文献情報
文献番号
201709011A
報告書区分
総括
研究課題名
健康寿命及び地域格差の要因分析と健康増進対策の効果検証に関する研究
課題番号
H28-循環器等-一般-009
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
田宮 菜奈子(国立大学法人筑波大学 医学医療系 ヘルスサービスリサーチ分野)
研究分担者(所属機関)
- 高橋 秀人(国立保健医療科学院)
- 野口 晴子(早稲田大学 政治経済学術院 公共経営研究科)
- 武田 文(筑波大学 体育系)
- 松本 吉央(産業技術総合研究所 ロボットイノベーション研究センター)
- 太刀川 弘和(筑波大学 医学医療系)
- 伊藤 智子(筑波大学 医学医療系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
12,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
健康寿命は、健康日本21の中で「日常生活に制限のない期間の平均」とされている。本研究では、先行研究に則り、健康寿命を「要介護度2になるまでの期間」と定義する。健康寿命の延伸には、健康的な人に対する生活習慣病の発症予防(ポピュレーションアプローチ)のみでなく、発症後の重症化予防(ハイリスクアプローチ)も不可欠である。そこで、我々は、「要支援となった人々が要介護度2以上に認定されるまでの期間(以下、境界期健康寿命)」を新たに提案し、全国介護レセプトより実際に市町村別の算出を行うとともに、その地域格差の把握と要因分析、現行の介護予防サービスの効果検証、さらには知見の社会実装を目指すこととした。
本研究の目的は、
①全国介護レセプトを用いた境界期健康寿命の推移と地域差の記述、地域を単位として格差要因を同定するエコロジカル・スタディ(平成29・30年度)
②介護保険レセプトより個人単位で把握した介護予防サービス利用状況と境界期健康寿命の分析による予防効果の検証(平成29・30年度)
③明らかにした要因や知見を地域に還元、PDCAサイクルによる改善を実践し、政策提言につなげる(30年度)
の3つである。
本研究の目的は、
①全国介護レセプトを用いた境界期健康寿命の推移と地域差の記述、地域を単位として格差要因を同定するエコロジカル・スタディ(平成29・30年度)
②介護保険レセプトより個人単位で把握した介護予防サービス利用状況と境界期健康寿命の分析による予防効果の検証(平成29・30年度)
③明らかにした要因や知見を地域に還元、PDCAサイクルによる改善を実践し、政策提言につなげる(30年度)
の3つである。
研究方法
H29年度は、計画通り目的①、②について実施した。まず、都道府県・市町村単位の健康寿命、境界期健康寿命を算出、地域差の要因を探るエコロジカルスタディを行った。また、市町村単位の介護予防サービス利用状況を算出し、境界期健康寿命との相関を分析した。さらに、都道府県単位のソーシャルキャピタル指標および中高年の精神指標(睡眠、飲酒、抑うつ)、社会的かかわりや運動・スポーツ実施状況と健康との関係、介護ロボットを含む福祉用具貸与サービスの利用など、健康寿命、境界期健康寿命の地域差に関連し得る様々な地域指標を算出した、一部は健康寿命、境界期健康寿命との相関を分析した。境界期健康寿命の算定方法についてのさらなる検討も行った。
結果と考察
H28年度に申請した各種公的データの利用許可が得られ、昨年度の試算を基に、本格的に分析を開始した。年度後半からは論文発表など研究成果も挙げつつあるある。
まず、介護レセプトより、個人の要支援までの期間、境界期健康寿命を実際に算出、都道府県・市町村別に集計し、地域格差がみられることを示した。要因分析にも着手し、要支援初回認定年齢より、境界期健康寿命のほうが、医療の整備によって延長できる可能性を示した。また、同じく介護レセプトより、市町村単位の介護予防サービス利用状況を算出し、境界期健康寿命との相関を分析した。境界期健康寿命との有意な単相関はみられなかったが、今後はこの市町村ごとの要支援認定者一人当たり予防給付単位平均を、境界期健康寿命を従属変数としたエコロジカルスタディにおける共変量の一つとして分析する予定である。
