認知症地域包括ケア実現を目指した地域社会創生のための研究

文献情報

文献番号
201716004A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症地域包括ケア実現を目指した地域社会創生のための研究
課題番号
H28-認知症-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
神崎 恒一(杏林大学 医学部高齢医学)
研究分担者(所属機関)
  • 櫻井 孝(国立長寿医療研究センター もの忘れセンター)
  • 木之下 徹(のぞみメモリークリニック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
2,890,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
急増する認知症高齢者への対応策として、新オレンジプランのなかで“認知症の人の意思が尊重され、住み慣れた地域でできる限り長く暮らしていける社会を実現すること”が目標のひとつとして掲げられている。認知症の人とその家族を支えるためには認知症の状態に応じて適切な医療、介護サービスを提供する体制を整えると同時に認知症の人や家族の視点に立ったまち作りを進めていく必要がある。そのための研究を行った。
研究方法
今年度は以下の1~5について研究を実施した。
結果と考察
1. 認知症のひと本人、家族介護者を対象として医療・介護等の介入を行い、その効果を本人のQOLや家族の介護負担度等客観的な指標を用いて評価する
<結果> 地域活動への参加の有無およびその内容:初回調査においては22例(全体の34.4%)、追跡調査においては14例(34.1%)で、何らかの地域活動への参加が報告された。追跡調査時のZarit得点において地域活動に参加していない群では得点が上昇したのに対して参加群では低下した。また、EQ5D効用値において地域活動に参加群で低下したのに対して参加群では値が上昇した。
<考察> 本人が継続的に地域活動に参加することが介護者の介護負担軽減につながること、また有意傾向ではあるが、地域活動への参加によって本人のQOLが改善する傾向がみられ、それに伴って介護負担軽減につながった可能性が考えられる。
2. 認知症の病期分類(軽度、中等度、重度)に基づいた適時・適切な生活支援策(ケアパス)の構築と利用推進
<結果> 三鷹市では認知症の病期に基づく医療・介護・福祉サービスの具体的な提供策を地域資源の明示と併せて冊子の形で示した。このなかには医師会、専門医療機関、在宅相談機関による病・診・介護の連携体制のことが盛り込まれているほか、認知症相談窓口、介護者広場、オレンジカフェ、家族交流の場、認知症・介護学習の場などの支援策が、病期に応じて三鷹市地図上でも示されている。
<考察> ケアパスの作成によって市民は各サービスを受けるための具体的な方法がわかるようになると考えられる。今後、資源がどの程度活用され、それが認知症の人やその家族のためになっているかを検証していく予定である。
3. 三鷹市での“認知症にやさしいまち”作りの支援
<結果> 平成29年は11月18日に「認知症にやさしいまち三鷹」を開催した。この会のテーマは「認知症の人の情動刺激」であり、第1部では「演劇で情動機能を刺激し、認知症を改善~感動豊かな生活を送ろう~」の講演、第2部では演劇情動療法の実演を認知症のひとと家族を交えて行った。
<考察> 今年度のテーマは“情動刺激”であり、情動刺激(演劇情動療法)によって大脳賦活化を行うことを説いた。
4. 家族教室の効果測定⇒効用をランダム介入試験で評価
<結果> 介護者心理支援介入プログラム(CEP)により介護者の抑うつスコア(CES-D)が有意に改善し、対照(自習)群で増悪した。また、CEPにより介護者の「介護充足感」「認知症の人への愛情」「介護による自己成長感」コーピング技術が改善した。
<考察> CEP参加群で介護者の抑うつが低下した背景には介護コーピング(「介護をポジティブに受容する」「インフォーマル、フォーマルなサポートを活用できるようになった」)の改善「介護充足感」「認知症の人への愛情」「介護による自己成長感」が改善したことが関係していると考えられる。
5. 認知機能低下者の運転免許更新に関する地域での具体的対応策の検討
<結果> 平成29年3月に認知機能低下高齢者の運転免許更新に関する対策会議を北多摩南部医療圏6市の認知症疾患医療センターならびに行政、医師会等の関係者を集めて行った。警視庁運転免許本部からの概要説明に続いて各市に分かれて具体策の検討を行った。その際、認知症疾患医療センターとかかりつけ医、もしくはサポート医の対応方法を流れ図を作って明示した。
<考察> 警察庁の統計によれば自主返納者が多いことがわかり、必ずしも医療機関を受診しなかったひとが相当数いたと推察される。
結論
今年度は以下の成果を得た。
① 認知症のひとの地域活動への参加が、介護者の介護負担軽減と、本人のQOLが改善につながる可能性があること。
② 認知症の病期分類(軽度、中等度、重度)に基づいた適時・適切な生活支援策(ケアパス)を作成した。
③市民啓発を目的として「認知症にやさしいまち三鷹」イベントを開催し「認知症の人の情動刺激」の大切さを説いた。
④ 家族教室の効用をランダム介入試験で評価した結果、介護者心理支援介入プログラムの実施によって、介護者の抑うつ(介護ストレス)が有意に低下した。
⑤ 認知機能低下者の運転免許更新に関する地域での具体的対応策を市単位で打ち出した。

公開日・更新日

公開日
2019-05-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-05-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201716004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,757,000円
(2)補助金確定額
3,757,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 807,613円
人件費・謝金 1,104,293円
旅費 617,300円
その他 360,795円
間接経費 867,000円
合計 3,757,001円

備考

備考
預金利息の1円を補助金にプラスして支出しました。

公開日・更新日

公開日
2018-11-27
更新日
-