顕在化しにくい発達障害の特性を早期に抽出するアセスメントツールの開発および普及に関する研究

文献情報

文献番号
201616001A
報告書区分
総括
研究課題名
顕在化しにくい発達障害の特性を早期に抽出するアセスメントツールの開発および普及に関する研究
課題番号
H28-感覚-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
稲垣 真澄(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 金生由紀子(東京大学医学部附属病院 こころの発達診療部)
  • 原 由紀(北里大学医療衛生学部 リハビリテーション学科)
  • 中井昭夫(兵庫県立リハビリテーション中央病院 子どもの睡眠と発達医療センター)
  • 原 惠子(宇野 惠子)(上智大学大学院 外国語学研究科)
  • 北 洋輔( 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,845,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は「顕在化しにくい発達障害」の特性を明らかにすること、スクリーニングするアセスメント手法を確立すること、そして現場での導入を考えて統合された評価シートを作成し、その妥当性、信頼性を検討することを目的とした。とくにチック症、吃音症、不器用症、読み書き障害の発達障害に焦点を絞り、それらの発症から進展、経過を観察しうる中核的な質問項目ならびに自閉症スペクトラム(ASD)や注意欠如・多動性障害(ADHD)の併存も確認できる評価項目となるようなものを確定することを目指した。
研究方法
初年度はチック、吃音症、不器用、読み書き障害の質問票を各研究者が作成し、一般幼稚園・保育園に通う就学前幼児について、保護者、幼稚園教諭・保育士等が評価を行い、質問項目の精査と抽出を行い信頼性、妥当性の検討を行った。
結果と考察
研究分担者金生由紀子はチック症の、原 由紀は吃音の、中井昭夫は不器用の、そして原 惠子と北 洋輔は読み書き障害について、それぞれの調査フィールドで調査を行った。
金生は2592名中776名から回答を得て何らかのチックが20.4%に確実にみられることを見いだし、この頻度はICD-10の記述と合致していた。チックがある場合、毎日である場合が31%、チックが1年間以上持続している場合が71.9%と高率であった。チック陽性の場合、精神行動上の問題や支援のニーズが有意に高かった。これらから、この時期におけるチックの重要性が確認された。
原 由紀は1)吃音と診断された児の診療録と問診票からの後方視的データ収集により、養育者が吃音を心配した症状に関する情報を収集した。2)保育関係者に吃音と思われる症状に関する調査、吃音に関する知識を問う調査を実施した。3)吃音を疑われる保育園に在籍する園児に対する保育士の評価を収集し、言語聴覚士の評価との一致を検討した。
中井は国際的アセスメントツールであるLittle Developmental Coordination Disorder Questionnaire (Little DCDQ)、Developmental Coordination Disorder Questionnaire (DCDQ)を用いて、就学前の児童において、早期の気づきと支援のための項目を抽出した。その結果、両者とも記入がなされていた201名について、Little DCDQ日本語版とDCDQ日本語版の相関について検討したところ、合計点、3つの下位尺度とも有意な相関を認めた。
原 惠子は読み書き障害に関する20項目のチェックリスト試案を健常児738名と読み障害児71名に実施し、両群を識別しうると思われる4項目を選定した。4項目2項目以上でマークされリスクありと判断された児は738名中51人(6.9%)存在した。
北は延べ789名の就学前児に対して保育士などへ面接法で評価を行った。評価項目は、音韻認識や視覚認知などの読み書きに関わる20項目を設定した。その結果、評価項目について安定的な因子構造、識別力、等質性および再検査信頼性を認めた。5項目による健常群と読み書き障害リスク群との弁別は、感度・特異度ともに85%以上を示した。これらより、選定した5項目は読み書き障害の早期発見に向けて有用であると考えられた。
結論
各研究者により抽出された質問項目から構成される統合版質問紙を用いて各研究分担者の調査フィールドで活用を図り次年度も調査を継続し、全国普及を目指すための利用上の課題をあげていき、それらの解決を図っていきたいと考える。

公開日・更新日

公開日
2017-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201616001Z