慢性の痛み診療・教育の基盤となるシステム構築に関する研究

文献情報

文献番号
201714001A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性の痛み診療・教育の基盤となるシステム構築に関する研究
課題番号
H27-痛み-指定-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
牛田 享宏(愛知医科大学医学部 学際的痛みセンター/運動療育センター(兼任) )
研究分担者(所属機関)
  • 山下 敏彦(札幌医科大学 整形外科学講座)
  • 伊達 久(仙台ペインクリニック)
  • 矢吹 省司(福島県立医科大学医学部 整形外科学講座)
  • 木村 慎二(新潟大学医歯学総合病院 リハビリテーション科)
  • 山口 重樹(獨協医科大学医学部 麻酔科学講座)
  • 加藤 実(日本大学医学部 麻酔科学系麻酔科学分野)
  • 井関 雅子(順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座)
  • 八反丸 善康(東京慈恵会医科大学附属病院 麻酔科)
  • 松平 浩(東京大学医学部附属病院22世紀医療センター 運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座)
  • 田倉 智之(東京大学大学院医学系研究科 医療経済政策学)
  • 小杉 志都子(慶應義塾大学医学部 麻酔学教室)
  • 大鳥 精司(千葉大学 整形外科)
  • 北原 雅樹(横浜市立大学医学部 麻酔科学講座)
  • 川口 善治(富山大学医学部 整形外科)
  • 中村 裕之(金沢大学 医薬保健研究域医学系環境生態医学・公衆衛生学)
  • 杉浦 健之(名古屋市立大学大学院医学研究科)
  • 青野 修一(愛知医科大学医学部 疼痛データマネジメント寄附講座)
  • 松原 貴子(日本福祉大学健康科学部 リハビリテーション学科)
  • 笠井 裕一(三重大学 脊椎外科・医用工学講座)
  • 福井 聖(滋賀医科大学医学部 麻酔科学講座)
  • 柴田 政彦(大阪大学大学院医学系研究科 疼痛医学寄附講座)
  • 中塚 映政(医療法人青州会なかつか整形外科リハビリクリニック)
  • 西田 圭一郎(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科生体機能再生・再建学講座整形外科)
  • 檜垣 暢宏(愛媛大学大学院医学系研究科 麻酔科)
  • 田口 敏彦(山口大学大学院医学系研究科)
  • 川崎 元敬(高知大学教育研究部 医療学系整形外科)
  • 西尾 芳文(徳島大学大学院理工学研究部)
  • 細井 昌子(九州大学病院 心療内科)
  • 門司 晃(佐賀大学医学部附属病院 精神神経科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 慢性の痛み政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
39,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性痛は神経や筋骨格系の器質的な要因と心理・社会的な要因が患者の痛みの慢性化に複合的に関わるため、従来の縦割り型診療アプローチでは改善させられないところも多く、ドクターショッピングなど医療資源の無駄の要因となっている。これらに対して病態を集学的手法で多面的に分析・治療するシステムの有用性が諸外国では多く報告されており、本研究では運動器、神経系、精神心理のそれぞれの専門家を集約させた集学的診療体制を整え、チームによる分析と介入の試行を行った。その結果、集学的に取り組むことで、痛みや生活障害、精神心理状態を改善させることを明らかにしてきている。しかし、実際にセンターの構築にあたっては病院経営から見るとそれ自体が医療資源を使うため現状の医療制度の中での課題は大きい。他方、慢性痛医療は生物心理社会的な問題であり、国民の知識の向上など病院だけでなく社会として担うべき部分も大きい。従って、国民の健康増進という観点から、地域や地域の医療システムと連携し医療経済も含めた全体像の中で有益性が高く、社会への教育活動などの機能を有する本邦のニーズにフィットした痛みセンターの開発が今後必要であると考えられる。
研究方法
1)集学的慢性痛診療チームの構築
2)集学的チームによる医療の実践
  慢性痛患者を分類し、どの様なタイプの患者にどのような介入効果が発揮できるかを検証する。
  1.多角的解析による慢性痛患者群の分類 
  2.運動療法と教育・認知行動療法による介入の検証
  3.運動療法介入効果の評価と明確化
  4.HPVワクチン接種後の疼痛等の患者の診療
3)集学的痛み診療システムの社会・医療経済への効果の調査
4)データ収集・管理システムの構築
5)研究成果や慢性痛の問題点と対処法の国民への普及啓発の促進
結果と考察
1)集学的慢性痛診療チームの構築
  新規施設(3施設)を含め21施設で、運動器の診療の専門家、神経機能管理の専門家、精神・心理専門家がチームを構成して診療に当たる体制が出来た。
2)集学的チームによる医療の実践
  1.多角的解析による慢性痛患者群の分類
   ICD11(案)を用いて分類の分類。新患患者に対してカンファレンスでICD11および適応されるべき診療施設の分類を進めている。
  2.運動療法と教育・認知行動療法による介入の検証
   短期外来集中プログラムの取り組み、及び入院での治療介入の研究を進めた。
  3.運動療法介入効果の評価と明確化
   慢性頚肩痛有訴者群では介入2週目にはPPTが上昇,3週目になるとPPT上昇に加え,TSの減衰を認めた。
  4.HPVワクチン接種後の疼痛等の患者の診療
   生物心理社会モデルとしての指導を行った結果、半数以上のケースで何らかの症状の改善を得ることができた。
3)集学的痛み診療システムの社会・医療経済への効果の調査
  地域医療における役割の構築と連携システムの構築(愛知県モデル事業の推進)を行った。
  また、慢性痛医療社会経済調査(石川県志賀町)を行い医療費の算出をしたが、これらの値は外国と比較して高いことがわかった。
4)データ収集・管理システムの構築
  Web問診システムの運用準備を行い、研究協力機関で倫理委員会を通した上で運用を開始した。
5)研究成果や慢性痛の問題点と対処法の国民への普及啓発の促進
  市民公開講座2回、医療者研修会を4回、NPOいたみラボと協力し開催した。
  自立支援用冊子「体と脳のトレーニング処方箋(28年度作成)」の普及状況のチェックと評価を進める。
結論
21施設で集学的・学際的痛みセンターの構築に取り組んできた。施設により様々な形態での運用をおこなっているが、NRS、ロコモ25、PDAS、HADS、PCS、EQ-5D、アテネ不眠尺度において有意な改善がみられており、集学的アプローチによる治療で慢性痛の改善が得られることが明らかにされた。また、満足度も良好な成績が得られていた。本システムは多くの医療資源を投入する傾向がどうしても生じるため、効率的に適切な患者を周辺クリニックから紹介あるいは逆紹介するシステムの構築に取り組んだ。難治性症例には短期外来集中プログラムを取り組んできているが併せて入院での治療介入など新たな介入についての研究も並行して進めた。

