文献情報
文献番号
201622016A
報告書区分
総括
研究課題名
食鳥肉におけるカンピロバクター汚染のリスク管理に関する研究
課題番号
H27-食品-一般-010
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
- 山本 茂貴(東海大学 海洋学部)
- 森田 幸雄(東京家政大学 家政学部)
- 中馬 猛久(鹿児島大学 共同獣医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 山本茂貴氏については、平成28年12月末日までとし、平成29年1月からは研究代表者である朝倉が同分担研究を担当することとなった。
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、食鳥肉の生産・処理・流通の各段階において、カンピロバクター汚染低減に資する衛生管理手法に関する科学的知見の集積を図り、より衛生的な食鳥肉の生産~消費に至るフードチェーンの在り方に関する提言を行うことで、本食中毒低減に資するガイドライン策定等の厚生労働行政に寄与することを目的として研究を行なった。
研究方法
研究班では、食鳥肉に関わるフードチェーンを、(1)養鶏農場での生産段階、(2)食鳥処理場における解体段階、(3)加工・流通段階、(4)消費段階の4つに区分した上で、各工程における汚染低減手法に関する情報・データ収集を行うこととしている。
結果と考察
(1)生産段階では国内3養鶏農場より出荷されるブロイラー鶏盲腸便を対象に、カンピロバクター検出試験を行い、本菌陽性・陰性農場の識別を行った上で、構成菌叢を農場別に比較し、Bacteroides属菌の構成比率とカンピロバクター保菌との間に関連性があることを前年度に引き続き検証し、これを確認した。その上で、カンピロバクター陰性検体よりBacteroides属菌の単離を行い、得られた株がカンピロバクターの生存増殖を抑制する作用を示すことを共培養試験を通じて明らかにした。Bacteroides分離株由来抽出物についても同様の静菌作用を示したことを受け、来年度には農場での生体を用いた実証試験を行い、その有効性を評価したい。(2)食鳥処理段階では、外剥ぎ方式の処理を受けた鶏肉の汚染実態が一般的な中抜き方式で処理された鶏肉に比べて低いことを示した。また、九州地方の生食用鶏肉の処理工程を視察し、ブロイラー鶏ではなく、廃鶏が主な対象であること、表面焼烙が実施されている実態を把握した。ニュージーランドの食鳥処理施設を視察すると共に、当該国の規制当局担当者らと意見情報交換を行い、当該国でのカンピロバクター食中毒低減に効果的であった工程・手法として、殺菌剤の断続的シャワーリングおよびチラー槽内の複合的管理体制の充実であることを把握した。(3)加工・流通段階では、鶏肉表面へのカンピロバクター添加試験を通じ、当該菌が鶏肉内部へ浸潤性を示すことを定量的に評価した。また、表面加熱手法の一つである温浴加熱によって全体での汚染菌数は低減するものの、本菌は内部浸潤を示すため、一定数生残することを明らかにした。(4)流通・消費段階では、南九州地方の郷土料理として根付く、鶏刺しが生食用として市販流通している実態を鑑み、同食品におけるカンピロバクター汚染状況を加熱用鶏肉と定量比較し、前者の汚染菌数は相対的に低い実態を把握した。また、一部の生食用鶏肉検体では高度の汚染も見受けられたが、これらは一部の施設に限定的であることを製造者のトレースにより明らかにした。
結論
食鳥肉におけるカンピロバクター汚染に対するリスク管理策として、生産段階では腸内菌叢制御による効果が期待された。また、食鳥処理段階及び流通・消費では、と鳥表面の焼烙の有効性が期待される成績を得た。来年度は、添加物指定を受けた殺菌剤を用いた汚染低減効果に係る知見ならびにこれらによる品質影響等を評価する予定である。
公開日・更新日
公開日
2017-11-28
更新日
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