境界期健康寿命の地域格差の要因となりうる各種指標についても分析を進め、一部は健康寿命、境界期健康寿命との相関分析を行った。中高年縦断調査の分析により、ソーシャルキャピタル、睡眠、飲酒のそれぞれに地域格差を認め、介護頻度と境界期健康寿命、睡眠と気候・社会経済的状態、飲酒量と境界期健康寿命について都道府県レベルで相関を認めた。社会活動に参加すること、職業があること、友人づきあいがあることが、要介護状態を招くリスク因子である糖尿病の発症率の低下への関連の度合いが強いことが示された。運動・スポーツ実施については、男性においては中年期の家族や友人とあるいは町内会や自治会での運動・スポーツ活動が健康寿命の一要因であることが、示唆された。境界期健康寿命を延伸しうる介護予防サービスの一例として、介護保険制度における福祉用具貸与サービスの利用状況について、自動排泄処理装置に着目して試算的分析を行った。初期の普及のしかたに地域差があり、地方部での利用に遅れがあることなどが明らかになった。
加えて、境界期健康寿命の算定方法についてもさらに検討を深め、要介護1以下の対象者が要介護2以上への移行確率を用いて、年齢階層別の「境界期健康寿命(余命)」を試算も行った。
まず、介護レセプトより、個人の要支援までの期間、境界期健康寿命を実際に算出、都道府県・市町村別に集計し、地域格差がみられることを示した。要因分析にも着手し、要支援初回認定年齢より、境界期健康寿命のほうが、医療の整備によって延長できる可能性を示した。また、同じく介護レセプトより、市町村単位の介護予防サービス利用状況を算出し、境界期健康寿命との相関を分析した。境界期健康寿命との有意な単相関はみられなかったが、今後はこの市町村ごとの要支援認定者一人当たり予防給付単位平均を、境界期健康寿命を従属変数としたエコロジカルスタディにおける共変量の一つとして分析する予定である。
境界期健康寿命の地域格差の要因となりうる各種指標についても分析を進め、一部は健康寿命、境界期健康寿命との相関分析を行った。中高年縦断調査の分析により、ソーシャルキャピタル、睡眠、飲酒のそれぞれに地域格差を認め、介護頻度と境界期健康寿命、睡眠と気候・社会経済的状態、飲酒量と境界期健康寿命について都道府県レベルで相関を認めた。社会活動に参加すること、職業があること、友人づきあいがあることが、要介護状態を招くリスク因子である糖尿病の発症率の低下への関連の度合いが強いことが示された。運動・スポーツ実施については、男性においては中年期の家族や友人とあるいは町内会や自治会での運動・スポーツ活動が健康寿命の一要因であることが、示唆された。境界期健康寿命を延伸しうる介護予防サービスの一例として、介護保険制度における福祉用具貸与サービスの利用状況について、自動排泄処理装置に着目して試算的分析を行った。初期の普及のしかたに地域差があり、地方部での利用に遅れがあることなどが明らかになった。
加えて、境界期健康寿命の算定方法についてもさらに検討を深め、要介護1以下の対象者が要介護2以上への移行確率を用いて、年齢階層別の「境界期健康寿命(余命)」を試算も行った。
結論
今年度は、健康寿命、境界期健康寿命の地域格差を示し、その要因分析にも着手した。地域格差の要因となりうる各種指標についても分析を進め、一部は健康寿命、境界期健康寿命との相関分析を行った。
H30年度は、今年度算出した各種地域指標をエクスポージャーに加え、エコロジカルスタディをさらに精緻化するともに、③を実施して研究成果の社会への還元を目指す。
H30年度は、今年度算出した各種地域指標をエクスポージャーに加え、エコロジカルスタディをさらに精緻化するともに、③を実施して研究成果の社会への還元を目指す。
公開日・更新日
公開日
2018-07-05
更新日
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