文献情報
文献番号
201620025A
報告書区分
総括
研究課題名
有効性と安全性を維持した在宅呼吸管理の対面診療間隔決定と機器使用のアドヒランスの向上を目指した遠隔モニタリングモデル構築を目指す検討
研究課題名(英字)
-
課題番号
H28-医療-一般-016
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
陳 和夫(京都大学 大学院医学研究科呼吸管理睡眠制御学講座)
研究分担者(所属機関)
- 巽 浩一郎(千葉大学大学院医学研究院呼吸器内科学)
- 平井 豊博(京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学)
- 半田 知宏(京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学)
- 森田 智視(京都大学大学院医学研究科医学統計生物情報学)
- 大平 徹郎(国立病院機構西新潟中央病院呼吸器センター内科)
- 坪井 知正(国立病院機構南京都病院呼吸器科)
- 近藤 康博(公立陶生病院呼吸器・アレルギー疾患内科)
- 富井 啓介(神戸市立医療センター中央市民病院呼吸器内科)
- 葛西 隆敏(順天堂大学大学院医学研究科循環器内科・心血管睡眠呼吸医学講座)
- 桂 秀樹(東京女子医科大学八千代医療センター呼吸器内科)
- 千葉伸太郎(東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学教室(太田総合病院附属研究所太田睡眠科学センター))
- 酒巻 哲夫(群馬大学・高崎市医師会看護専門学校)
- 黒田 知宏(京都大学大学院医学研究科医療情報学・京都大学医学部附属病院医療情報企画部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
7,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
情報通信機器の開発・普及に伴い機器のパラメーターをモニタリングして患者のアドヒアランスを向上させる試みが諸外国で行われているが、その成果は一定でなく、本邦の資料は乏しい。厚生労働省は平成27年に「患者側の要請、患者側の利点を勘案した上で、直接の対面診療と適切に組み合わせて行われるときは、遠隔診療によっても差し支えない」としている。病状が安定している慢性期患者に対し、病状急変時等の連絡・対応体制を確保した上、遠隔モニタリングを行いつつ患者管理を行うことは患者側の利点が大きいことが明らかになり、社会要請にもなってきた。
このような背景の元、本研究班では本邦のCPAP、HOTの現状を患者数、使用世代を含めて把握する。すでに受診間隔が緩和されているHOT、CPAP診療における現状の診療間隔も把握して、現状の診療間隔を決定している要因を探索する。さらに、遠隔医療を行うに当たっての適切な受診間隔をランダム化比較試験(RCT)の実証研究において決定する。また、遠隔医療実施に於ける情報処理の現状と問題点を明らかにして解決法を探索する。国内外の文献も検索して、CPAP、HOTの遠隔医療実施における医療機関の手引きの作成も考慮する。
このような背景の元、本研究班では本邦のCPAP、HOTの現状を患者数、使用世代を含めて把握する。すでに受診間隔が緩和されているHOT、CPAP診療における現状の診療間隔も把握して、現状の診療間隔を決定している要因を探索する。さらに、遠隔医療を行うに当たっての適切な受診間隔をランダム化比較試験(RCT)の実証研究において決定する。また、遠隔医療実施に於ける情報処理の現状と問題点を明らかにして解決法を探索する。国内外の文献も検索して、CPAP、HOTの遠隔医療実施における医療機関の手引きの作成も考慮する。
研究方法
