Dolichoectasiaの疾患概念確立並びに病態解明・診断基準作成に関する研究

文献情報

文献番号
201610079A
報告書区分
総括
研究課題名
Dolichoectasiaの疾患概念確立並びに病態解明・診断基準作成に関する研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-038
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
中冨 浩文(国立大学法人東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 宮脇 哲(国立大学法人東京大学 医学部附属病院)
  • 栗原 裕基(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科(医学部))
  • 和田 洋一郎(国立大学法人東京大学 アイソトープ総合センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Dolichoectasiaは脳卒中を引き起こす脳血管異常であるが、疾患概念も確立しておらず、診断時には予後も悪い。臨床・基礎研究の両面から疾患概念の確立と病態解明を行い、それに基づいた診断基準を確立することを目的とした。
研究方法
臨床研究では、当教室及び関連施設、協力施設で収集した症例のデータを、疫学、症候、検査所見(主に画像所見)、治療内容、予後に関して、各々細かく項目を設定した上で解析を行った。急性解離性脳動脈瘤に関しては、143症例(1980-2000の期間に登録し、データベース化)の2011年度までの再発の追跡調査(Stroke 2013;44:126-131)にて、再発は3期3様式であり、初期の出血性再発、後期の非出血性再発、慢性期の慢性紡錘状動脈瘤への転化があることを明らかとしており、これらの追跡調査を行った。また、慢性紡錘状解離性脳動脈瘤74症例のデータベースを作成した。
更に、dolichoectasiaを呈した血管のmorphometric analysisから、dolichoつまり延長・蛇行性変化に相関するtortuosity index (TI: (actual length of the vessel/straight-line length of same vessel -1)) と、ectasiaすなわち拡張性変化に相関するdilatation index (DI: maximal diameter/reference diameter -1) が重要な診断基準となることを見出した(参考文献6), 7))。また、慢性紡錘状解離性脳動脈瘤74症例の臨床病理学的解析から、壁内出血(IMH: intramural hemorrhage)が出現することにより病理学的変化が不可逆かつ慢性進行性へ移行することを見出している。すなわち、IMHの有無は、今後の病勢の進行性を判定する重要な因子であることを見出した。このTI、DI、IMHの3因子を用いて診断基準の策定(TDI criteriaと称する)を行なった。更に、このTDI criteriaと脳底動脈におけるSmoker's criteriaとの相関を検証した。最終的に48症例(うち後方循環45症例)に対してTDI criteriaの検証を行った。
基礎研究では、マウス脳底動脈の露出手技を開発し、塩化カルシウムパッチによりdolichoectasiaの病理所見に類似するモデルを作製し、この解析を行った。
中冨は研究代表者であり、研究協力者による臨床研究、基礎研究を統合した。
結果と考察
臨床面では、急性解離性脳動脈瘤の追跡調査にて急性解離から慢性紡錘状解離性脳動脈瘤への転化4症例を収集し、急性解離はいわばpre-dolichoectasia状態であると考えられる事を見いだした。また、慢性紡錘状解離性脳動脈瘤74症例を収集し、これこそが、dolichoectasiaと同義であると考えられた。現在は48症例の画像での計測を完遂し、このTDI criteriaをより実際の臨床に即したスコアリングシステム (modified TDI criteria: mTDI criteria) へと修正・改良することに成功しており、近々論文化し公表する予定である。このmTDI criteriaを用いて評価するとSmoker's criteriaとの相関が認められた。基礎研究では、マウス脳底動脈の露出手技を開発し、塩化カルシウムパッチによりdolichoectasiaの病理所見に類似するモデルを作製した。このモデルに対し、マイクロアレイの結果に基づき各種免疫組織化学を行なったところ、MMP(特にMMP9)が病態形成に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。当モデルはdolichoectasiaと類似しており、病態形成過程における細胞動態とその分子機構の更なる解析により、新たな治療法開発への貢献が期待出来るものと考えられる。
結論
慢性紡錘状解離性脳動脈瘤こそがdolichoectasiaと同義であると考えられ、急性解離はpre-dolichoectasia状態であると考えられる事を見いだした。マウス脳底動脈に拡張性病変を来すモデルは、dolichoectasiaと類似しており、MMP9が病態形成に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2017-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201610079B
報告書区分
総合
研究課題名
Dolichoectasiaの疾患概念確立並びに病態解明・診断基準作成に関する研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-038
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
中冨 浩文(国立大学法人東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 宮脇 哲(国立大学法人東京大学 医学部附属病院)
  • 栗原 裕基(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科(医学部))
  • 和田 洋一郎(国立大学法人東京大学 アイソトープ総合センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Dolichoectasiaは脳卒中を引き起こす脳血管異常であるが、疾患概念も確立しておらず、診断時には予後も悪い。臨床・基礎研究の両面から疾患概念の確立と病態解明を行い、それに基づいた診断基準を確立することを目的とした。
研究方法
臨床研究では、当教室及び関連施設、協力施設で収集した症例のデータを、疫学、症候、検査所見(主に画像所見)、治療内容、予後に関して、各々細かく項目を設定した上で解析を行った。急性解離性脳動脈瘤に関しては、143症例(1980-2000の期間に登録し、データベース化)の2011年度までの再発の追跡調査(Stroke 2013;44:126-131)にて、再発は3期3様式であり、初期の出血性再発、後期の非出血性再発、慢性期の慢性紡錘状動脈瘤への転化があることを明らかとしており、これらの追跡調査を行った。また、慢性紡錘状解離性脳動脈瘤74症例のデータベースを作成した。
更に、dolichoectasiaを呈した血管のmorphometric analysisから、dolichoつまり延長・蛇行性変化に相関するtortuosity index (TI: (actual length of the vessel/straight-line length of same vessel -1)) と、ectasiaすなわち拡張性変化に相関するdilatation index (DI: maximal diameter/reference diameter -1) が重要な診断基準となることを見出した(参考文献6), 7))。また、慢性紡錘状解離性脳動脈瘤74症例の臨床病理学的解析から、壁内出血(IMH: intramural hemorrhage)が出現することにより病理学的変化が不可逆かつ慢性進行性へ移行することを見出している。すなわち、IMHの有無は、今後の病勢の進行性を判定する重要な因子であることを見出した。このTI、DI、IMHの3因子を用いて診断基準の策定(TDI criteriaと称する)を行なった。更に、このTDI criteriaと脳底動脈におけるSmoker's criteriaとの相関を検証した。最終的に48症例(うち後方循環45症例)に対してTDI criteriaの検証を行った。
基礎研究では、マウス脳底動脈の露出手技を開発し、塩化カルシウムパッチによりdolichoectasiaの病理所見に類似するモデルを作製し、この解析を行った。
中冨は研究代表者であり、研究協力者による臨床研究、基礎研究を統合した。
結果と考察
臨床面では、急性解離性脳動脈瘤の追跡調査にて急性解離から慢性紡錘状解離性脳動脈瘤への転化4症例を収集し、急性解離はいわばpre-dolichoectasia状態であると考えられる事を見いだした。また、慢性紡錘状解離性脳動脈瘤74症例を収集し、これこそが、dolichoectasiaと同義であると考えられた。現在は48症例の画像での計測を完遂し、このTDI criteriaをより実際の臨床に即したスコアリングシステム (modified TDI criteria: mTDI criteria) へと修正・改良することに成功しており、近々論文化し公表する予定である。このmTDI criteriaを用いて評価するとSmoker's criteriaとの相関が認められた。基礎研究では、マウス脳底動脈の露出手技を開発し、塩化カルシウムパッチによりdolichoectasiaの病理所見に類似するモデルを作製した。このモデルに対し、マイクロアレイの結果に基づき各種免疫組織化学を行なったところ、MMP(特にMMP9)が病態形成に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。当モデルはdolichoectasiaと類似しており、病態形成過程における細胞動態とその分子機構の更なる解析により、新たな治療法開発への貢献が期待出来るものと考えられる。
結論
慢性紡錘状解離性脳動脈瘤こそがdolichoectasiaと同義であると考えられ、急性解離はpre-dolichoectasia状態であると考えられる事を見いだした。マウス脳底動脈に拡張性病変を来すモデルは、dolichoectasiaと類似しており、MMP9が病態形成に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2017-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201610079C

