文献情報
文献番号
201621008A
報告書区分
総括
研究課題名
メンタルヘルス問題を予防する教育・普及プログラムの開発および評価
課題番号
H28-労働一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
竹中 晃二(早稲田大学 人間科学学術院)
研究分担者(所属機関)
- 島津 明人(東京大学大学院医学系研究科(平成29年4月より北里大学一般教育部))
- 山田冨美雄(関西福祉科学大学健康福祉学部)
- 嶋田 洋徳(早稲田大学人間科学学術院)
- 上地 広昭(山口大学教育学部)
- 島崎 崇史(早稲田大学人間科学学術院(平成29年4月より上智大学文学部))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,100,000円
研究者交替、所属機関変更
2017年4月より研究者の所属変更
島津明人:北里大学一般教育部
島崎崇史:上智大学文学部
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は,人々がストレス対処法を身につける(ストレスマネジメント)だけでなく、「よいメンタルヘルス状態を保つ」ために必要な行動の実践(メンタルヘルス・プロモーション)を促し,メンタルヘルス問題の予防に貢献できる教育・普及プログラムを開発し,評価システムを作成することである。
研究方法
1. ストレスマネジメント教育の研究
ストレスマネジメントの有効性の担保とさらなる普及を目指すためには,ストレスマネジメントによって習得したスキルの日常生活への定着,対象者のさまざまな個人差変数の対応,実践を提供する実施者の養成,ストレスマネジメントの有効性についてのより適切な評価など,いくつかの課題も残されている。2016年度の研究では,集団を対象としたストレスマネジメントの実践について展望するとともに,ストレスマネジメントの発展に向けた対応の観点について4研究をおこなった。
2. メンタルヘルス・プロモーションの研究
メンタルヘルス・プロモーションでは,肯定的なメンタルヘルス,すなわち楽しみ,生活の質感,満足感を強化することを目的として,メンタルヘルスに影響を与える行動変容をいかに行わせるかが課題となる。本研究では,これらのエビデンスに加え,eラーニングや冊子を用いた介入プログラムを開発する。メンタルヘルス・プロモーション活動の材料づくりとしては,(1)ポジティブ・メンタルヘルスを導く推奨行動の選定,(2)配信チャンネルの決定,(3)ツールの精査・開発,および(4)情報提供コンテンツを決定し,プロトタイプのプログラムを開発し,実施後,内省報告から評価・修正をおこなう。本年度には4研究を実施した。
ストレスマネジメントの有効性の担保とさらなる普及を目指すためには,ストレスマネジメントによって習得したスキルの日常生活への定着,対象者のさまざまな個人差変数の対応,実践を提供する実施者の養成,ストレスマネジメントの有効性についてのより適切な評価など,いくつかの課題も残されている。2016年度の研究では,集団を対象としたストレスマネジメントの実践について展望するとともに,ストレスマネジメントの発展に向けた対応の観点について4研究をおこなった。
2. メンタルヘルス・プロモーションの研究
メンタルヘルス・プロモーションでは,肯定的なメンタルヘルス,すなわち楽しみ,生活の質感,満足感を強化することを目的として,メンタルヘルスに影響を与える行動変容をいかに行わせるかが課題となる。本研究では,これらのエビデンスに加え,eラーニングや冊子を用いた介入プログラムを開発する。メンタルヘルス・プロモーション活動の材料づくりとしては,(1)ポジティブ・メンタルヘルスを導く推奨行動の選定,(2)配信チャンネルの決定,(3)ツールの精査・開発,および(4)情報提供コンテンツを決定し,プロトタイプのプログラムを開発し,実施後,内省報告から評価・修正をおこなう。本年度には4研究を実施した。
結果と考察
1. ストレスマネジメント教育の研究
まず,本研究の対象としたマインドフルネスを用いた8本の論文のレビューを行い,つぎに大学新入生を対象としたストレスマネジメントスキル向上を意図した授業実践の課題を示した。成人に対するストレスマネジメントの課題と可能性の研究では,職業の専門性に基づき,それぞれのストレスについて分析を行った。その結果,職種では,他職種と比較して,介護福祉士が身体的な負担を高いと回答しているものの,仕事そのものの量的・質的な負担は低く,技能を活用している認識が高いことが示された。ICTを用いた個別化ストレスマネジメントに関する研究では,睡眠改善行動やストレスコーピングの機能を俯瞰的に理解させるために,常に持ち歩けるスマートフォンアプリケーションを提供した。ポジティブ心理学の立場に立った職場のメンタルヘルス教育プログラムの研究では,2ヶ月にわたるBlessing課題の遂行は,ストレッサーを低下させ,併せて主観的幸福感を増す効果を示したが,統制群ではストレッサーとは無関係に幸福感は微増した。
