほどスマートフォンの利用率が高くなることが分かった.タブレットとパソコンの利用率では年代による差異は顕著ではなかった.ICT機器の利用率に地方自治体区分間に有意な差は見られなかった.
3. スマートフォンの利用状況
3.1. 機種
全盲の人・ロービジョンの人ともにiPhoneの利用者が最も多く,それぞれの利用率は91.9%と80.0%であった.
3.2. 補助機能
スマートフォンの利用を補助する機能として,全盲者は111人中110人(99.1%)とほとんどの人が音声読み上げを利用し,これ以外の補助機能の利用者数は10人以下と少なかった.これに対してロービジョン者では,文字サイズの拡大,画面拡大,色設定の変更・反転表示という視覚的な補助機能の利用率が高い(40.0%~70.0%).音声読み上げも48.0%が利用していた.
3.3. 文字入力
文字入力の際,全盲者とロービジョン者に共通してソフトウェアキーボードの利用率が9割前後と高かった.全盲者では,音声入力とハードウェアキーボードの利用率もそれぞれ53.2%,35.1%と高い.ソフトウェアキーボードの種類は,全盲者ではローマ字キーボードと日本語テンキーの両方とも半数強の利用者がいたが(それぞれ61.1%と55.8%),ロービジョン者ではテンキーが75.6%と利用率が高く,逆にローマ字キーボードは40.0%に留まり,両者の間で違いが見られた.スクリーンリーダ利用者にキーの確定方法を尋ねたところ,全盲者ではスプリットタップ,ダブルタップ,タッチ入力,ダブルタップ&フリックの順で利用率が高かった.
3.4. 利用しているアプリ
全盲の人に便利とされたGPSナビゲーションアプリの利用者は61人(全盲のスマートフォン利用者の55.0%)であった.アプリ名の具体的な回答の多くはBlindSquareとGoogleマップであった.視覚障害者向けに開発された画像/物体認識アプリの利用者は63人(56.8%),色の識別と光認識アプリはそれぞれ41人(36.9%)と25人(22.5%)が利用しており,これらの数値から全盲者に役立っていると言える.
結論
視覚障害者のICT機器利用状況をアンケート方式で調査した.年代が若い人ほどスマートフォンの利用率が高く,視覚障害者全体の利用率を押し上げていた.アプリの利用状況から,全盲の人向けに開発されたアプリが実際に利用されており,スマートフォンが支援機器として欠かせない存在となっていることを明らかにした.
公開日・更新日
公開日
2018-11-21
更新日
-