男性同性間のHIV感染予防対策とその介入効果の評価に関する研究

文献情報

文献番号
201618003A
報告書区分
総括
研究課題名
男性同性間のHIV感染予防対策とその介入効果の評価に関する研究
課題番号
H26-エイズ-一般-005
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
市川 誠一(人間環境大学 大学院看護学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 健山 正男(国立大学法人琉球大学 大学院医学研究科)
  • 金子 典代(公立大学法人名古屋市立大学 看護学部)
  • 本間 隆之(公立大学法人山梨県立大学 看護学部 )
  • 塩野 徳史(公立大学法人名古屋市立大学 看護学部)
  • 佐野 貴子(嶋 貴子)(神奈川県衛生研究所 微生物部)
  • 今井 光信(田園調布学園大学)
  • 木村 哲(東京医療保健大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
13,980,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域活動団体(CBO)の商業施設を介した啓発活動や自治体等との連携を把握し、各地域のMSMの性行動、検査行動、地域間移動、CBO活動の認知を調査により把握する。新たな予防介入を開発するために、HIV陽性者の感染判明前のHIV検査受検契機等に関する調査、商業施設を利用し始めるMSMへの予防啓発モデルの開発と評価、増加傾向にある地方のMSMへの取組みを行う。HIV検査の活用を目的に、HIV検査・相談マップの運用と普及、保健所等のHIV検査の実態把握、HIV郵送検査の課題解決の研究を行う。
研究方法
1.CBOの予防啓発活動と商業施設および自治体との連携に関する研究(市川誠一):東北、東京、東海、近畿、中四国、九州、沖縄地域のCBOを対象に商業施設や自治体と連携した活動状況を調査した。
2.男性同性間性的接触によるHIV陽性者の予防啓発との接点および早期検査・受診に関する研究(健山正男):3地域のHIV陽性者(88名)から感染判明前の検査行動や啓発資材との接点等を把握した。
3.MSM及びゲイ・バイセクシュアル男性を対象とした地域間比較(金子典代、本間隆之):1)6地域のクラブイベントにてMSM対象のインターネット調査を実施(有効回答1111名)し、性行動等を分析した。2)東京のCBO・aktaの活動へのMSMの反応を調査した。
4.商業施設を利用しはじめる若年層MSMを対象とした予防啓発介入の開発と効果評価(塩野徳史):予防啓発モデル「ヤる!プロジェクト」を大阪地域での効果を評価し、6地域への展開を図った。
5.近年のエイズ発生動向に基づくMSM層(地方、若年層、滞日外国人)に関する研究(市川誠一): 外国国籍MSM対象の多言語調査、および地方のMSMへのHIV検査の取組み事例(岡山県)を評価した。
6.HIV検査・相談マップを用いたHIV検査相談施設の情報提供と利用状況の解析(佐野貴子):HIV検査相談施設を紹介するHIV検査・相談マップの活用状況を分析した。
7.保健所等におけるHIV検査相談の全国調査(今井光信):全国保健所等467施設、特設HIV検査相談17施設のHIV検査・相談等の実態を調査した。
8.HIV郵送検査の在り方とその有効活用に関する研究(木村哲):HIV郵送検査の実態を把握する調査、精度管理調査、HIV郵送検査の在り方を検討した。
なお5~8は2年度から実施した。研究倫理審査は研究者所属機関で承認を受けた。
結果と考察
1.7地域のCBOはゲイバーの60%、商業系ハッテン場の74%、若年層MSMが利用するクラブ系ゲイナイト等で啓発資材を配布した。そのネットワークを活用して自治体・保健所等と連携し検査普及を行った。
2.HIV陽性者は感染判明前に医療機関受診歴があり、HIV検査が適切に提供されるべき時期に検査機会を逸失していた。医療者へのHIV感染症の認識に関する啓発が必要である。
3.過去6か月の居住地以外への訪問経験は地方から大都市への傾向があり、移動先でのアナルセックス経験は34.3%、過去6か月の外国籍MSMとのアナルセックス経験は21%であった。新宿のMSMは「活動への共感、話しやすい雰囲気、2丁目に溶け込んだ活動」の項目で受検行動と関連した。
4.若年層MSM対象の「ヤる!プロジェクト」は、大阪では認知割合が有意に上昇し、29歳以下の認知群ではHIV検査行動、コンドーム使用が上昇した。他地域CBOとWeb啓発を開発し、3年度には6地域で展開した。
5.多言語インターネット調査は多国籍の外国人の参加を可能とし、外国籍MSMは国内でのHIV検査を希望していた。岡山県では、CBO・自治体・保健所、クリニックの協働によるMSM向けクリニック検査が継続され、HIV検査受検者調査ではCBOのMSMへの啓発普及効果が示された。
6.保健所等のHIV検査施設を掲載しているHIV検査・相談マップは広く国民に活用されており、常に情報を更新していく必要がある。
7.保健所と特設検査相談施設のHIV検査件数は97,767件、陽性件数359件(0.37%)、337件(93.9%)が陽性結果を受取り、270件(80.1%)が医療機関を受診していた。
8.HIV郵送検査は利用件数が増加している一方、検査精度管理、個人情報保護、陽性者の医療機関等への結びつけなどに課題がある。「HIV郵送検査の在り方について」まとめた。
結論
CBOは商業施設や自治体と連携した啓発を継続した。「ヤる!プロジェクト」は若年層MSMの受検行動、予防行動を促進した。MSMの地域間移動に伴う性行動が明らかとなり、地域間連携の取組みが必要である。MSMの早期検査には保健所等のHIV検査の活用に加え、医療機関でのHIV検査実施の促進が必要である。HIV郵送検査の在り方について提示した。

