文献情報
文献番号
201617016A
報告書区分
総括
研究課題名
ワクチンの有効性・安全性評価とVPD(vaccine preventable diseases)対策への適用に関する分析疫学研究
課題番号
H26-新興行政-指定-003
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
廣田 良夫(医療法人相生会 臨床疫学研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 福島若葉(大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学)
- 大藤さとこ(大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学)
- 鈴木幹三(名古屋市立大学看護学部)
- 原めぐみ(佐賀大学医学部社会医学講座予防医学分野)
- 岡田賢司(福岡歯科大学総合医学講座)
- 星 淑玲(筑波大学医学医療系)
- 井手三郎(聖マリア学院大学)
- 森 満(札幌医科大学医学部公衆衛生学講座)
- 森川佐依子(大阪府立公衆衛生研究所)
- 中野貴司(川崎医科大学小児科学)
- 砂川富正(国立感染症研究所感染症疫学センター)
- 出口昌昭(市立岸和田市民病院)
- 小笹晃太郎(公益財団法人放射線影響研究所 広島疫学部)
- 浦江明憲((株)メディサイエンスプラニング)
- 吉田英樹(大阪市保健所 兼西成区役所)
- 入江 伸(医療法人相生会)
- 都留智巳(医療法人相生会ピーエスクリニック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
25,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
【厚労省意向による研究】
1. インフルワクの有効性モニタリング゙を確立し、有効性を要約提示。
2. 妊婦におけるインフル健康影響を調査し、定期接種化要否の判断根拠を提示。
【プロジェクト研究】
3. インフルワクの有効性、免疫原性をリスク集団別に提示。
4. DPTワク(百日咳)、および肺炎球菌ワク・インフルワク(高齢者肺炎)の有効性を提示。
5. 新規ワクチンの有効性や免疫原性などを提示。
6. 医療経済の立場から、費用効果的選択肢(助成額など)を提示。
7. 微生物学的基盤に立ち、病原体特性を考慮した堅固な結果を得る。
1. インフルワクの有効性モニタリング゙を確立し、有効性を要約提示。
2. 妊婦におけるインフル健康影響を調査し、定期接種化要否の判断根拠を提示。
【プロジェクト研究】
3. インフルワクの有効性、免疫原性をリスク集団別に提示。
4. DPTワク(百日咳)、および肺炎球菌ワク・インフルワク(高齢者肺炎)の有効性を提示。
5. 新規ワクチンの有効性や免疫原性などを提示。
6. 医療経済の立場から、費用効果的選択肢(助成額など)を提示。
7. 微生物学的基盤に立ち、病原体特性を考慮した堅固な結果を得る。
研究方法
疫学、小児科、臨床薬理学、微生物学等の専門家が「結果と考察」に示す9分科会で共同研究を実施。
結果と考察
主要な結果
1 定点モニタリング分科会
① 6歳未満児では、PCR陽性インフルに対するワクチン接種の調整ORは、1回接種で0.67(0.36-1.24)、2回接種で0.40(0.26-0.60)。有効率はそれぞれ33%と60%(2015/16シーズン)。
② 6歳未満児では、迅速診断陽性インフルに対するワクチン接種(1回以上)の調整ORは0.72(0.59-0.88)。型別にみると、A型に対し0.60(0.46-0.78)、B型に対し0.78(0.61-0.98)。
2. 妊婦健康影響調査分科会
① 妊婦では、インフル診断に対するワクチン接種の調整ORは0.77(0.60-0.98)。
② 出生児のインフル診断に対し、「母親のワクチン接種」の調整ORは、妊娠中の接種で0.39(0.19-0.84)、出産後の接種で0.47(0.17-1.28)。
3. インフルエンザ分科会
① リウマチ性疾患患者では、ワクチン接種後の抗体保有率(sP)はH1:84%、H3:73%、B(山形):73%、B(ビクトリア):69%。
② 炎症性腸疾患患者では、ワクチン接種後のsPはH1:67%、H3:74%、B(山形):81%、B(ビクトリア):83%。
③ ネフローゼ患者では、RTX投与の1ヵ月前にワクチンを接種することにより、免疫原性が向上することが示唆された。
④ 2シーズン連続して接種を受けた健康成人では、1シーズン目に接種後抗体価1:40以上を示した者は、1:40未満の者に比べて、2シーズン目の接種後のsPが高かった(H1:92% vs. 28%、H3:94% vs. 73%、B(山形):45% vs. 0%、B(ビクトリア):53% vs. 10%)
⑤ 小学生では、迅速診断陽性インフルに対するワクチン接種の調整ORは、A型に対して0.67(0.45-0.99)、B型に対して0.69(0.46-1.02)。
4. 百日咳分科会
妊婦の28%が「妊娠中に百日咳含有ワクチンが接種可能なら接種する」と回答した。
5. 高齢者肺炎分科会
2014年10月、高齢者に対する肺炎球菌ワクチン接種が定期接種化されたことを受けて、肺炎球菌ワクチンの有効性を検討するため、新規に症例対照研究に着手。
6. 新規ワクチン検討分科会
① 市販B型肝炎ワクチン2種(ビームゲン、ヘプタバックスⅡ)は、いずれの組み合わせにおいても3回接種後には全例が抗体陽性となった。
