ウイルスを原因とする食品媒介性疾患の制御に関する研究

文献情報

文献番号
201622024A
報告書区分
総括
研究課題名
ウイルスを原因とする食品媒介性疾患の制御に関する研究
課題番号
H28-食品-一般-006
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
野田 衛(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 博之(秋田県健康環境センター 保健衛生部)
  • 上間 匡(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 高木 弘隆(国立感染症研究所 バイオセーフティー管理室)
  • 鈴木 達也(一般財団法人食品薬品安全センター秦野研究所 外部精度管理調査室)
  • 滝澤 剛則(富山県衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウイルス性食中毒は依然多発し、近年はノロウイルス(NoV)以外のウイルスによる食中毒も増加傾向にある。近年のウイルスを原因とする食中毒は食品取扱者からの食品の二次汚染を原因とする場合が多く、その汚染防止対策の確立が急務である。本研究では、近年、件数・患者数ともに増加傾向にある、NoV、サポウイルス(SaV)、E型肝炎ウイルス(HEV)等のウイルスによる食品媒介性疾患の発生及び被害の拡大を効果的に低減するための手法の確立を目的とする。
研究方法
研究代表者、研究分担者に加え14の地方衛生研究所(研究協力者)の協力の下、研究を実施した。食中毒検査体制の強化に関する研究として、食品のウイルス検査の精度管理、
食中毒調査等に係る検査法の開発・改良・評価(パンソルビン・トラップ法を用いる際のRNA検出系の最適化パンソルビン・トラップ法の捕捉抗体供給源としてのガンマグロブリンの再評価、メタゲノム解析による下水からのNoV・SaVの検出、現行の遺伝子解析手法の評価、ふき取り検体からのウイルス検出法の改良、カキからのウイルス検出法の改良、市販NoV検出キットの評価)、食品媒介ウイルスの食中毒事例,胃腸胃炎事例,下水および食品からの検出と遺伝子解析、NoVの培養法の検討を行った。調理従事者からの二次汚染防止に関する研究として、NoVの不活化、ウイルスの不活化法のガイドライン作成のための基礎研究、効率的な手洗いの方法の検討、トイレの汚染リスク評価を実施した。
結果と考察
食中毒調査における課題解決:食品等からのウイルス検出法の改良に関する研究では食品からのNoV検出法(パントラ法)で、過去に流行がなかったGII.17もガンマグロブリン製剤を用いて検出できることを明らかにした。カキからのウイルス検出においてアセトン処理を導入することで検出感度が向上した。濃縮操作なしで簡便に実施できるフキトリ検査法を確立した。本法を用いて複数の公共施設トイレを対象に2016年10月からNoVモニタリング調査を行ったところ,主に便座裏からNoVが検出された。12月中旬までの調査で検出された遺伝子型はGII.2,GII.6,GII.7,GII.17であったが,最も多く検出された遺伝子型はヒトでの流行傾向と同様にGII.2であった。網羅的ゲノム解析の食中毒調査等への応用に関する研究では、2011年~2013年の下水36検体を解析した結果、25検体からNoVが、24検体からSaVのリードが検出された。いずれも定法では検出されなかった遺伝子群や遺伝子型が検出された。食品のウイルス検査の精度管理に関する研究では10機関を対象に模擬試料および標準DNA溶液を配布し、外部精度管理調査を実施した結果、模擬試料、標準DNA溶液のいずれにおいてもばらつきが小さい結果が得られた。また、NoV陽性糞便検体を用い4種の市販イムノクロマトキットの偽陰性率を明らかにした。食品・環境のサーベイランスでは、市販カキ、下水および患者からのウイルス検出および遺伝子解析を7地方衛生研究所で実施し、2016年に流行したNoVやその他の胃腸炎ウイルスの特徴、食品や環境と患者から検出されるウイルスの関連性などを調べた。2016年はGII.4、GII.17、GII.6、GII.2など多様な遺伝子型が検出され、また2016年2月、5月に下水からA型肝炎ウイルスを検出した。既報を参考に一般的な実験室で実行可能なNoVの培養法を検討するための準備を進めた。予防対策実践における課題解決:現場に応じた不活化法の開発については、衣類等に付着したウイルスを沸かし器や水道の温水で不活化する場合を想定し、35℃~60℃の比較的低温での不活効果を代替ウイルスで調べた結果、1時間程度の短時間では60℃が必要であった。床等を嘔吐物が汚染した際、加熱による不活化を実践する際のペットシートの有用性について検討した結果、塩ビの床では不活化効果が期待できる温度が保てる可能性があるが、絨毯では温度保持が不十分であり、本法による不活化は困難と思われた。不活化剤の改良・開発については、化学薬剤(過酸化水素水、界面活性剤)による衣類に汚染したウイルスの不活化法を検討した。汚染防止法の開発については、ハンドジェルをコーティングすることにより手指にNoVを付着するリスクを低減できることを明らかにした。ウイルスの不活化試験法のガイドラインの作成に関しては、ガイドラインの骨子を取りまとめた。
結論
ウイルスによる食品媒介性疾患の発生予防や被害拡大防止に寄与するデータが得られた研究は概ね研究計画どおり進行している。

公開日・更新日

公開日
2017-11-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-07-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201622024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,000,000円
(2)補助金確定額
12,998,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 11,217,435円
人件費・謝金 267,300円
旅費 1,158,580円
その他 355,432円
間接経費 0円
合計 12,998,747円

備考

備考
支出747円は自己資金にて補填した

公開日・更新日

公開日
2018-07-03
更新日
-