公開日・更新日

公開日
2017-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201618003B
報告書区分
総合
研究課題名
男性同性間のHIV感染予防対策とその介入効果の評価に関する研究
課題番号
H26-エイズ-一般-005
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
市川 誠一(人間環境大学 大学院看護学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 健山 正男(国立大学法人琉球大学 大学院医学研究科)
  • 金子 典代(公立大学法人名古屋市立大学 看護学部)
  • 本間 隆之(公立大学法人山梨県立大学 看護学部)
  • 鬼塚 哲郎(京都産業大学 文化学部)
  • 塩野 徳史(公立大学法人名古屋市立大学 看護学部)
  • 佐野 貴子(嶋 貴子) (神奈川県衛生研究所 微生物部)
  • 今井 光信(田園調布学園大学)
  • 木村 哲(東京医療保健大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域活動団体(CBO)の商業施設を介した啓発や自治体等との連携を把握し、各地域のMSMの性行動、検査行動、地域間移動、CBO活動の認知を調査により把握する。新たな予防介入の開発を目的に、HIV陽性者の感染判明前のHIV検査受検契機等に関する調査、商業施設を利用し始めるMSMへの予防啓発モデルの開発と評価、増加がみられる地方のMSMへの取組みを行う。HIV検査の活用を目的に、HIV検査・相談マップの運用と普及、保健所等のHIV検査の実態把握、HIV郵送検査の課題解決の研究を行う。
研究方法
1.CBOの予防啓発活動と商業施設および自治体との連携に関する研究(市川誠一):東北、東京、東海、近畿、中四国、九州、沖縄地域のCBOを対象に商業施設や自治体と連携した活動状況を調査した。
2.男性同性間性的接触によるHIV陽性者の予防啓発との接点および早期検査・受診に関する研究(健山正男):3地域のHIV陽性者(88名)から感染判明前の検査行動や啓発資材との接点等を把握した。
3.MSM及びゲイ・バイセクシュアル男性を対象とした地域間比較(金子典代、本間隆之):CBOの協力のもとクラブイベント等にてインターネット調査を実施し、地域間移動、性行動等を分析した。東京のCBO・aktaの活動へのMSMの反応を調査した。
4.商業施設を利用しはじめる若年層MSMを対象とした予防啓発介入の開発と効果評価(鬼塚哲郎、塩野徳史):予防啓発モデル「ヤる!プロジェクト」を大阪地域で開発し効果を評価し、他地域への展開を図った。
5.近年のエイズ発生動向に基づくMSM層(地方、若年層、滞日外国人)に関する研究(市川誠一): 外国国籍MSM対象の多言語調査の開発、地方のMSMへのHIV検査の取組み事例(岡山県)を評価した。
