国際食品規格策定プロセスを踏まえた食品衛生規制の国際化戦略に関する研究

文献情報

文献番号
201622027A
報告書区分
総括
研究課題名
国際食品規格策定プロセスを踏まえた食品衛生規制の国際化戦略に関する研究
課題番号
H26-食品-指定-007
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
豊福 肇(国立大学法人 山口大学 共同獣医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 石見 佳子(国立研究開発法人国立健康・栄養研究所、食品保健機能研究部・部長)
  • 渡邉敬浩(国立医薬品食品衛生研究所食品部・室長)
  • 登田美桜(国立医薬品食品衛生研究所安全情報部・室長)
  • 松尾真紀子(東京大学大学政策ビジョン研究センター・特任助教)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
6,957,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、Codexの各部会等における過去の議論の内容、各国の立場、日本政府による対応、議論のもとになるリスク評価等の関連情報を収集、分析し、日本政府の対処方針の検討に必要な論点を科学的又は国際政治学的専門知識をもとに整理して迅速に情報提供することにより、我が国の国益、食品の取扱い等に合致したCodex規格等の策定に貢献し、さらに、国際的な考え方や動向との整合性を整理・分析し、今後国内外対応において考慮すべき事項を提言することも目的とした。
研究方法
各部会及びその事前調整打ち合わせへの参加による議論の把握、並びに部会等の会議文書、報告書、会場内文書、FAO/WHO専門家会議によるリスク評価からの科学的アドバイスに関する報告書の分析であった。複数年度にわたる研究ではあるが、コーデックス委員会の各部会は継続的な議題と新規の議題があり、それらを日本にとっての重要度に基づく優先順位をつけてフォローした。
 またリスク評価の国際的な取組みに関するシンポジウムを企画し、WHOの担当者や、FAO/WHO専門家会議の経験豊富な専門家を講師に招聘し開催することで、今後、日本がCodexや専門家会議に貢献する上での課題について講師自らの経験に基づき実践的なアドバイスを得た。
さらに、平成26年度から実施している食品安全行政の国際化戦略のための研修の検討について、今年度は、実際の研修試行を通じてカリキュラム、教材の内容をさらに改善し、最終年度の集大成として教科書作成に取り組んだ。
結果と考察
Codexの部会である食品衛生部会(CCFH)、残留動物用医薬品部会(CCRVDF)、食品輸出入検査・認証制度部会(CCFICS)、栄養・特殊用途食品部会(CCNFSDU)、食品汚染物質部会(CCCF)、分析サンプリング部会(CCMAS)及び一般原則部会(CCGP)、並びにCodex総会での議論の動向及び議論のもとになる関連のFAO/WHO専門家会議によるリスク評価からの科学的アドバイスを解析し、我が国からのコメント提出、各部会における対処方針の作成及び部会中での発言を科学的に支援した。Codexの討議内容は流動的であるため、研究すべき対象項目も継続的案件と新規事業が混在し、年度ごとに変更する。今年度解析を実施した主な対象項目は次の通りであった。CCRVDFは電子的作業部会(EWG)での「飼料へのキャリーオーバーの結果として非意図的に食品中に存在する動物用医薬品に基準値を作成する必要が生じた状況に対するポリシーを文書化した討議文書」、第23回部会における議論の概要(ゲンチアナバイオレットのリスク管理に関する勧告等)について、CCFHは第48回部会における議論の概要(食品衛生の一般原則(CAC/RCP 1-1969)及びHACCPに関する付属文書の改正原案、野菜果実の衛生実施規範、ヒスタミンの新規作業)について、CCFICSは第22回部会以降に設置されたEWG(システムの同等性、及び電子的証明書)、CCMASは第37回部会で設置が決められた6つのEWGのうち、EWG1「サンプリングの一般ガイドライン(CAC/GL50)の改訂」、EWG2「測定値の不確かさのガイドライン(CAC/GL54)の改訂」、EWG3「分析対象となる化学物質が複数あり、それらを成分として総量を求める分析法へのクライテリアアプローチの拡張」について、CCCFは食品汚染物質のML設定状況の比較及び近年議論されている各食品汚染物質のML設定の経緯について、各部会における議論や関連のリスク評価、我が国の今後の課題を検討した。CCGP、執行理事会及び総会でのコーデックス作業管理及び執行委員会の機能についても同様の検討を行った。またCCNFSDUに関連して、コーデックスのNRVsと日本のNRVs、最新の食事摂取基準(2015年版)の値および日本人の集団特性の比較検討を行った。生活習慣病予防を目的とする場合には、日本のNRVs を集団の基準として用いること、男女差および総食事摂取量を考慮して活用することの重要性が明らかとなった。