公開日・更新日

公開日
2018-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201714001B
報告書区分
総合
研究課題名
慢性の痛み診療・教育の基盤となるシステム構築に関する研究
課題番号
H27-痛み-指定-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
牛田 享宏(愛知医科大学医学部 学際的痛みセンター/運動療育センター(兼任) )
研究分担者(所属機関)
  • 山下 敏彦(札幌医科大学 整形外科学講座)
  • 伊達 久(仙台ペインクリニック)
  • 矢吹 省司(福島県立医科大学医学部 整形外科学講座)
  • 木村 慎二(新潟大学医歯学総合病院 リハビリテーション科)
  • 山口 重樹(獨協医科大学医学部 麻酔科学講座)
  • 加藤 実(日本大学医学部 麻酔科学系麻酔科学分野)
  • 井関 雅子(順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座)
  • 八反丸 善康(東京慈恵会医科大学附属病院 麻酔科)
  • 住谷 昌彦(東京大学医学部附属病院)
  • 松平 浩(東京大学医学部附属病院22世紀医療センター 運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座)
  • 田倉 智之(東京大学大学院医学系研究科 医療経済政策学)
  • 小杉 志都子(慶應義塾大学医学部 麻酔学教室)
  • 大鳥 精司(千葉大学 整形外科)
  • 北原 雅樹(横浜市立大学医学部 麻酔科学講座)
  • 川口 善治(富山大学医学部 整形外科)
  • 中村 裕之(金沢大学 医薬保健研究域医学系環境生態医学・公衆衛生学)
  • 杉浦 健之(名古屋市立大学大学院医学研究科)
  • 青野 修一(愛知医科大学医学部 疼痛データマネジメント寄附講座)
  • 松原 貴子(日本福祉大学健康科学部 リハビリテーション学科)
  • 笠井 裕一(三重大学 脊椎外科・医用工学講座)
  • 福井 聖(滋賀医科大学医学部 麻酔科学講座)
  • 柴田 政彦(大阪大学大学院医学系研究科 疼痛医学寄附講座)
  • 中塚 映政(医療法人青州会なかつか整形外科リハビリクリニック)
  • 西田 圭一郎(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科生体機能再生・再建学講座整形外科)
  • 尾形 直則(愛媛大学 整形外科)
  • 檜垣 暢宏(愛媛大学大学院医学系研究科 麻酔科)
  • 田口 敏彦(山口大学大学院医学系研究科)
  • 横山 正尚(高知大学教育研究部医療学系麻酔科学)
  • 河野 崇(高知大学教育研究部医療学系麻酔科学)
  • 川崎 元敬(高知大学教育研究部医療学系整形外科)
  • 西尾 芳文(徳島大学大学院 理工学研究部)
  • 細井 昌子(九州大学病院 心療内科)
  • 門司 晃(佐賀大学医学部附属病院 精神神経科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 慢性の痛み政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性痛は神経や筋骨格系の器質的な要因と心理・社会的な要因が患者の痛みの慢性化に複合的に関わるため、従来の縦割り型診療アプローチでは改善させられないところも多く、ドクターショッピングなどの要因となっている。これらに対して病態を集学的手法で多面的に分析・治療するシステムの有用性が諸外国では多く報告されており、本研究では運動器、神経系、精神心理のそれぞれの専門家を集約させた集学的診療体制を整え、チームによる分析と介入の試行を行った。その結果、集学的に取り組むことで、痛みや生活障害、精神心理状態を改善させることを明らかにしてきている。しかし、実際にセンターの構築にあたっては病院経営から見るとそれ自体が医療資源を使うため現状の医療制度の中での課題は大きい。他方、慢性痛は生物心理社会的な問題であり、国民の知識の向上など病院だけでなく社会として担うべき部分も大きい事もわかっている。従って、国民の健康増進という観点から、痛みセンターと地域や地域の医療システムを連携し、医療経済敵にも有益性が高く、社会への教育活動などの機能を有する本邦のニーズにフィットしたシステムの開発が今後必要であると考えられる。
