要介護高齢者の生活機能向上に資する効果的な生活期リハビリテーション/リハビリテーションマネジメントのあり方に関する総合的研究

文献情報

文献番号
201614001A
報告書区分
総括
研究課題名
要介護高齢者の生活機能向上に資する効果的な生活期リハビリテーション/リハビリテーションマネジメントのあり方に関する総合的研究
課題番号
H27-長寿-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
川越 雅弘(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 水間 正澄(医療法人社団輝生会 教育研修局)
  • 辻  一郎(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 村尾 浩(神戸学院大学 総合リハビリテーション学部)
  • 石川 隆志(秋田大学 大学院医学系研究科)
  • 小林 法一(首都大学東京 健康福祉学部)
  • 能登 真一(新潟医療福祉大学 医療技術学部)
  • 植松 光俊(星城大学 リハビリテーション学部)
  • 備酒 伸彦(神戸学院大学 総合リハビリテーション学部)
  • 篠田 道子(日本福祉大学 社会福祉学部)
  • 山本 克也(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
  • 菊池 潤(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
水間正澄氏の所属が、昭和大学医学部から医療法人社団輝生会に変更となっている(平成28年4月から)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、1.生活機能向上に資する生活期リハビリテーション(以下、リハ)の方法論、2.多職種協働に基づく生活期リハマネジメント手法、3.教育現場での具体的な研修方法(テキスト作成を含む)の開発を通じて、生活期リハ/リハマネジメントの質の向上を図るとともに、平成30年の同時改定に向け、施策の検討に必要な基礎データや知見を提供することを目的とする。
研究方法
本研究では、3つのテーマ(研究1:活動・参加レベル向上に資するリハ提供方法の確立、研究2:リハマネジメント手法の開発、研究3:教育・研修方法の開発)を設定し、これらテーマ毎に研究を進める。
研究1に関しては、リハ職が通常業務で使用する各種帳票(興味・関心チェックシート、訪問・通所リハ計画書、アセスメント票)、患者QOLアンケート票、認定・給付データ等の収集・分析を通じて、1)リハ提供の現状把握と課題抽出、2)活動・参加レベル向上への関連要因分析、3)活動・参加向上に資するリハ方法論の整理及びテキストの作成を行う。
研究2に関しては、リハ職の各種帳票の分析によるリハマネジメント実態調査、事例検討によるリハマネジメント思考プロセス調査、参与観察やグループインタビューによる多職種会議の質的検証を通じて、リハマネジメントの現状把握と課題抽出ならびにリハマネジメントの方法論の整理及びテキスト作成を行う。
研究3に関しては、研究1及び研究2で開発されたリハ提供方法/リハマネジメント方法に関するテキスト等を用いた、学生・社会人向け研修体系の検討及び試行を行う。
結果と考察
本年度調査から、
1) 通所リハと訪問リハのリハマネジメント上の差異では、通所リハ利用者より訪問リハ利用者は、ADL、IADL、介護負担に焦点をあて、個人の生活状況に合わせた目標設定や訓練が行われていることが示された。一方、通所リハ利用者は閉じこもり予防や社会参加支援を目的とした訓練が多く行われていることが示された。
2) 事例報告に見る生活期リハに関わる作業療法士の実践内容の特徴として、合格事例はケースマネジメントができていたが、不合格事例は専門職としての支援が報告書に根拠と具体性をもって表現されておらず、それに加えて対象者との合意形成や多職種連携,生活行為の引き継ぎというマネジメントが不十分であった。
3) 通所リハ利用者のうち在宅介護を中止した者では、①生活機能の低下した者、②認知症の者及び③退院・退所者が多くなっていた。一方で、在宅介護を継続している者では個別リハを受給している者が多くなっていた。また、通所リハ利用者で継続して在宅サービスを利用している者のうち1割弱の者が通所リハの利用を中止しているが、これらの高齢者の中では通所リハから通所介護への切り替えが多く観察された。
4) 多職種が参加する会議に必要なファシリテーションスキルは①傾聴、②確認、③言い換え(要約)、④議論を整理する、⑤トラッキング(方向転換)、⑥沈黙への対応、⑦安心できる場づくり、の7つであった。
5) 事例検討の結果から、リハを実践する現場では、リハ科専門医との連携を促進する仕組み作りが課題と考えられた。
6) 参加に焦点を当てた評価方法の開発と普及、そしてそれらを用いて参加を促す目的と介入手段を掲げ、エビデンスの高い研究を行う必要性が示唆された。
7) ニーズ・緊急性の高い領域(生活期リハ/リハマネジメント)における細分化した研修ステップを設け、当該技術水準を着実に向上させる人材育成のためのキャリアラダー企画の推進が喫緊の課題と考えられた。
8) 事例検討会の内容から、多職種連携と課題解決のためのマネジメント能力がリハ職の課題であると考えられた。
などがわかった。
 本年度実施した様々な調査から、1)リハ職はICIDH(国際障害分類)の思考過程に沿って、まずは心身機能面から介入するといった方法論を採りやすい、2)利用者の弱みを見る視点が強く、個人因子や環境因子の強みを生かせていない、3)他の職種との協働に慣れていない、4)目標を利用者と共有し、ゴール達成後、よりよいサービスや支援につなげていくという意識がまだまだ弱いと感じられた。
結論
ICF(国際生活機能分類)の考え方を定着させ、実践レベルで展開できるようにするためには、学校教育を変えるとともに、卒後研修(多職種協働教育を含む)を充実させる必要性がある。また、生活機能向上に資するリハ提供方法、リハマネジメント方法の確立を図るためには、既存帳票類(アセスメント票、計画書)を定期的に収集・分析し、生活課題ごとに効果的な方法論を確立し、それを標準化していく必要があると考えた。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201614001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,000,000円
(2)補助金確定額
16,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,637,742円
人件費・謝金 5,724,708円
旅費 2,707,134円
その他 3,931,735円
間接経費 0円
合計 16,001,319円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
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