シンポジウムでは、科学的アドバイスに関与する人材育成とデータ作成に関して多くの示唆が得られた。
さらに、平成26年度から実施している食品安全行政の国際化戦略のための研修の試行を今年度も実施し、その教材をベースにして、最終年度の集大成として教科書作成に取り組んだ。
結論
コーデックス各部会での議論を系統的に取りまとめ、今後も引き続き政府及び国内の専門研究者が議論に参加できる基盤を構築したことは、日本政府がコーデックス各部会でのプレゼンスを高め、また国際的な食品安全政策を決定する上でも役立つ資料となった。

公開日・更新日

公開日
2017-11-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-07-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201622027B
報告書区分
総合
研究課題名
国際食品規格策定プロセスを踏まえた食品衛生規制の国際化戦略に関する研究
課題番号
H26-食品-指定-007
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
豊福 肇(国立大学法人 山口大学 共同獣医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 石見 佳子(国立研究開発法人国立健康・栄養研究所、食品保健機能研究部・部長)
  • 渡邉 敬浩(国立医薬品食品衛生研究所食品部・室長)
  • 登田  美桜(国立医薬品食品衛生研究所安全情報部・室長)
  • 松尾 真紀子(東京大学大学政策ビジョン研究センター・特任助教)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
コーデックスの食品衛生部会(CCFH)、魚類・水産食品部会(CCFFP)、残留動物用医薬品部会(CCRVDF)及び輸出入食品検査認証部会(CCFICS)、栄養・特殊用途食品部会(CCNFSDU)、食品汚染物質部会(CCCF)、分析サンプリング部会(CCMAS)、一般原則部会(CCGP)及び総会での議論の動向をまとめ、議論の元になるFAO/WHOからの科学的アドバイスの解析、我が国のコメント提出及び部会における対処方針作成を科学的に支援し、また我が国の課題について整理した。
研究方法
 各部会に実際に参加し、取材、会議文書、報告書、会場内文書, JECFA, JEMRA等のFAO/WHOからの科学的アドバイスに関する報告書を参考にした。
 専門家を招聘し、主に食品安全部の職員を対象に、研修を実施し、カリキュラム、教材、実施方法等について検討を行った。
 これまでにCCNFSDUで策定されたNRVsと日本のNRVs、最新の食事摂取基準(2015年版)の値および日本人の集団特性の比較検討を行った。
 Codexに関するリスコミニケーションイベントを毎年開催し、inputsを得た。
 CCMASにおける議論の共有や、分析現場の意見集約を目的とし、登録検査機関協会を通じて有志機関を募集し、CCMAS連絡協議会を組織した。
結果と考察
 CCFHにおいては、食品衛生の一般原則及びHACCPに関する付属文書の改正原案、野菜果実の衛生実施規範、ヒスタミンの新規作業の作業文書の作成、食品衛生の一般原則を寄生虫のコントロールに適用するためのガイドラインの電子的及び物理的作業部会の運営、文書案の改訂作業並びに本会議での各国からの質疑に対応した。
 またCCFFPにおいてはヒスタミンの電子的作業部会の運営及び本会議で議論に貢献した。
 CCRVDFにおいては、牛BSTのMRL案等のリスク評価の解析、各国コメント及び本会議場内外での情報収集、解析等により、討議文書等の議題の対処方針及び発言内容の決定に貢献した。
 CCFICSにおいては、システムの同等性、及び電子的証明書、国の食品管理システムの規制面での実施状況のモニタリングに関するガイダンス案について、先行研究の解析、各国コメント及び本会議場内外での情報収集、解析等により、対処方針及び発言内容の決定に貢献した。
 CCCFにおいては、コメ中の無機ヒ素、各種食品中の鉛、チョコレート及びカカオ製品中のカドミウム等の食品中汚染物質に関して、議論の経緯と我が国の今後の課題についてまとめた。また、食品汚染物質のML設定状況について我が国の状況と比較した。
 CCMASにおいては、承認された分析・サンプリング法の詳細を調査し、国内影響等について検討した。また承認のプロセスにおいて重要となる分析法あるいはサンプリング法の主要な要素等について、承認時の議論をもとに検討した。CAC/GL 83の策定、CAC/GL54並びにCAC/GL50の改訂に至るまでの議論や作業、またそれから派生した、複数成分を対象とする分析法のクライテリアアプローチ等の議論を網羅して概要をまとめ、国際貢献に資する政府コメント案の作成に取り組むとともに、我が国の今後の課題を提言した。さらに、分析・サンプリング法及び分析結果の品質保証に関する基礎的な知識の伝播や国内における議論を形成する場としての有機的な体制作りを検討した。
 CCNFSDUにおける議論の概要と我が国の今後の課題についてまとめた。第36回CCNFSDUにおいて合意されたビタミン・ミネラルNRVs-R、カリウムのNRV-NCDについて、日本の栄養素等表示基準値(NRVs)、日本人の食事摂取基準値および摂取量との比較を行い、Codexで議論されている国際的な考え方との整合性も視野に入れた検討を行なった。
 CCGPに関しては、総会、執行委員会、CCGPで議論された、Codex作業管理及び執行委員会の機能の議論の経緯分析と今後の課題を解析した。
 公開国際シンポジウム等を開催し、Codexそのものの認知度向上、欧州また米国の取組に関して情報提供を行った。
 食品安全の基礎となる考え方、Codex委員会の最近の動向及び各国の食品安全担当機関におけ
る取り組みについて学び、科学的根拠に基づき国際的に整合性のある食品安全行政の推進に必要な知識・能力を身につけられる研修プログラム及び教材策定、研修の試行と受講者アンケートを踏まえ、より効果的な研修内容にするための改善点を検討した。
結論
 各部会の解析結果は、今後の部会のコメントの作成、部会前の作業文書へのコメント作成、対処
方針の作成等に活用されるとともに、日本の食品安全行政を国際的に整合させるのに役立つ。
 

