1型糖尿病の実態調査、客観的診断基準、日常生活・社会生活に着目した重症度評価の作成に関する研究

文献情報

文献番号
201709008A
報告書区分
総括
研究課題
1型糖尿病の実態調査、客観的診断基準、日常生活・社会生活に着目した重症度評価の作成に関する研究
課題番号
H28-循環器等-一般-006
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
田嶼 尚子(東京慈恵会医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 池上 博司(近畿大学 医学部)
  • 今川 彰久(大阪医科大学 内科学Ⅰ)
  • 島田 朗(埼玉医科大学 内分泌糖尿病内科)
  • 杉原 茂孝(東京女子医科大学 医学部)
  • 菊池 透(埼玉医科大学 小児科)
  • 浦上 達彦(日本大学 医学部)
  • 西村 理明(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 植木 浩二郎(国立国際医療研究センター 糖尿病研究センター)
  • 川村 智行(大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学)
  • 菊池 信行(横浜市立みなと赤十字病院 小児科)
  • 中島 直樹(九州大学病院 メディカルインフォメーションセンター)
  • 梶尾 裕(国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科 診療科長)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国では、全国の1型糖尿病の有病者数や治療の実態、さらに社会的、日常的生活に関する十分な知見が得られていない。本研究は、1型糖尿病、特に、インスリンが枯渇した1型糖尿病を客観的に判断する基準と重症度の検討、有病者数の推定と社会的重症度を明らかにすることを目的とした。
研究方法
本研究班は、診断基準分科会、社会的重症度分類分科会、登録制度分科会の3分科会からなる。研究分担者は分科会別研究、横断的な共同研究、個別研究を、研究ロードマップに従って施行した。平成29年度研究期間内に、全体班会議3回、リーフレット作成関連会議2回開催した。その他、電子メイルや電話で頻回に連絡をとりあい議論を深めた。疫学的、医療統計学的妥当性の検討は逐次行った。さらに、関連学会の理事長や有識者からなる諮問委員会を設け、広くご意見を求め指導を仰いだ。本研究は、ヘルシンキ宣言の趣旨に則って行い、東京慈恵会医科大学倫理委員会、並びにそれぞれ関連医療施設の倫理委員会の承諾を得て行った。
結果と考察
診断基準分科会は、平成28年度に作成した「確実にインスリン依存状態にある1型糖尿病を客観的に判断するための基準」を用いて、小児・成人計139名を対象にデータ解析を行った。その結果、重症度をHbA1c, 低血糖、高血糖、ケトアシドーシス、の観点から総合的に評価するための指標として、小児、成人ともに、血中CPR値で、ケトーシス傾向がある1型糖尿病のスクリーニングには空腹時血中C-ペプチド0.6ng/ml未満が、インスリン分泌枯渇した1型糖尿病には0.1あるいは0.2ng/mlが適切とした。小児・成人に共通した重症度指標ならびにその値が明示されたのは、国内外で初めてである。
登録制度分科会はこれらの結果を受け、1型糖尿病、中でも、インスリンが枯渇した症例の有病者数の推算に取り組んだ。満武班との共同研究によるナショナルデータベース(NDB)へのアクセス、大阪府下における病院調査により、わが国初の小児成人を網羅した「1型糖尿病」ならびに「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」の有病率者の推算を行うことができた。NDBを用いた場合の有病者数は第一次集計では141,000名、スコア化による判定ロジックを加えた最終ロジックを用いた第二次集計では、「1型糖尿病」は117,363名、「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」の有病者数(随時血中CPR0.2ng/ml 相当)」は92,280名で、それぞれの陽性的中率/感度は67.5%/78.4%および67.6%/87.6%であった。病院調査による「1型糖尿病」の有病者数は114,600名で、近似した値が得られた。
社会的重症度分類分科会は、1型糖尿病患者の日常・社会生活の実態を把握するため、QOLをより詳しく評価するため医療費、生命保険の加入、公的補助などの項目を追加した調査票を用いて、研究分担者・協力者の所属医療施設等に通院する1型糖尿病患者約500例とするアンケート調査を実施した。回答を得た308名の調査票を解析した結果、約4割が「経済的な暮らし向きが苦しい」、約8割が「治療費が負担」と回答し、生涯にわたる公的補助を求めていた。「糖尿病があることで有意義な人生を送れない」と回答したものは76%に達し、その理由は、転職や結婚の制限、医療費が負担でそのために血糖管理が不十分になっている、などであった。24時間血糖モニターを用いた臨床研究により、小児、成人ともに、インスリン分泌が枯渇した症例では血糖変動幅が大きく低血糖のリスクが増加していた。
1型糖尿病疾病登録データベースを構築し、日本の6臨床医学会が定めた臨床コア項目、インスリン治療研究会による小児に特化した項目、並びに本研究班作成のアンケート調査項目を搭載した。本年度は、成人1型101名(年齢の中央値27歳)を対象に横断研究を行い、臨床データと社会的重症度の関連を検討した。
結論
わが国で初めて、全人口における「1型糖尿病」ならびに「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」の有病者数を推計し、社会的重症度を視野に入れた1型糖尿病の疾病登録データベースを構築した。今後、登録制度を継続することにより、発症時からの疫学的、臨床的データが標準化された形で集積されるので、1型糖尿病の病態解明や重症度別に対応する医療の提供等、医療水準の向上に資することができる。一方、本疾患に対する社会の正しい理解の普及と啓発などの啓蒙活動は必須であり、研究成果を取り纏めた「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病とは」と題する一般向けリーフレットを作成した。今後、研究成果を原著論文として報告し、その内容を診療ガイドに反映させることを、目標として掲げたい。

