国際的に問題となる食品中のかび毒の安全性確保に関する研究

文献情報

文献番号
201622022A
報告書区分
総括
研究課題名
国際的に問題となる食品中のかび毒の安全性確保に関する研究
課題番号
H28-食品-一般-004
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
小西 良子(麻布大学 生命・環境科学部 食品生命科学科)
研究分担者(所属機関)
  • 渋谷 淳(国立大学法人東京農工大学大学院 農学研究院)
  • 吉成 知也(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
9,167,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
かび毒は、カビが産生する二次代謝物である。世界的に汚染が報告されておりヒトや動物に対して健康被害を引き起こすため、国際的に対応が急がれている食品の危害物質である。そのためかび毒の世界的動向とともに我が国独自の調査研究を行うことは、食の安全性確保において不可欠な課題である。申請課題の研究代表者は平成13年から行われている厚労科研補助金による主要な食品汚染かび毒を対象とした調査研究に関わっている。本研究課題では上記の研究事業で構築した研究組織および手法を用いて、JECFAでのリスク評価の優先度が高いステリグマトシスティン(STE)およびデアセトキシスシルペノール(DAS)を対象に調査研究を行う。
研究方法
1.分析法の開発と妥当性評価小麦中のSTE又はDASの定量分析法について、国内の登録検査機関及び地方衛生研究所計8機関と協力して妥当性の確認試験をおこなった。また、STE又はDASが検出される食品のスクリーニングも上記で確立した方法で実施した。
2.シトリオビリジン(CIT)の毒性実験 10 ppmを高用量として選択し、公比3で投与群(0、1、3、10 ppm)を設定し、妊娠ICRマウスを用いて発達期曝露試験(各群10匹)を行った。妊娠6日目から離乳時(出生後21日目)まで母動物に対して混餌投与することにより、児動物に発達期曝露し、出生後21日目と77日目にそれぞれ解剖を行った。
3.培養によらないカビ毒産生菌種検出法の開発:ST産生能を持つ菌種をPCR増幅の有無で識別できるプライマーをデザインすることを目的に、β-tubulin遺伝子塩基配列を当該section内の複数菌種に渡って多数収集し、種間での配列比較を行った。
結果と考察
1.分析法の妥当性確認試験を行ったところ、両カビ毒において回収率の平均値は90~100%に収まり、良好な結果が得られた。汚染実態調査の結果では、STCは小麦粉、エン麦、ライ麦、ハト麦、雑穀米、コーングリッツ、アーモンド及びコーヒーにおいて陽性検体(定量限界値0.05 μg/kg)が認められた。
2.母動物は10 ppmで分娩後21日目に摂餌量の低値と、3 ppmで摂水量の高値が認められた。また、病理組織学的に10 ppmで肝細胞の壊死が認められた。雄児動物を対象とした脳海馬歯状回における神経新生の解析の結果、曝露終了時に10 ppmで脳の顆粒細胞層下帯における細胞増殖の増加と神経新生制御系の発現変動を特徴とする神経新生障害を示唆する変化が認められた。NMDA型グルタミン酸受容体NR2DをコードするGrin2dの遺伝子発現が離乳時から成熟後まで持続して減少を示したことから、シトレオビリジンの発達期曝露の影響は不可逆的である可能性が示唆された。
3.、β-tubulin遺伝子部分配列を基に、PCRの増幅の有無で菌種を識別可能な検出系を構築できる可能性が示された。次に、土壌や堆積物中の微量の微生物等からDNAを効率よく抽出可能な市販のキットを用い、玄米に付着するカビからのDNA抽出を試みたところ、食品中のカビを直接検出するためのDNA抽出法として有効であることが示された。
結論
1.日本に流通する食品にSTCとDASが混入している実態が明らかになり、実態調査を継続してリスク評価を行うための情報を取得する必要性が示唆された。
2.CITの児動物の神経新生障害に基づいた無毒性量は3 ppm(0.42–1.51 mg/kg体重/日)と判断された。
3.食材に付着したカビ由来のDNAを回収し、非特異的な増幅を回避しながらST産生能を持つ菌種のみを検出することができることが示され、食品を汚染するカビ毒産生菌の迅速検出法の技術的基盤を確立することができた。

公開日・更新日

公開日
2017-11-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-07-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201622022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,000,000円
(2)補助金確定額
11,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,657,694円
人件費・謝金 44,640円
旅費 344,540円
その他 1,120,128円
間接経費 1,833,000円
合計 11,000,002円

備考

備考
消耗品費が2円多くなったので、自費で支払った。

公開日・更新日

公開日
2017-11-28
更新日
-