6.HIV検査・相談マップを用いたHIV検査相談施設の情報提供と利用状況の解析(佐野貴子):HIV検査相談施設を紹介するHIV検査・相談マップの活用状況を分析した。
7.保健所等におけるHIV検査相談の全国調査(今井光信):全国保健所および特設HIV検査相談施設のHIV検査・相談等の実態を調査した。
8.HIV郵送検査の在り方とその有効活用に関する研究(木村哲):HIV郵送検査の実態把握および精度管理の調査、HIV郵送検査の在り方を検討した。
なお5~8は2年度から実施した。研究倫理審査は研究者所属機関で承認を受けた。
結果と考察
1.7地域のCBOはゲイバーの60%、商業系ハッテン場の74%、クラブ系ゲイナイトなどを介して啓発資材を配布した。自治体・保健所と連携し検査情報資材の作成・配布、HIV検査担当者研修会への協力を行った。
2.HIV陽性者は、HIV検査が適切に提供されるべき時期に検査機会を逸失していた。HIV検査勧奨について、医療者への教育啓発が必要である。
3.MSMの国内移動、それに伴う性行動、外国国籍MSMとの性行動等が明らかになり、これらの状況を踏まえた啓発活動が必要である。若者層は予防行動や受検行動が低い傾向にあり、今後のHIV感染拡大を抑える上で啓発強化が必要である。新宿のMSMは「活動への共感、話しやすい雰囲気、2丁目に溶け込んだ活動」の項目で受検行動と関連した。
4.若年層MSM対象の「ヤる!プロジェクト」は、大阪では認知割合が有意に上昇し、29歳以下の認知群ではHIV検査行動、コンドーム使用が上昇した。他地域CBOと連携し3年度には6地域で展開した。
5.多言語インターネット調査により外国籍MSMの行動調査が可能となった。岡山県では、CBO・自治体・保健所、クリニックの協働によるMSM向けクリニック検査が導入され、HIV検査受検者調査によりCBOのMSMへの啓発普及の効果が示された。
6.保健所等のHIV検査施設を掲載しているHIV検査・相談マップは広く国民に活用されており、常に情報を更新していく必要がある。
7.保健所と特設検査相談施設のHIV検査は、陽性件数が年間のHIV感染者報告例の40%程度を占め、その94%に陽性結果が伝えられ、80~89%が医療機関を受診していた。
8.HIV郵送検査は利用件数が増加している一方、検査精度管理、個人情報保護、陽性者の医療機関等への結びつけなどに課題がある。「HIV郵送検査の在り方について」をまとめた。
結論
CBOは商業施設や自治体と連携しMSMへの啓発に取り組んでいる。「ヤる!プロジェクト」は若年層MSMの受検行動、予防行動を促進する効果が見られた。一方で、MSMの地域間移動とそれに伴う性行動や外国籍MSMの感染動向を踏まえた新たな取組みが必要である。MSMの早期検査には保健所等のHIV検査に加え医療機関でのHIV検査を促進する必要がある。HIV郵送検査の課題を整理しその在り方を提示した。

