文献情報
文献番号
201624017A
報告書区分
総括
研究課題名
室内濃度指針値見直しスキーム・曝露情報の収集に資する室内空気中化学物質測定方法の開発
課題番号
H27-化学-指定-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
奥田 晴宏(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
- 神野 透人(名城大学薬学部)
- 酒井 信夫(国立医薬品食品衛生研究所生活衛生化学部)
- 香川 聡子(横浜薬科大学薬学部)
- 上村 仁(神奈川県衛生研究所理化学部)
- 田辺 新一(早稲田大学創造理工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
10,401,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
現行の室内濃度指針値が策定されてから10年以上が経過し、代替化合物による新たな室内空気汚染の実態が明らかになってきた。指針値の見直しには対象化合物の詳細リスク評価が必要であり、正確な汚染実態の調査データが求められる。しかし、室内空気中の揮発性有機化合物(VOC)や準揮発性有機化合物(SVOC)の測定方法は必ずしも十分に整備されていない状況にあり、指針値を新たに設定する際には標準試験法の提示が求められる。そこで本研究では、総揮発性有機化合物(TVOC)並びに今後指針値策定の可能性があるVOC及びSVOCの試験法の開発を行う。諸外国の動向を情報収集し、策定する測定方法が国際的に整合するようにし、室内濃度指針値の策定に貢献する。
研究方法
TVOCの採取法について、24時間で採取量が5~20 Lになる基本条件を満たすサンプリング法を検討した。VOCは、環状シロキサン類、グリコールエーテル類について、サンプリング条件及び分析条件を検討した。加熱脱着法及び溶媒抽出法における捕集管を比較した。SVOCは、リン酸エステル類の質量分析計(MS)、炎光光度検出器(FPD)及び窒素リン検出器(NPD)における検出感度の比較をした。妥当性評価に向け、捕集管や器具の汚染によるばらつきを防止するフタル酸エステルの測定方法について改良を行った。ネオニコチノイド系殺虫剤は、捕集管からの溶媒抽出条件を検討し、LC/MS/MSを用いて測定する方法を確立した。空気試験法に関する日本標準規格(JIS)と国際標準規格(IS)との関係、及びISO/TC146/SC6のWorking Groupsの国際会議や、2016年度のISO/TC146/SC6の報告書から、ISの策定の進行状況を調べた。
結果と考察
機器メーカーと共同で時間プログラムを設定できるポンプを開発し、これを用いたTVOCの間欠サンプリング法を考案し、従来法との比較を行った。両者は良好な相関を示し、間欠サンプリング法が低流速サンプリング法の代替となり得ることを実証した。これを基にTVOC試験法の原案を作成した。VOCのグリコールエーテル類および環状シロキサン類の試験法として、加熱脱離-GC/MS法(加熱脱着法)および溶媒抽出-GC/MS法(溶媒抽出法)を検討した。加熱脱着法では、テナックスTAを充填剤とした単層捕集管で概ね良好な結果が得られた。2層式捕集管を用いた場合にも同等の結果が得られ、分析対象に応じた捕集管の選択が可能であった。溶媒抽出法では、抽出溶媒として二硫化炭素を使うのが良かった。一部のグリコールエーテルの捕集剤への強い吸着の可能性が示唆され、更に検討を加える必要があった。環状シロキサン類の吸着剤としては、ヤシガラ活性炭が適していると考えられた。
リン酸トリエステル類13種を対象に、フタル酸エステル類とのGC/MS一斉分析法を検討した。リン酸トリエステル類に対しては、MS、NPD、FPD検出器の中では、FPDが最も感度高く検出できることがわかった。各種空気捕集用サンプラーを比較した結果、得られる定量値は同程度であった。器具、フィルター等の洗浄方法を提案し、フタル酸エステルの汚染を低レベルに抑えられることを示した。また、市販のクリーンアップ済み捕集剤や可搬型空気捕集ポンプが利用できること等を明らかにし、フタル酸エステルの測定方法のバリデーションの準備ができた。ネオニコチノイド系殺虫剤のLC/MS/MS分析条件を確立し、捕集フィルターからの溶出法を検討した。可塑剤、難燃剤などの分析方法はJISに対応したものがなく、ISO規格では16000-31(リン酸エステル)の改定作業が開始される。なお、フタル酸エステルのGC-MS測定方法が2017年にISO規格となり、今後整合性について検討する必要がある。
リン酸トリエステル類13種を対象に、フタル酸エステル類とのGC/MS一斉分析法を検討した。リン酸トリエステル類に対しては、MS、NPD、FPD検出器の中では、FPDが最も感度高く検出できることがわかった。各種空気捕集用サンプラーを比較した結果、得られる定量値は同程度であった。器具、フィルター等の洗浄方法を提案し、フタル酸エステルの汚染を低レベルに抑えられることを示した。また、市販のクリーンアップ済み捕集剤や可搬型空気捕集ポンプが利用できること等を明らかにし、フタル酸エステルの測定方法のバリデーションの準備ができた。ネオニコチノイド系殺虫剤のLC/MS/MS分析条件を確立し、捕集フィルターからの溶出法を検討した。可塑剤、難燃剤などの分析方法はJISに対応したものがなく、ISO規格では16000-31(リン酸エステル)の改定作業が開始される。なお、フタル酸エステルのGC-MS測定方法が2017年にISO規格となり、今後整合性について検討する必要がある。
結論
本研究では、VOC及びSVOCの測定方法に関して、国際的に整合性のとれた標準試験法を提案することを目標としている。TVOC測定のための間欠サンプリング法を確立した。VOCは、環状シロキサン類、グリコールエーテル類のサンプリング条件及び分析条件を検討した。SVOCについてはネオニコチノイド系殺虫剤のLC/MS/MS分析条件を確立し、捕集フィルターからの溶出法を検討した。フタル酸エステルに関しては可搬型サンプリング法を作成した。リン酸トリエステル類の検出器ごとの感度及び捕集フィルターの比較を行った。さらに、国内外の測定方法に関する基準規格を調査し、動向を明らかにした。今後上記対象化合物の測定方法については引き続き検討するとともに、バリデーションを行って妥当性を評価し、標準試験法としてシックハウス検討会に提案することを目指す。
公開日・更新日
公開日
2017-05-09
更新日
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