2. メンタルヘルス・プロモーション・プログラムの開発
中学生における劇的日常体験とウェルビーイングの関係では,劇的日常体験の頻度には性および学年差が認められ,女子は男子よりも出会い・成功体験が多く見られた。就労者を対象としたメンタルヘルス・プロモーションの試験的介入では,メンタルヘルス・プロモーションに関する知識提供による肯定的な影響について検討をおこなった。メンタルヘルス・プロモーションを目的としたeラーニング・プログラムの開発し,評価を行った結果,メンタルヘルスに対する考え方に変化が見られた。最後に,予防教育プログラムの評価では,職域における個人向けメンタルヘルス・プロモーションに関して,文献レビューをもとに,予防教育プログラムの効果評価に適切と考えられる指標を検討した。その結果,レビューされた研究の多くが観察研究であり,介入研究は数が限定されていた。
まず,本研究の対象としたマインドフルネスを用いた8本の論文のレビューを行い,つぎに大学新入生を対象としたストレスマネジメントスキル向上を意図した授業実践の課題を示した。成人に対するストレスマネジメントの課題と可能性の研究では,職業の専門性に基づき,それぞれのストレスについて分析を行った。その結果,職種では,他職種と比較して,介護福祉士が身体的な負担を高いと回答しているものの,仕事そのものの量的・質的な負担は低く,技能を活用している認識が高いことが示された。ICTを用いた個別化ストレスマネジメントに関する研究では,睡眠改善行動やストレスコーピングの機能を俯瞰的に理解させるために,常に持ち歩けるスマートフォンアプリケーションを提供した。ポジティブ心理学の立場に立った職場のメンタルヘルス教育プログラムの研究では,2ヶ月にわたるBlessing課題の遂行は,ストレッサーを低下させ,併せて主観的幸福感を増す効果を示したが,統制群ではストレッサーとは無関係に幸福感は微増した。
2. メンタルヘルス・プロモーション・プログラムの開発
中学生における劇的日常体験とウェルビーイングの関係では,劇的日常体験の頻度には性および学年差が認められ,女子は男子よりも出会い・成功体験が多く見られた。就労者を対象としたメンタルヘルス・プロモーションの試験的介入では,メンタルヘルス・プロモーションに関する知識提供による肯定的な影響について検討をおこなった。メンタルヘルス・プロモーションを目的としたeラーニング・プログラムの開発し,評価を行った結果,メンタルヘルスに対する考え方に変化が見られた。最後に,予防教育プログラムの評価では,職域における個人向けメンタルヘルス・プロモーションに関して,文献レビューをもとに,予防教育プログラムの効果評価に適切と考えられる指標を検討した。その結果,レビューされた研究の多くが観察研究であり,介入研究は数が限定されていた。
結論
ストレスマネジメントに関する研究においては,マインドフルネスに関するレビュー研究から評価内容の提言につづき,教育プログラムの内容が示され,成人を対象とするストレス内容の評価研究をおこない,それぞれに適合した対処法の提示が求められることがわかった。一方,メンタルヘルス・プロモーションに関する研究においては,よいメンタルヘルスを積極的に作り出す方法や行動推奨をおこなうプログラム開発の可能性が示された。つぎに,メンタルヘルスをよい状態に保つために奨励される行動は,単に知識の提供だけでは効果が薄いことがわかり,eラーニングの適用も含めて,体験型の介入が必要なことがわかった。最後に,予防教育における評価内容についてのレビュー研究から,何を予防とみなすのかが確認できた。
以上,2研究テーマ,9研究をもとにして次年度では,対象者の人数を増加させ,また対象者の特徴に適合したプログラムの実践をおこなうつもりである。
以上,2研究テーマ,9研究をもとにして次年度では,対象者の人数を増加させ,また対象者の特徴に適合したプログラムの実践をおこなうつもりである。
公開日・更新日
公開日
2017-05-30
更新日
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