公開日・更新日

公開日
2017-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-12-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201618003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
地域活動団体(CBO)は商業施設や自治体と連携しMSMに有効な啓発を展開した。MSMの行動疫学調査は地域間移動とそれに伴う性行動を明らかにし今後のCBO活動の方向性を示した。若年層MSM対象の「ヤる!プロジェクト」は受検行動や予防行動に効果を示した。若年層への取組みはHIV感染を抑制する上で継続が必要である。
保健所等のHIV検査では陽性判明例の94%が結果を受取り、その80%以上が医療機関を受診していた。
HIV郵送検査の課題を整理し「HIV郵送検査の在り方について」を作成した。
臨床的観点からの成果
HIV陽性者は、感染が判明する前にHIV関連症状またはSTIを理由として医療機関を受診しており、HIV検査が適切に提供されるべき時期に早期発見の機会を逸失していた。特に急性HIV感染症については、感染拡大の要因となる観点からも、医療者への検査勧奨に関する啓発が必要である。
ガイドライン等の開発
「HIV郵送検査の在り方について」を作成。
1)HIV郵送検査希望者に検査前に検査及びHIV感染症に関する十分な情報を提供すること、2)陽性であった場合の医療機関・保健所・特設検査相談所・相談窓口への案内と受診確認法を充実させること、3)HIV検査に関する個人情報の保護を徹底すること、4)定期的に適切な検査の精度管理を実施すること、5)血液採取過程、検体郵送過程、検査過程の安全性を確保すること、6)HIV郵送検査キット(セット)の製造および販売、測定に係る法などを遵守すること
その他行政的観点からの成果
平成26年度大阪府エイズ対策審議会(平成27年2月9日、資料3平成26年度大阪府におけるエイズ対策の実績及び評価について、別紙1HIV検査を受ける人を対象としたアンケート結果)、平成27年度大阪府エイズ対策審議会(平成28年2月10日、資料3平成26年度大阪府におけるエイズ対策の実績及び評価について、別紙1HIV検査を受ける人を対象としたアンケート結果)。
その他のインパクト
国立保健医療科学院エイズ対策研修「MSMコミュニティへのアウトリーチの実際」(平成26年~令和2年)

発表件数

原著論文(和文)
4件
2018年1件,2019年1件追加
原著論文(英文等)
2件
2020年1件追加
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
45件
2017年13件追加
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
岡山県もんげー性病検査、大阪府エイズ対策
その他成果(普及・啓発活動)
6件
「ヤる!プロジェクト」大阪3年間、沖縄、中四国、名古屋、仙台、東京でMSM向けに資材配布、Webサイト

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
金子典代, 塩野徳史, 内海眞, 他
成人男性のHIV検査受検、知識、HIV関連情報入手状況、HIV陽性者の身近さの実態- 2009年調査と2012年調査の比較-
日本エイズ学会誌 , 19 (1) , 16-23  (2017)
原著論文2
Nigel Sherriff1, Jane Koerner, Noriyo Kaneko, et al.
Everywhere in Japan: an international approach to working with commercial gay businesses in HIV prevention
Health Promotion International  (2015)
doi:10.1093 /heapro/dav096: November 11
原著論文3
市川誠一
日本のMSMにおけるHIV/AIDSの現状-社会疫学の視点から
日本エイズ学会誌 , 19 (2) , 71-80  (2017)
原著論文4
塩野徳史、市川誠一、金子典代、佐々木由理
都市部保健所におけるHIV抗体検査受検者の特性
厚生の指標 , 65 (5) , 35-42  (2018)
原著論文5
金子典代、塩野徳史、本間隆之、岩橋恒太、健山正男、市川誠一
地方都市在住のMSM(Men who have sex with men)における調査時点までと過去1年のHIV検査経験と関連要因
日本エイズ学会 , 21 (1) , 34-44  (2019)
原著論文6
Noriyo Kaneko , Satoshi Shiono , Adam O. Hill , et al
Correlates of lifetime and past one-year HIVtesting experience among men who have sex with men in Japan
AIDS Care , 1-8  (2020)
https://doi.org/10.1080/09540121.2020.1837339

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
2022-06-10

収支報告書

文献番号
201618003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,556,000円
(2)補助金確定額
16,556,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,088,604円
人件費・謝金 1,210,450円
旅費 2,593,691円
その他 9,093,286円
間接経費 2,576,000円
合計 16,562,031円

備考

備考
直接研究費で、自己資金6026円、利息5円、計6031円。

公開日・更新日

公開日
2017-06-12
更新日
-