成果

専門的・学術的観点からの成果
マウス脳底動脈の安全かつ確実な露出手技を確立することに成功した。この手術手技を用いることで、マウス脳底動脈に拡張性病変を来すモデルを作成・確立した。その組織学的特徴はdolichoectasiaに類似していた。MMP(特にMMP9)が病態形成に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。今後も引き続きマイクロアレイの結果等に基づいた解析を続けていく予定である。病態形成過程における細胞動態とその分子機構の更なる解析により、新たな治療法開発への貢献が期待出来るものと考えられる。
臨床的観点からの成果
臨床研究では、急性解離性脳動脈瘤の追跡調査にて、急性解離から慢性紡錘状解離性脳動脈瘤への転化4症例を収集し,急性解離はいわばpre-dolichoectasia状態であると考えられる事を見いだした。また慢性紡錘状解離性脳動脈瘤74症例の臨床病理学的解析から、壁内出血(IMH: intramural hemorrhage)が出現することにより病理学的変化が不可逆かつ慢性進行性へ移行することを見出している。すなわち、IMHの有無は、今後の病勢の進行性を判定する重要な因子であることを見出した。
ガイドライン等の開発
Dolichoectasiaを呈した血管のmorphometric analysisから、延長・蛇行性変化に相関するtortuosity index (TI) と、拡張性変化に相関するdilatation index (DI)、前述のIMHの3因子を用いて診断基準の策定(TDI criteriaと称する)を行なった。48症例の画像での計測を施行し、この基準が後方循環において汎用されているSmoker's criteriaと良く相関し、さらに前方循環にも適用可能であり、論文化し公表予定である。
その他行政的観点からの成果
行政的観点からの成果は現時点では無い。
その他のインパクト
マスメディアへの出演、社会貢献のための公開シンポジウムは現時点では無い。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
日本脳神経外科学会第74回学術総会, 第23回日本血管生物医学会学術集会, 第41回日本脳卒中学会総会, 日本脳神経外科学会第75回学術総会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-06-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201610079Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,000,000円
(2)補助金確定額
1,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 638,520円
人件費・謝金 0円
旅費 62,900円
その他 68,580円
間接経費 230,000円
合計 1,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-03-09
更新日
-