公開日・更新日

公開日
2017-11-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-07-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201622027C

成果

専門的・学術的観点からの成果
コーデックス委員会(Codex)「食品衛生部会」、「残留動物用医薬品部会」、「食品輸出入検査・認証制度部会」, 「栄養・特殊用途食品部会」、「食品汚染物質部会」、「分析サンプリング部会」、「一般原則部会」及びCodex総会での議論の動向、過去の各国の主張、科学的な情報等を調査して要を整理、わが国のポジション及び意見作成に貢献するとともに、今後の我が国の食品安全行政の課題を指摘した。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
食品安全行政の国際化戦略のための研修のカリキュラム検討、教材作成、教材を用いた検証を行った。
その他のインパクト
厚労省が主催する「食品安全に関するシンポジウム~リスク評価の国際的な取組みの紹介」を本研究班が協賛する形で開催した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
石見佳子
食事摂取基準と栄養素等表示基準値
日本栄養・食糧学会誌 , 69 (4) , 145-150  (2016)
原著論文2
石見佳子
栄養表示のための栄養参照量の国際比較  
栄養学雑誌 , 75 (1) , 39-46  (2017)

公開日・更新日

公開日
2018-07-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201622027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
8,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 977,736円
人件費・謝金 2,012,164円
旅費 2,050,891円
その他 939,751円
間接経費 1,043,000円
合計 7,023,542円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2017-11-28
更新日
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