文献情報
文献番号
201611004A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国の関節リウマチ診療標準化のための研究
課題番号
H26-免疫-指定-021
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
宮坂 信之(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科膠原病・リウマチ内科学)
研究分担者(所属機関)
- 山中 寿(東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター)
- 針谷 正祥(東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターリウマチ性疾患薬剤疫学研究部門)
- 小池 隆夫(北海道大学大学院医学系研究科内科学講座第二内科)
- 天野 宏一(埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科)
- 池田 啓(千葉大学医学部附属病院アレルギー・膠原病内科)
- 伊藤 宣(京都大学大学院医学研究科整形外科学講座)
- 遠藤 平仁(公益財団法人湯浅報恩会寿泉堂綜合病院)
- 大野 滋(横浜市立大学付属市民総合医療センター)
- 小笠原 倫大(順天堂大学膠原病内科)
- 金子 祐子(慶應義塾大学医学部リウマチ内科)
- 川上 純(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科展開医療科学講座)
- 川人 豊(京都府立医科大学大学院医学研究科免疫内科学)
- 岸本 暢将(聖路加国際大学聖路加国際病院アレルギー膠原病科)
- 小嶋 俊久(名古屋大学医学部附属病院整形外科)
- 小嶋 雅代(千田 雅代)(名古屋市立大学大学院医学研究科医学・医療教育学分野)
- 酒井 良子(東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターリウマチ性疾患薬剤疫学研究部門)
- 鈴木 毅(日本赤十字社医療センターアレルギー・リウマチ科)
- 瀬戸 洋平(東京女子医科大学八千代医療センター)
- 中山 健夫(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野)
- 西田 圭一郎(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科人体構成学整形外科)
- 平田 信太郎(広島大学病院リウマチ・膠原病科)
- 松井 利浩(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科生涯免疫難病学講座)
- 松下 功(富山大学医学部整形外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 免疫アレルギー疾患政策研究分野)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
10,887,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動
研究分担者 平田信太郎
産業医科大学(平成20年8月1日~平成28年8月31日) → 広島大学(平成28年9月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国の関節リウマチ診療の標準化を目指して、1)エビデンスに基づいた一般医向け診療ガイドラインの作成、2)リウマチ診療の地域格差、施設間格差などに関する実態調査のための疫学データベースの構築、3)医療の標準化・及び拠点病院の構築、4)リウマチ対策の実施状況の調査と評価、などの研究活動を多角的に行う。
研究方法
本研究は、我が国におけるRA診療の標準化の目 標達成のために3つの分科会形式で研究チームを構成し、密接に交流をしている。
1)RA診療ガイドライン作成分科会:すでに主任研究者である宮坂信之、分担研究者である山中 寿を中心にして、GRADE法を用いてわが国における関節リウマチ診療の指針を示すべきガイドラインを作成し、日本リウマチ学会より「関節リウマチ診療ガイドライン2014」として発表した。このため、本年度は初期治療を行う一般医家向けの診療ガイドラインの策定を試み、インターネットを用いて調査を実施した。
2)RA臨床疫学データベース構築分科会:本年度は、Japan Medical Data Center Claims Data(JMDC Claims Data)を用いてRA群(6,712名)と非RA群(33,560名)での入院を要した感染症の罹患率(HI)を比較し、さらに50歳以上のRA群(n=3,607)と糖尿病群(n=10,821)で各合併症の罹患率を比較した。また、日本における生物学的製剤使用関節リウマチ患者に関する疫学的研究(REAL研究)登録症例と、日本における分子標的治療薬使用関節リウマチ患者に関するアウトカム研究(CORRECT研究)登録症例とを比較検討した。
3)RA診療拠点病院ネットワーク構築分科会:関節超音波検査を用いた早期関節リウマチ診断基準の確立とそれを用いた早期治療介入およびタイトコントロールの有効性のさらなる検討を行った。さらに、関節超音波検査の普及と教育活動の検討を行い、本研究の成果として平成26年に作成した「関節超音波評価ガイドライン」をもとにして日本リウマチ学会と連携を行いながら、日本リウマチ学会各支部において超音波検査講習会を実施し、関節リウマチ診療の標準化を図った。「日本リウマチ学会登録ソノグラファー制度」の現状と問題点についても検討した。