公開日・更新日

公開日
2018-07-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-08-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201709008B
報告書区分
総合
研究課題
1型糖尿病の実態調査、客観的診断基準、日常生活・社会生活に着目した重症度評価の作成に関する研究
課題番号
H28-循環器等-一般-006
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
田嶼 尚子(東京慈恵会医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 池上 博司(近畿大学医学部・内分泌・代謝・糖尿病内科)
  • 今川 彰久(大阪医科大学内科学Ⅰ)
  • 島田 朗(埼玉医科大学・内分泌糖尿病内科)
  • 杉原 茂孝(東京女子医科大学・医学部)
  • 菊池 透(埼玉医科大学大学病院小児科)
  • 浦上 達彦(日本大学・医学部)
  • 西村 理明(東京慈恵会医科大学・医学部)
  • 植木 浩二郎(国立国際医療研究センター・糖尿病研究センター)
  • 川村 智行(大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学)
  • 菊池 信行(横浜市立みなと赤十字病院・小児科)
  • 中島 直樹(九州大学病院 メディカルインフォメーションセンター)
  • 梶尾 裕(国立国際医療研究センター・病院 糖尿病内分泌代謝科)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院・生涯健康研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全国の1型糖尿病の有病者数や治療と生活の実態に関する十分な知見が得られていない。本研究は、インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病の客観的診断と重症度指標の策定、当該診断基準等をみたす患者数の推計、社会的重症度を明らかにすること、さらに、これら疾患を前向きに登録する疾病登録制度の確立とその妥当性の検討を目的とした。
研究方法
本研究班は、診断基準分科会、社会的重症度分類分科会、登録制度分科会の3分科会からなる。研究分担者は分科会別研究、横断的な共同研究、個別研究を、研究ロードマップに従って施行した。平成28、29年度研究期間内に、全体班会議5回、リーフレット作成関連会議2回開催した。その他、電子メイルや電話で頻回に連絡をとりあい議論を深めた。疫学的、医療統計学的妥当性の検討は逐次行った。さらに、関連学会の理事長や有識者からなる諮問委員会を2回開催した。本研究は、ヘルシンキ宣言の趣旨に則って行い、東京慈恵会医科大学倫理委員会、並びにそれぞれ関連医療施設の倫理委員会の承諾を得て行った。
結果と考察
小児・成人1型糖尿病139名のデータを解析した結果、インスリン依存度を判定する客観的指標としては、グルカゴン負荷試験の結果等により、血中CPR値、次に糖尿病の罹病期間が適切であった(平28)。小児・成人ともに、ケトーシス傾向を示す1型糖尿病のスクリーニングには0.6ng/ml未満、インスリン分泌の枯渇を示す値は、血中CPR 0.1ng/mlあるいは0.2ng/ml が示された(平29)。小児・成人に共通した重症度指標ならびにその値が明確に示されたのは、国内外で初めてである。
次いで、平成28年までに開発した1型糖尿病の抽出アルゴリズムを機械学習により精緻化し、1型糖尿病推定症例を検出する抽出ロジックを策定した(平29)。カルテレビューにより評価した「インスリン依存性の有無」を用いて、インスリン依存1型糖尿病の抽出ロジックを作成し精度を評価した。満武班との共同研究によりNational Data Base(NDB)へのアクセス(平29)が可能となり、これに抽出ロジックをあてはめて有病者数を推計した第一次集計結果は141,000人、スコア化による判定ロジックを加えた最終ロジックを用いた第二次集計では、「1型糖尿病」は117,363名、「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」の有病者数(随時血中CPR0.2ng/ml 相当)」は92,280名で、それぞれの陽性的中率/感度は67.5%/78.4%および67.6%/87.6%であった。大阪府における病院調査では、1型糖尿病糖尿病を、主治医の診断、自己抗体陽性、インスリン治療ありと定義し、得られた結果を全国に当てはめて推計したところ有病者数は、114,600人であった(平29)。