厚生労働省 社会医療診療行為別統計(各年 6月度集計)から、本邦のCPAP、HOTの使用数、年齢層を把握した。本邦の実行可能な遠隔モニタリング方法を把握し患者情報の取り扱いの問題点についても調査、各企業に指導を行った。海外の遠隔呼吸管理について調査した。睡眠学会認定医療機関、呼吸器学会認定・関連施設にCPAP, HOTに関しての現状の受診間隔と受診間隔延長についてのアンケート調査を行った。現状で使用可能な遠隔医療を用いて、CPAPは1,3か月の受診、HOTに関しては1と2か月受診のRCT実証研究を実施中である。すなわち、CPAPについては遠隔無しの1か月と3か月及び遠隔有の3か月群の3群RCTによる非劣勢試験を進行中である。
結果と考察
CPAPに関しては約40万人、HOTに関しては16万人程度に保険適用下で在宅管理が行われているが、最も多い年齢層はCPAPでは40歳から59歳、HOTに関しては80歳以上であった。CPAPに関しては受診間隔を延長しつつ使用時間、使用日数を増やすなどのアドヒアランス向上を目指した遠隔医療、HOTに関しては患者容態の変化に対応する遠隔医療の必要性が感じられた。海外の状況では遠隔医療によりCPAPに関しては使用時間の延長など一定の効果が認められるものの、HOTに関しては遠隔医療の有効性は一定していなかった。日本呼吸器学会認定施設・関連施設885施設中361施設(40.8%)、日本睡眠学会認定医療機関100施設70施設(70%)からアンケートが回収できた。アンケートの回答があった施設において、約86,000名のCPAP、HOT 19,800名が管理されていた。CPAPに関しては69%、HOTに関しては約91%が毎月受診されていた。HOTに関してはCOPD 42,7%、間質性肺炎・肺線維症 25.8%、肺癌・肺腫瘍 8.3%、その他の臓器癌 0.9%、肺高血圧 4.4%、心不全 4.8%、睡眠時無呼吸 0.9%、その他 12.3%と疾患の多様性がみられた。間隔を開けての受診を最も困難にしているのが、未受診月に管理料の徴収が出来ないことであった。未来院月でもある程度の管理料徴収が可能であれば、隔月受診あるいは3か月受診が可能と考えている施設が75-80%あった。
実証研究に関しては京都大学の倫理委員会において最終承認され(2016年10月25日、C1208、C1215)、2016年12月1日から研究を開始した。他の共同研究施設においても倫理委員会での審査、承認を経て、順次研究が開始されつつある。2017年3月1日の時点で5施設で研究が開始されており、登録患者数はHOT実証研究が5名、CPAP実証研究が約270名である(平成29年3月14日現在)。
考察としてCPAP、HOT対象者の病態、年齢層に大きな違いがあり、一律の遠隔医療は困難であり、機器、対象者に合わせた遠隔医療が必要と考えられた。遠隔医療を行うに当たっての患者情報に関する倫理的問題の解決も重要と考えられた。実証研究の結果が重要であるが、遠隔医療を行うに当たって、未受診月にも適切な管理料を認める保険点数の設定により遠隔医療による隔月、3か月受診の可能性は特にCPAPに関しては十分にあると考えられた。
実証研究に関しては京都大学の倫理委員会において最終承認され(2016年10月25日、C1208、C1215)、2016年12月1日から研究を開始した。他の共同研究施設においても倫理委員会での審査、承認を経て、順次研究が開始されつつある。2017年3月1日の時点で5施設で研究が開始されており、登録患者数はHOT実証研究が5名、CPAP実証研究が約270名である(平成29年3月14日現在)。
考察としてCPAP、HOT対象者の病態、年齢層に大きな違いがあり、一律の遠隔医療は困難であり、機器、対象者に合わせた遠隔医療が必要と考えられた。遠隔医療を行うに当たっての患者情報に関する倫理的問題の解決も重要と考えられた。実証研究の結果が重要であるが、遠隔医療を行うに当たって、未受診月にも適切な管理料を認める保険点数の設定により遠隔医療による隔月、3か月受診の可能性は特にCPAPに関しては十分にあると考えられた。
結論
CPAPに関しては遠隔医療の導入と間隔を開けての受診の可能性は十分にあると考えられた。そのためには患者情報の管理、適切な医療管理料の設定、実証研究によるエビデンスの構築が重要と考えられた。
公開日・更新日
公開日
2018-05-29
更新日
-