顕在化しにくい発達障害の特性を早期に抽出するアセスメントツールの開発および普及に関する研究

文献情報

文献番号
201717001A
報告書区分
総括
研究課題名
顕在化しにくい発達障害の特性を早期に抽出するアセスメントツールの開発および普及に関する研究
課題番号
H28-感覚-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
稲垣 真澄(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 金生 由紀子(東京大学医学部附属病院 こころの発達診療部)
  • 原 由紀(北里大学医療衛生学部 リハビリテーション学科)
  • 中井 昭夫(兵庫県立リハビリテーション中央病院 子どもの睡眠と発達医療センター)
  • 原 惠子(宇野 惠子)(上智大学大学院 外国語学研究科)
  • 北 洋輔(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,904,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は1.「顕在化しにくい発達障害」の特性を明らかにすること、2.スクリーニングするアセスメント手法を確立すること、そして3.現場での導入を考えて統合された評価シートを作成し、その妥当性、信頼性を検討することを目的とした。とくにチック症、吃音症、不器用症、読み書き障害の発達障害に焦点を絞り、それらの発症から進展、経過を観察しうる中核的な質問項目を確定することを目指した。
研究方法
初年度成果を元に4つの障害(チック症、吃音症、不器用症、読み書き障害)を同時に評価する観察シート(19項目)を作成し、全国11地方のサンプルエリアから、合計3542名のデータを得た。
本サンプル数は、各障害の推定有病率(誤差±1%)および推定信頼区間(95%)の観点から十分なサンプルサイズであり、全11地方の就学前機関(保育園・幼稚園・こども園)と医療機関をカバーしているため、本邦の年長児の代表値と見なせると考えた。
結果と考察
観察シートについて、尺度特性としての信頼性・妥当性が示された。また、観察シートによる障害リスクの有無判別と実際の医療診断の一致率は85.0~97.1%、特異度は85.2~97.1%を示し、極めて高い判別精度が得られた。
研究分担者金生由紀子はチック症の、研究分担者原 由紀は吃音の、研究分担者中井昭夫は不器用の、そして研究分担者の原 惠子と北 洋輔は読み書き障害について、それぞれの調査フィールドで調査を行った。初年度は各研究者から4~5項目を抽出され、二年度目に統合版調査票による調査を施行した。研究代表者が最終的にデータをまとめて、調査票の信頼度を検討した。
結論
統合版では安定的な識別力(IT相関)、等質性(α係数)が各障害の評価項目から認められた。また、19項目による構造的妥当性も認められた。これらから、別々に抽出した評価項目を統合して作成した観察シートは、尺度特性として信頼性・妥当性が極めて良好であり、尺度として利用することに十分耐えうるものと考えられる。
研究班で作成した観察シート(19項目)は、顕在化しにくい発達障害を就学前の早期かつ高精度にスクリーニングする学術的意義に加えて、紙面1枚で実質5分程度の所要時間という簡便さを併せ持つため、費用面・実施面において社会実装にむけた実現性を有する行政的意義の高いものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201717001B
報告書区分
総合
研究課題名
顕在化しにくい発達障害の特性を早期に抽出するアセスメントツールの開発および普及に関する研究
課題番号
H28-感覚-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
稲垣 真澄(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 金生 由紀子(東京大学医学部附属病院 こころの発達診療部)
  • 原 由紀(北里大学医療衛生学部 リハビリテーション学科)
  • 中井 昭夫(兵庫県立リハビリテーション中央病院 子どもの睡眠と発達医療センター)
  • 原 惠子(宇野 惠子)(上智大学大学院 外国語学研究科)
  • 北 洋輔(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は1.「顕在化しにくい発達障害」の特性を明らかにすること、2.スクリーニングするアセスメント手法を確立すること、そして3.現場での導入を考えて統合された評価シートを作成し、その妥当性、信頼性を検討することを目的とした。とくにチック症、吃音症、不器用症、読み書き障害という顕在化しにくい発達障害に焦点を絞り、スクリーニングできる手法の開発を2年間かけて目指した。
研究方法
研究分担者の協力を得て、わが国の全11地方(内閣府地区分類)のサンプルエリアから、合計3542名(55機関)のデータを得た。本サンプル数は、各障害の推定有病率(誤差±1%)および推定信頼区間(95%)の観点から十分なサンプルサイズであり、全11地方の就学前機関(保育園・幼稚園・こども園)と医療機関をカバーしているため、本邦の年長児の代表値と見なせると考えた。
