食品用器具・容器包装等に使用される化学物質に関する研究

文献情報

文献番号
201622021A
報告書区分
総括
研究課題名
食品用器具・容器包装等に使用される化学物質に関する研究
課題番号
H28-食品-一般-003
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
六鹿 元雄(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部 裕(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 杉本 直樹(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品用器具・容器包装、おもちゃ及び洗浄剤(以下、「器具・容器包装等」)の安全性は、食品衛生法の規格基準により担保されているが、製品の多様化、新規材質の開発、再生材料の使用、諸外国からの輸入品の増加等により多くの課題が生じている。さらに近年では、食品の安全性に関する関心が高まり、その試験及び分析に求められる信頼性の確保も重要な課題となっている。また、食品には農薬、動物用医薬品、食品添加物、器具・容器包装からの移行物など多種多様な化学物質が混入する可能性があるが、それらの相互作用については情報収集が不十分である。そのため、健康に影響を及ぼすような相互作用が起こり得る組み合わせやそれらの食品中の濃度について把握することは重要である。そこで本研究では、器具・容器包装等に使用される化学物質に関する研究として、(1) 規格試験法の性能に関する研究、(2) 市販製品中に含まれる化学物質に関する研究、(3) 食品添加物等の複合影響に関する研究を実施した。
研究方法
(1) 規格試験の性能に関する研究では、食品衛生法における試験法について、試験法の改良や試験室間共同実験による性能評価を行った。市販製品に残存する化学物質に関する研究では、協力研究者より研究課題を募り、(2) 市販製品に残存する化学物質の実態調査等を行った。(3) 食品添加物等の複合影響に関する研究では、食品添加物の複合影響に関する文献調査を行った。
結果と考察
(1) 規格試験法の性能に関する研究では、フタル酸エステル材質試験及び溶出試験について試験室間共同試験を実施し、それぞれの性能を評価した。材質試験では、いずれのフタル酸エステルにおいても性能パラメーターの値は良好であり、規格試験法として十分な性能を有していることが判明した。しかし、一部のフタル酸エステルでは、カラム温度や装置メーカーの違いによる差が見られ、特に検量線の形状が2次曲線である場合は、マトリックスによる増感効果を受けることで試験溶液の濃度がやや高くなる傾向があった。溶出試験においても、提案した方法は規格試験法として十分な性能を有することが確認された。しかし、外れ値となる結果が散見されたことから、各試験機関においては十分な精度管理を実施する必要があった。また、ヒ素試験法の改良として、乳等省令のヒ素試験法における試験溶液の調製法(硫硝酸法)の代替法として食品添加物公定書「ヒ素試験法」における検液の調製 第3法及び第4法 における検液の調製法(硝酸マグネシウム・エタノール法)の適用性を検証した。硝酸マグネシウム・エタノール法は、現行の硫硝酸法に比べて試験に要する期間が短く強酸等も使用しないため簡便で安全であり、試験溶液の調製操作による結果のばらつきも小さいことから、試験溶液調製法の代替法として使用可能と考えられた。(2) 市販製品に残存する化学物質に関する研究では、ポリ塩化ビニル製玩具から溶出する可塑剤とリスク評価として、約50検体のPVC製玩具を試料とし、人工唾液および回転式振とう機を用いた動的な溶出試験を行い、含有される可塑剤の溶出量を測定した。得られた溶出量を基に各可塑剤の推定一日曝露量を求めたところ、いずれも耐容一日摂取量を下回っていた。したがって、PVC製玩具から溶出する可塑剤による乳幼児への健康リスクは小さいと考えられた。また、植物油総溶出量試験法の改良として、平成25及び26年度の本研究においてEN 1186-10を基に確立した植物油総溶出物量試験法の改良法について、残存植物油の抽出に長時間を要するLLDPE製厚手成形品への適用性を検討した。その結果、70℃ 5時間の浸漬振とう抽出でEN 1186-10と同等のオリブ油量が得られることが判明した。この改良法変法はEN 1186-10よりもはるかに簡便な試験法である。(3) 食品添加物等の複合影響に関する研究では、我が国で使用が許可され、かつ、その成分規格が設定されている食品添加物689品目を対象として複合影響に関する文献調査を行った。検索エンジンとしてgoogle scholarを用い、検索品目の英名とcombined effect、cumulative effect、synergistic effectを検索用語として調査した結果、多数の文献がヒットした。生体や植物成分等でもある食品添加物については、複合影響を論じた文献ではないものも検索結果に含まれている可能性が高いが、合成添加物についても多数の文献が同様にヒットしており、これらを精査し、食品添加物の複合影響が具体的な研究対象となっている事例を抽出する必要がある。
結論
以上の研究成果は、我が国の器具・容器包装等に使用される化学物質の安全性確保と食品衛生行政の発展に大きく貢献するものと考える。

公開日・更新日

公開日
2017-11-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-07-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201622021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,000,000円
(2)補助金確定額
9,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,090,974円
人件費・謝金 0円
旅費 1,787,022円
その他 5,122,004円
間接経費 0円
合計 9,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-22
更新日
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