文献情報
文献番号
201706005A
報告書区分
総括
研究課題名
バイオ医薬品の開発に関する経済効果分析を目的とした調査研究
課題番号
H29-特別-指定-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
坂巻 弘之(東京理科大学 経営学部・臨床経済学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医薬品産業は、成長戦略の主要業種として位置づけられているが、近年、グローバル市場においてバイオ医薬品の重要性が一層増している。本研究では、公表データ等をもとに、わが国におけるバイオ医薬品の承認、開発ならびに売上げ等の状況、バイオ医薬品の経済等を分析した。また、これまで保険者がバイオシミラー(バイオ後続品、BS)使用促進に対してどのような取組みを行っているかについては明らかになっていない。そこで保険者のBSの使用促進に対する考え方について明らかにするとともに、レセプトデータからのBSの使用状況について、保険者を対象にアンケート調査を行った。さらに、欧州、シンガポールにおけるバイオ医薬品産業振興策についても現地調査を行った。これらの調査をもとに、わが国におけるバイオ医薬品産業振興を検討することを目的とした。
研究方法
公表データ等をもとに、わが国におけるバイオ医薬品の承認、開発ならびに売上げ等の状況を調査した。また、先行研究や業界団体で実施された調査等から、バイオ医薬品の経済、製造開発に関わるバイオ医薬品固有のリスク等を検討した。バイオ受託製造機関CMOについても、先行研究等をもとに、現在の製薬企業のCMO利用状況や今後のバイオ医薬品開発における役割や方向性についても検討した。
保険者におけるBSに関する調査については、保険者機能を推進する会くすり研究会会員24組合を対象とし、2016年度の健康保険組合の概況(医療費等の給付状況など)、2016年6月、2017年6月それぞれの1か月分のBSに関するレセプト件数を調査した。これらの調査結果等をもとに、関係者から構成される研究班会議において議論を行い、わが国におけるバイオ医薬品産業振興について考察した。
保険者におけるBSに関する調査については、保険者機能を推進する会くすり研究会会員24組合を対象とし、2016年度の健康保険組合の概況(医療費等の給付状況など)、2016年6月、2017年6月それぞれの1か月分のBSに関するレセプト件数を調査した。これらの調査結果等をもとに、関係者から構成される研究班会議において議論を行い、わが国におけるバイオ医薬品産業振興について考察した。
結果と考察
承認、売上げ状況をみると、バイオ医薬品、特に抗体医薬の国内製薬企業の承認数は極めて少なく、売上げも外資系企業の比率が極めて高い。また、開発状況を見ると、抗体医薬ならびに抗体改変(抗体医薬・抗体薬物複合体技術術など)が主流と考えられるが、国内企業のバイオ開発は限定された企業にとどまっている。バイオ医薬品については、製品そのものの売上げ(付加価値)による経済牽引、製造に関わる関連市場の売上げ、貿易収支の改善などの経済影響だけでなく、バイオ医薬品開発・製造に関わる人材育成、ノウハウ蓄積等のためにもわが国でのバイオ医薬品製造とそのための基盤整備が重要である。
BSの開発・生産についても、国内での開発は限定的である。また、抗体医薬BSの売上げは低迷しており、BSの使用促進もBS産業振興策の一つと考えられた。
保険者におけるBS使用状況については、2016年度から2017年にかけてバイオシミラーの使用割合はやや増加しており、その内訳としては、インスリン・グラルギン製剤の増加の要因が大きかった。バイオシミラーの使用については、現状では約半数が使用促進すべきとの立場であるが、慎重とすべきとの意見も約半数であり、慎重な立場とする理由は、情報不足が多かった。
BSの開発・生産についても、国内での開発は限定的である。また、抗体医薬BSの売上げは低迷しており、BSの使用促進もBS産業振興策の一つと考えられた。
保険者におけるBS使用状況については、2016年度から2017年にかけてバイオシミラーの使用割合はやや増加しており、その内訳としては、インスリン・グラルギン製剤の増加の要因が大きかった。バイオシミラーの使用については、現状では約半数が使用促進すべきとの立場であるが、慎重とすべきとの意見も約半数であり、慎重な立場とする理由は、情報不足が多かった。
結論
バイオ医薬品開発においては、製造に関わるリスクが特徴的であるといえる。近年主流の動物細胞の製造設備投資については、培養槽の大きさに依存するが、設備投資額は培養槽の大きさと指数関数的に増加する。従って、わが国においては、今後、小回りが効き、設備投資額の小さい小規模でシングルユースの培養槽が主流になると予想され、さらに製造コストの低減につながる連続生産技術の確立が重要である。一方、製造リスク低減だけでなく、研究開発の効率化のためにも、製薬企業からのCMOに対する期待は高いものの、現状では、海外CMOの利用が中心であり、国内CMOも未熟である。今後、国内CMOの育成も重要である。
国内でのバイオ医薬品開発促進のためには、バイオ医薬品に関わるシーズ探索、シーズ探索から開発、承認に至るプロセスの効率化が必要である。また、今後、再生医療や細胞医療など次世代バイオ医薬の開発も念頭に置いた規制等の仕組みも検討すべきである。
国内でのバイオ医薬品開発促進のためには、バイオ医薬品に関わるシーズ探索、シーズ探索から開発、承認に至るプロセスの効率化が必要である。また、今後、再生医療や細胞医療など次世代バイオ医薬の開発も念頭に置いた規制等の仕組みも検討すべきである。
公開日・更新日
公開日
2019-05-23
更新日
-