非肥満者に対する保健指導方法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201709003A
報告書区分
総括
研究課題名
非肥満者に対する保健指導方法の開発に関する研究
課題番号
H27-循環器等-一般-009
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
宮本 恵宏(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 予防健診部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室)
  • 岡山  明(生活習慣病予防研究センター)
  • 磯 博康(大阪大学大学院医学系研究科社会医学講座)
  • 三浦 克之(滋賀医科大学医学部社会医学講座公衆衛生学部門)
  • 田中太一郎(東邦大学健康推進センター)
  • 小川 佳宏(九州大学大学院医学研究院病態制御内科学分野)
  • 荒木田美香子(国際医療福祉大学小田原保健医療学部公衆衛生看護学)
  • 坊内良太郎(国立国際医療研究センター研究所糖尿病情報センター臨床情報研究室)
  • 東山 綾(国立研究開発法人国立循環器病研究センター予防健診部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
6,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成20年4月より生活習慣病予防施策として、内臓脂肪蓄積もしくは肥満を必須条件としたメタボリック症候群に着目し、特定健康診査・特定保健指導が実施されている。本研究班では、内臓脂肪蓄積もしくは肥満ありと判定されなかった者(以下、非肥満者)でも、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙は心血管疾患発症の危険因子であること、また非肥満者でも、生活習慣への介入により、いずれの心血管危険因子も改善が可能であることを示した。さらに、保健指導支援者が危険因子ごとに改善すべき生活習慣の優先度や、具体的な生活習慣の改善方法を理解できる保健指導のガイドライン「特定保健指導の対象とならない非肥満を含む心血管疾患危険因子保有者に対する生活習慣改善指導ガイドライン(以下、本ガイドライン)」を作成した。本ガイドラインがわが国の地域・職域で活用されるためには、その実行性を検討する必要がある。今年度は、我々は地域・職域において、非肥満かつ循環器疾患危険因子を2つ以上もつ者を対象に、ガイドラインを使用した保健指導を行い、継続的支援における、支援者との連絡継続率や、生活習慣改善目標の実施率を、特定保健指導の積極的支援を受けた者と比較することにより、ガイドラインの実行性を検討した。
研究方法
本研究班で作成した「特定保健指導の対象とならない非肥満を含む心血管疾患危険因子保有者に対する生活習慣改善指導ガイドライン(以下、本ガイドライン)」の実行性を検討するために、1職域5地域で、上記ガイドラインを使い、特定保健指導の対象とならない追加リスクを2つ以上もつ非肥満者(以下、非肥満の保健指導対象者)に保健指導を実施し、各施設の特定保健指導積極的支援群と実行性が同等かを検討した。非肥満の保健指導対象者は、平成28もしくは29年度の特定健診で、すぐに医療機関受診が必要な者を除く、特定保健指導の階層化基準にある追加リスクもしくはLDLコレステロール140mg/dL以上180mg/dL未満のうち、2つ以上もつ非肥満者とした。非肥満への保健指導は、指導者が本ガイドラインを使用する以外は、各施設における特定保健指導積極的支援と同様に行った。主要評価項目は、保健指導開始後約3か月までの継続的支援における、対象者との連絡の継続率や、生活習慣改善目標の実施率である。非肥満の保健指導対象者からは、研究参加への同意書を取得し、対照となる特定健診・特定保健指導受診者に対しては健診データの研究利用のオプトアウトを行った。また、保健指導効果を明らかにするために、研究対象者の健診データを継続的に収集し、比較可能な情報を収集するシステムを開発した。
結果と考察
対象者との連絡の継続率、生活習慣改善目標の実施率に両群で差はなく、本ガイドラインを用いた非肥満者への保健指導は、実行性において特定保健指導の積極的支援に劣らないことが示された。本ガイドラインの抜粋は、「標準的な健診・保健指導【平成30年度版】」に掲載された。本ガイドラインが、わが国の保健指導の現場で利用されることが期待される。
結論
「特定保健指導の対象とならない非肥満を含む心血管疾患危険因子保有者に対する生活習慣改善指導ガイドライン」の実行性を検証した。研究の実施経過:本研究班は「特定保健指導の対象とならない非肥満を含む心血管疾患危険因子保有者に対する生活習慣改善指導ガイドライン」作成のために、初年度はエビデンスの構築と整理、2年度はガイドライン作成、3年度は実行性の検証を実施した。申請時の研究計画に沿った実施経過であった。