チック症、吃音症、読み書き障害、不器用症のそれぞれの評価項目を統合した観察シートを利用した。
結果と考察
全国11地方のサンプルエリアから、観察シートの調査を行い合計3542名のデータを得た。その結果、観察シートについて、尺度特性としての信頼性・妥当性が示された。また、観察シートによる障害リスクの有無判別と実際の医療診断の一致率は85.0~97.1%、特異度は85.2~97.1%を示し、極めて高い判別精度が得られた。
統合版では安定的な識別力(IT相関)、等質性(α係数)が各障害の評価項目から認められた。また、19項目による構造的妥当性も認められた。これらから、別々に抽出した評価項目を統合して作成した観察シートは、尺度特性として信頼性・妥当性が極めて良好であり、尺度として利用することに十分耐えうるものと考えられる。
結論
研究班で作成した観察シート(19項目)は、スクリーニングとしての機能、すなわち“リスクのあるものを取りこぼさない”ことができると考えられる。観察シートは、精度面においても今後のスクリーニングに向けて有用なものと考えられた。
顕在化しにくい発達障害を就学前の早期かつ高精度にスクリーニングする学術的意義に加えて、紙面1枚で実質5分程度の所要時間という簡便さを併せ持つため、費用面・実施面において社会実装にむけた実現性を有する行政的意義の高いものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201717001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
28年度に抽出した評価項目が19項目に統合することで信頼性等に影響が生じるかをまず検討した。統合版では安定的な識別力(IT相関)、等質性(α係数)が各障害の評価項目から認められた。また、19項目による構造的妥当性も認められた。これらから、別々に抽出した評価項目を統合して作成した観察シートは、尺度特性として信頼性・妥当性が極めて良好であり、尺度として利用することに十分耐えうるものと考えられた。
臨床的観点からの成果
顕在化しにくい4つの発達障害を、就学前期において、同時・高精度・簡便にスクリーニングする方法は国内外で前例が少なく、オリジナリティの高いもので治療・支援面の臨床的意義はもとより、リスク児を早期に見つけることで各疾患が顕在化する前の生物学的な前駆症状の解明や重症化前の予防技術開発などにつながることも考えられる。特異度は全疾患で85%を越えており、スクリーニングとしての機能、すなわち“リスクのあるものを取りこぼさない”ことができると考えられる。
ガイドライン等の開発
現在のところ、ガイドライン開発には至っていない。2019年3月に「チェックリスト活用マニュアル」を完成し、国立障害者リハビリテーションセンター発達障害情報・支援センターサイト上で公開した。多数のDLがあり保育所・幼稚園ならびに巡回相談での活用普及が図られている。
その他行政的観点からの成果
観察シートを利用することは、顕在化しにくい発達障害の早期発見につながるものと考える。障害に対する早期発見は、児への直接の早期支援のみならず、保護者・保育士等への障害啓蒙、家庭内での養育レジリエンスの向上など、障害に対する合理的配慮施策の効率的な運用を可能とする。特に本観察シートは、紙面1枚(A4)で実質5分程度という簡便さがあり、費用面・実施面において社会実装の実現性は高い。
その他のインパクト
研究代表者は2017年8月26日27日に青山学院大学で開催の「平成29年度発達障害医学セミナー」においてコーディネーターを務めた。全国から発達障害支援に関わる医師やコメディカル、教員、保育士、幼稚園教諭が参集し、吃音、チック症、読み書き障害、不器用症の基本と早期アセスメントの重要性について研究分担者を中心とする講師による講義を行った。2019年1月に上智大学で「顕在化しにくい発達障害の早期発見」をテーマに公開シンポジウムを開き、多くの質問を頂き好評を博した。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
吃音?チック?読み書き障害?不器用?の子どもたちへ 保育所・幼稚園・巡回相談で役立つ“気づきと手立て"のヒント集を発刊し、当該発達障がいの啓発活動を行った。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
稲垣真澄,米田れい子
総論:医療の立場から.特集 限局性学習症(学習障害)
児童青年精神医学とその近接領域 , 58 (2) , 205-216  (2017)
原著論文2
稲垣真澄
医療の現場から見た発達障害児の教育と福祉
発達障害研究 , 40 (1) , 31-32  (2018)
原著論文3
鈴木浩太,稲垣真澄
読み書きの困難さを示す発達性協調運動障害児に対する漢字指導:聴覚法と指なぞり法の併用の有用性について
認知神経科学 , 20 (3, 4) , 165-171  (2018)
原著論文4
稲垣真澄,田中美歩
音読検査(特異的読字障害を対象にしたもの)
小児内科 , 50 (9) , 1418-1421  (2018)

公開日・更新日

公開日
2023-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201717001Z