研究方法
1)集学的慢性痛診療チームの構築
 1.痛みセンターの整備および構成メンバーの検討
 2.集学チームによる医療の実践のためのツールとシステム作り
 3.本邦の現状に合った集学的チームシステムのタイプの分類と試行
2)学際的痛み診療システムの社会・医療経済への効果の調査
3)運動療法と教育・認知行動療法介入方法のBrushup
4)愛知モデルの構築(周辺クリニックや在宅との連携)
5)疫学的分析調査(志賀町での慢性痛関連レセプト調査,その他)
6)研究成果の公開・発信(ホームページ、及びガイドラインの作成など)
結果と考察
1)集学的慢性痛診療チームの構築
 1.痛みセンターの整備および構成メンバーの検討
  21施設でチーム診療体制を構築した。
 2.集学的チームによる医療の実践のためのツールシステム作り
  連携ツール(患者の器質的要因、精神・心理的要因、社会的要因を評価)を導入し、患者の分類を行った。
  また、ICD11(案)を用いての患者の分類を調査した。
 3.本邦の現状に合った集学的チームシステムのタイプの分類と試行
  慢性痛患者を分類し、どの様なタイプの患者にどのような介入効果が発揮できるか検証した。
2)学際的痛み診療システムの社会・医療経済への効果の調査
 慢性の痛みにシステムとして対応するための判断基準案PainDETECT 、EQ-5D、Genericスクリーニングツール、SSS-8に加えて腰痛以外の慢性疼痛に活用が可能で、
 領域得点の5問に集約されたgeneric STarT Back 5-item screening tool (STarT-G)について高リスク群のカットオフ値などの検討を行った。
3)運動療法と教育・認知行動療法介入方法のBrushup
 運動介入ツール「いきいきリハビリノート」を作成した。
 また、集中プログラム(外来型/入院型:3 週間)による教育・認知行動療法介入では、難治性症例の改善が得られた。
4)愛知モデルの構築(周辺クリニックや在宅との連携)
 愛知県内における慢性疼痛患者の診療に携わる先生方を中心に愛知県痛み診療ネットワークモデル事業を発足し、実臨床としての連携と医療従事者の教育を進めた。
5)疫学的分析調査(志賀町での慢性痛関連レセプト調査、その他)
 疫学などに関する研究として、志賀町における調査,脊椎の痛みにおける調査、瞑想の心理的効果に関する研究、解析を行った。
6)研究成果の公開・発信(ホームページ、及びガイドラインの作成など)
 研究班のホームページを作成した(http://www.paincenter.jp/)。
 また、市民セミナー、医療者研究会の共催、慢性疼痛治療ガイドラインの作成を行った。
結論
本邦の医療の現状に適合した慢性痛治療体制の構築を目的として、診療チームを編成すると同時に介入・治療の効果を評価するツールを開発して、分析した。その結果、痛みの程度,生活障害度,満足度などの改善が得られてきていることが明らかにできた。慢性痛診療体制やその成果の広報や慢性痛の啓発をインターネットなどの媒体で行った。更に慢性の痛みのガイドラインを作成し、それにより正しい治療の普及を進めた。

公開日・更新日

公開日
2018-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201714001C

収支報告書

文献番号
201714001Z