公開日・更新日

公開日
2018-07-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-03-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201709003B
報告書区分
総合
研究課題名
非肥満者に対する保健指導方法の開発に関する研究
課題番号
H27-循環器等-一般-009
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
宮本 恵宏(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 予防健診部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室)
  • 岡山  明(生活習慣病予防研究センター)
  • 磯 博康(大阪大学大学院医学系研究科社会医学講座)
  • 三浦 克之(滋賀医科大学医学部社会医学講座公衆衛生学部門)
  • 田中太一郎(東邦大学健康推進センター)
  • 小川 佳宏(九州大学大学院医学研究院病態制御内科学分野)
  • 荒木田美香子(国際医療福祉大学小田原保健医療学部公衆衛生看護学)
  • 坊内良太郎(国立国際医療研究センター研究所糖尿病情報センター臨床情報研究室)
  • 東山 綾( 国立研究開発法人国立循環器病研究センター 予防健診部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成20年4月より、内臓脂肪蓄積もしくは肥満を必須条件としたメタボリック症候群に着目した特定健康診査・特定保健指導が実施されている。一方で、非肥満者でも高血糖や血圧高値、脂質異常がある場合は循環器疾患のリスクが高いことが知られている。本研究班の目的は、非肥満者における循環器疾患のリスク・病態を最新のエビデンスやコホートデータを用いて評価し、エビデンスに基づき非肥満者に対する具体的な保健指導プログラムや保健指導の方法を含む「特定保健指導の対象とならない非肥満を含む心血管疾患危険因子保有者に対する生活習慣改善指導ガイドライン(以下、本ガイドライン)」を作成することである。
研究方法
本研究班では、 (1) わが国のコホート研究データを用いた非肥満者における循環器疾患リスクの検証、(2) わが国の介入試験データを用いた非肥満者を対象とした生活習慣への介入によるCVD危険因子改善効果の検証、(3)非肥満者を対象に含む生活習慣改善によるCVDリスクやCVD危険因子の改善効果に関する先行研究の文献レビューとエビデンステーブルの作成、(4)非肥満者を対象とする保健指導ガイドラインの作成と(5)作成したガイドラインの実行性の検討を行った。
結果と考察
初年度はエビデンスの構築と整理、2年度はガイドライン作成、3年度は実行性の検証を実施した。申請時の研究計画に沿った実施経過であった。本ガイドラインは、非肥満でも危険因子があれば心血管疾患リスクが上昇し、生活習慣を改めることで危険因子を改善できること、危険因子別の改善すべき生活習慣、生活習慣別の具体的な改善法を記載し、各医学会ガイドラインに沿いながらも具体的なアドバイス例を含む実用性を重視した内容となった。本ガイドラインの抜粋は、「標準的な健診・保健指導【平成30年度版】」第3編別添3として平成30年2月に公表された。今後、わが国の保健指導の現場で本ガイドラインが活用されることが期待される。
結論
実行性のある「特定保健指導の対象とならない非肥満を含む心血管疾患危険因子保有者に対する生活習慣改善指導ガイドライン」を作成した。

公開日・更新日

公開日
2018-07-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-03-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201709003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまで、非肥満の日本人を対象に、生活習慣改善による循環器疾患危険因子や循環器疾患リスクへの効果を検討した介入研究は非常に少なく、生活習慣改善の効果を結論づけるに十分なエビデンスレベルではなかった。しかし、本研究班により、地域住民を対象とした活指導の血圧改善効果を検討したRCT、 HISLIM研究、HIPOP-OHP研究、保健指導による血糖指標の改善効果を検討した研究を対象に、肥満の有無で層別解析をおこなった結果、肥満の有無にかかわらず、生活習慣の改善が有効であることが示めされた。
臨床的観点からの成果
特定健診の対象ではないが、非肥満者でも心血管疾患危険因子の改善が重要である点は、現行の「標準的な健診・保健指導プログラム改訂版」でも述べられている通りである。本研究班のガイドラインが保健指導の現場で活用されることで、肥満者に加え、非肥満者にも保健指導を実施することが可能となる。
ガイドライン等の開発
本研究班で作成した「特定保健指導の対象とならない非肥満の心血管疾患危険因子保有者に対する生活習慣改善指導ガイドライン」の抜粋版は、「標準的な健診・保健指導プログラム【平成30年度版】」の第3編別添3に掲載されている。
その他行政的観点からの成果
標準的な健診・保健指導プログラム【平成30年度版】」に掲載された。
その他のインパクト
市民向け一般公開の健康講演会(平成29年11月28日開催、大阪府吹田市立千里市民センター)にて本研究班の成果を一般市民に啓発した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Bouchi Ryotaro et al.
Is visceral adiposity a modifier for the impact of blood pressure on arterial stiffness and albuminuria in patients with type 2 diabetes?
Cardiovascular Diabetology  (2016)
原著論文2
Tatsumi Y, Nakao YM, Masuda I, et al.
Risk for metabolic diseases in normal weight individuals with visceral fat accumulation: a cross-sectional study in Japan.
BMJ Open.  (2017)
原著論文3
Bouchi R, Ohara N, Asakawa M, et al.
Is visceral adiposity a modifier for the impact of blood pressure on arterial stiffness and albuminuria in patients with type 2 diabetes?
Cardiovasc Diabetol  (2016)
原著論文4
Fukuda T, Bouchi R, Takeuchi T, et al.
The ratio of visceral to subcutaneous fat area predicts cardiovascular events in patients with type 2 diabetes.
J Diabetes Investig  (2018)
原著論文5
宮澤伊都子,三浦克之,宮本恵宏, 他
肥満、非肥満別の各種循環器疾患危険因子による循環器疾患死亡の集団寄与危険割合:NIPPON DATA80の29年追跡結果より
日本循環器病予防学会誌  (2017)
原著論文6
Nakamura K, Watanabe M, Okuda N,et al.
The Influence of the Japanese NationwideCardiovascular Prevention System Health Guidance on Smoking Cessation AmongSmokers: A Propensity Score Matching Analysis.
J Atheroscler Thromb.  (2018)

公開日・更新日

公開日
2022-05-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
201709003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,400,000円
(2)補助金確定額
8,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,560,478円
人件費・謝金 3,037,740円
旅費 1,246,193円
その他 810,238円
間接経費 1,938,000円
合計 8,592,649円

備考

備考
研究分担者1名において、自己資金(192639円)にて支出を負担したこと、また、他一名において、研究費の管理銀行通帳口座に利息(10円)が加算されたため補助金確定額に差異が出た。

公開日・更新日

公開日
2018-11-14
更新日
-