1)RA診療ガイドライン作成分科会:すでに主任研究者である宮坂信之、分担研究者である山中 寿を中心にして、GRADE法を用いてわが国における関節リウマチ診療の指針を示すべきガイドラインを作成し、日本リウマチ学会より「関節リウマチ診療ガイドライン2014」として発表した。このため、本年度は初期治療を行う一般医家向けの診療ガイドラインの策定を試み、インターネットを用いて調査を実施した。
2)RA臨床疫学データベース構築分科会:本年度は、Japan Medical Data Center Claims Data(JMDC Claims Data)を用いてRA群(6,712名)と非RA群(33,560名)での入院を要した感染症の罹患率(HI)を比較し、さらに50歳以上のRA群(n=3,607)と糖尿病群(n=10,821)で各合併症の罹患率を比較した。また、日本における生物学的製剤使用関節リウマチ患者に関する疫学的研究(REAL研究)登録症例と、日本における分子標的治療薬使用関節リウマチ患者に関するアウトカム研究(CORRECT研究)登録症例とを比較検討した。
3)RA診療拠点病院ネットワーク構築分科会:関節超音波検査を用いた早期関節リウマチ診断基準の確立とそれを用いた早期治療介入およびタイトコントロールの有効性のさらなる検討を行った。さらに、関節超音波検査の普及と教育活動の検討を行い、本研究の成果として平成26年に作成した「関節超音波評価ガイドライン」をもとにして日本リウマチ学会と連携を行いながら、日本リウマチ学会各支部において超音波検査講習会を実施し、関節リウマチ診療の標準化を図った。「日本リウマチ学会登録ソノグラファー制度」の現状と問題点についても検討した。
結果と考察
1)RA診療ガイドライン作成分科会では、1)すべての医師に期待される医療、2)リウマチ科を標榜する医師に期待される医療、3)リウマチ科専門医に任せるべき医療、の3群に診療内容を大別し、一般医向け関節リウマチ診療ガイドラインの骨子を作成した。その結果、診断が必ずしも容易ではない早期関節炎の診断と治療方針の決定や、生物学的製剤を含む専門的知識を要する薬物治療、合併病態を有する患者の治療、関節リウマチに起因する関節手術などは主として専門医が行うべき医療であること、それに対して薬物治療が奏功して安定的な経過をたどっている患者の日常診療や、基本的な薬剤の投与、非薬物的治療などは一般医に推奨できる医療であることが明確になった。
2)RA臨床疫学データベース構築分科会では、JMDC Claims dataを用いて解析した結果、罹患率比(IRR)はRA群で有意に高かった。重症感染症と関連した因子としては、年令、慢性呼吸器疾患、糖尿病、腎疾患、生物学的製剤使用、ステロイド使用などが挙げられた。また、脳心血管疾患とは、年令、男性、高血圧、腎疾患、ステロイド使用などの因子が関連したが、メトトレキサート、生物学的製剤などの使用との関連はみられなかった。骨折と関連するのは、年令、女性、糖尿病、骨粗しょう症、ステロイド使用であった。これによって、現在の我が国のRA患者の現状と問題点が明確となった。
3)RA診療拠点病院ネットワーク構築分科会:本分科会を中心とした活動により、関節超音波ガイドラインの作成、日本リウマチ学会関節超音波講習会の開催、日本リウマチ学会登録ソノグラファー制度の導入を通じて関節超音波検査が普及しつつあり、我が国における関節リウマチ診療の標準化が期待できる。また、①PDグレード2以上の滑膜炎あるいは②PDグレード1以上の滑膜炎かつRF/ACPA陽性で最も診断精度が高く、感度91.4%、特異度92.5%、正確度92.1%であり、これまでに用いてきたACR/EULARの分類基準にさらに関節超音波検査を加えることで、より正確度の高い診断が可能になることが明らかとなった。
2)RA臨床疫学データベース構築分科会では、JMDC Claims dataを用いて解析した結果、罹患率比(IRR)はRA群で有意に高かった。重症感染症と関連した因子としては、年令、慢性呼吸器疾患、糖尿病、腎疾患、生物学的製剤使用、ステロイド使用などが挙げられた。また、脳心血管疾患とは、年令、男性、高血圧、腎疾患、ステロイド使用などの因子が関連したが、メトトレキサート、生物学的製剤などの使用との関連はみられなかった。骨折と関連するのは、年令、女性、糖尿病、骨粗しょう症、ステロイド使用であった。これによって、現在の我が国のRA患者の現状と問題点が明確となった。
3)RA診療拠点病院ネットワーク構築分科会:本分科会を中心とした活動により、関節超音波ガイドラインの作成、日本リウマチ学会関節超音波講習会の開催、日本リウマチ学会登録ソノグラファー制度の導入を通じて関節超音波検査が普及しつつあり、我が国における関節リウマチ診療の標準化が期待できる。また、①PDグレード2以上の滑膜炎あるいは②PDグレード1以上の滑膜炎かつRF/ACPA陽性で最も診断精度が高く、感度91.4%、特異度92.5%、正確度92.1%であり、これまでに用いてきたACR/EULARの分類基準にさらに関節超音波検査を加えることで、より正確度の高い診断が可能になることが明らかとなった。
結論
本研究の成果は、我が国の関節リウマチ診療の標準化、適正化および均てん化、関節リウマチ患者の疫学データベースの構築と発展、診療の地域格差の解消、さらには今後のリウマチ対策の策定に大きく貢献するものと思われる。
公開日・更新日
公開日
2017-06-07
更新日
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