② 国産A型肝炎ワクチン(エイムゲン)を2回接種後、海外製剤(HAVRIX®)を3回目接種した場合でも、全例が抗体陽性となった。
③ 「ポリオワクチンの互換性試験」においてSabin株ワクチンのみの接種を受けた2人で、3年後にWild株Ⅰ型に対する中和抗体(NA)価が防御レベル(1::8)未満に低下した。
7. 費用対効果分科会
帯状疱疹ワク接種による1QALY獲得あたりの増分費用は、280万円(65~84歳)から360万円(80~84歳)であり、費用対効果に優れることから、定期予防接種に含める価値がある。
8. 微生物検索・病原診断分科会
大阪府のインフル流行を比較(2014/15 vs. 2015/16 シーズン)すると、流行規模・時期・期間、および主流行株は全く異なり、インフルの疫学研究が画一的にできないことを示した。
9. 広報啓発分科会
米国ACIPの勧告(MMWR 2016; 65 (5))を翻訳出版(「インフルエンザの予防と対策、2016年度版」、一般財団法人・日本公衆衛生協会)。
1 定点モニタリング分科会
① 6歳未満児では、PCR陽性インフルに対するワクチン接種の調整ORは、1回接種で0.67(0.36-1.24)、2回接種で0.40(0.26-0.60)。有効率はそれぞれ33%と60%(2015/16シーズン)。
② 6歳未満児では、迅速診断陽性インフルに対するワクチン接種(1回以上)の調整ORは0.72(0.59-0.88)。型別にみると、A型に対し0.60(0.46-0.78)、B型に対し0.78(0.61-0.98)。
2. 妊婦健康影響調査分科会
① 妊婦では、インフル診断に対するワクチン接種の調整ORは0.77(0.60-0.98)。
② 出生児のインフル診断に対し、「母親のワクチン接種」の調整ORは、妊娠中の接種で0.39(0.19-0.84)、出産後の接種で0.47(0.17-1.28)。
3. インフルエンザ分科会
① リウマチ性疾患患者では、ワクチン接種後の抗体保有率(sP)はH1:84%、H3:73%、B(山形):73%、B(ビクトリア):69%。
② 炎症性腸疾患患者では、ワクチン接種後のsPはH1:67%、H3:74%、B(山形):81%、B(ビクトリア):83%。
③ ネフローゼ患者では、RTX投与の1ヵ月前にワクチンを接種することにより、免疫原性が向上することが示唆された。
④ 2シーズン連続して接種を受けた健康成人では、1シーズン目に接種後抗体価1:40以上を示した者は、1:40未満の者に比べて、2シーズン目の接種後のsPが高かった(H1:92% vs. 28%、H3:94% vs. 73%、B(山形):45% vs. 0%、B(ビクトリア):53% vs. 10%)
⑤ 小学生では、迅速診断陽性インフルに対するワクチン接種の調整ORは、A型に対して0.67(0.45-0.99)、B型に対して0.69(0.46-1.02)。
4. 百日咳分科会
妊婦の28%が「妊娠中に百日咳含有ワクチンが接種可能なら接種する」と回答した。
5. 高齢者肺炎分科会
2014年10月、高齢者に対する肺炎球菌ワクチン接種が定期接種化されたことを受けて、肺炎球菌ワクチンの有効性を検討するため、新規に症例対照研究に着手。
6. 新規ワクチン検討分科会
① 市販B型肝炎ワクチン2種(ビームゲン、ヘプタバックスⅡ)は、いずれの組み合わせにおいても3回接種後には全例が抗体陽性となった。
② 国産A型肝炎ワクチン(エイムゲン)を2回接種後、海外製剤(HAVRIX®)を3回目接種した場合でも、全例が抗体陽性となった。
③ 「ポリオワクチンの互換性試験」においてSabin株ワクチンのみの接種を受けた2人で、3年後にWild株Ⅰ型に対する中和抗体(NA)価が防御レベル(1::8)未満に低下した。
7. 費用対効果分科会
帯状疱疹ワク接種による1QALY獲得あたりの増分費用は、280万円(65~84歳)から360万円(80~84歳)であり、費用対効果に優れることから、定期予防接種に含める価値がある。
8. 微生物検索・病原診断分科会
大阪府のインフル流行を比較(2014/15 vs. 2015/16 シーズン)すると、流行規模・時期・期間、および主流行株は全く異なり、インフルの疫学研究が画一的にできないことを示した。
9. 広報啓発分科会
米国ACIPの勧告(MMWR 2016; 65 (5))を翻訳出版(「インフルエンザの予防と対策、2016年度版」、一般財団法人・日本公衆衛生協会)。
結論
主要な結論。
1. インフルワクの有効率(<6歳)は、迅速診断陽性例に対し28%。
2. 妊婦へのインフルワク接種は、妊婦本人に対しても出生時に対しても予防効果がある。
3. 炎症性腸疾患患者におけるインフルワクの免疫原性は良好、各株に対するsPは67~83%。
4. 市販B型肝炎ワクチン2種の互換性は良好。
5. 帯状疱疹ワクチン接種は費用対効果に優れ、定期接種化の価値がある。
1. インフルワクの有効率(<6歳)は、迅速診断陽性例に対し28%。
2. 妊婦へのインフルワク接種は、妊婦本人に対しても出生時に対しても予防効果がある。
3. 炎症性腸疾患患者におけるインフルワクの免疫原性は良好、各株に対するsPは67~83%。
4. 市販B型肝炎ワクチン2種の互換性は良好。
5. 帯状疱疹ワクチン接種は費用対効果に優れ、定期接種化の価値がある。
公開日・更新日
公開日
2017-05-26
更新日
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