一方、20歳以上の1型糖尿病の生活の実態把握のため、年収、生命保険への加入等、日常生活・QOLへの影響を評価できる項目を追加した調査票を作成し(平28)、完全匿名化によるアンケート調査を行った(平29)。回答を得た308名のデータを解析した結果、約4割が「経済的な暮らし向きが苦しい」、約8割が「治療費が負担」と回答し、生涯にわたる公的補助を求めていた。76%が「糖尿病のため有意義な人生を送れない」と回答し、関連因子として有意差を認めたのは、転職・退職の経験、障害年金を受けている、結婚が制限された(男性)、現在の暮らし向きが悪い(女性)、医療費が負担、大血管症あり、であった。24時間血糖モニターを用いた臨床研究により、小児、成人ともに、インスリン分泌が枯渇した症例では血糖変動幅が大きく低血糖のリスクが増加していた。
1型糖尿病疾病登録データベースを構築し、6臨床医学会による臨床コア項目、インスリン治療研究会による項目及び本研究班作成のアンケート調査項目を搭載した(平28)。平成29年度はに、成人1型101名(年齢中央値27歳)を対象に横断研究を行った。約6割がインスリンポンプ使用者で、多くの症例が「生涯にわたる公的補助が必要」と回答した。
結論
わが国で初めて、全人口における「1型糖尿病」ならびに「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」の有病者数を推計し、社会的重症度を視野に入れた1型糖尿病の疾病登録データベースを構築した。今後、研究を継続して、発症時からの疫学・臨床データを集積することにより、1型糖尿病の病態解明や重症度別に対応する医療の提供等、医療水準の向上に貢献したい。また、本疾患に対する社会の正しい理解の普及と啓発などの啓蒙活動は重要で、「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病とは」と題する一般向けリーフレットを作成した(平29)。インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病患者は臨床的にも社会生活の面でも厳しい状況に置かれており、公費補助は必須であることを強調したい。

公開日・更新日

公開日
2018-07-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-07-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201709008C

収支報告書

文献番号
201709008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,900,000円
(2)補助金確定額
16,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,867,071円
人件費・謝金 3,395,023円
旅費 1,280,188円
その他 5,509,992円
間接経費 3,900,000円
合計 16,952,274円

備考

備考
研究分担者の川村智行(大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学 講師)が、この研究に関する論文をJournal of Diabetes Investigation誌に投稿した。ただ、予算の関係上、これ以上川村先生には分担金を出せなかったので、自費で投稿費を支払っていただく形となった。したがって、差額52,274円は、川村先生の投稿代としてかかった分である。

公開日・更新日

公開日
2018-11-02
更新日
-