文献情報
文献番号
201610037A
報告書区分
総括
研究課題名
もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)の診断・治療に関する研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-078
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
寳金 清博(北海道大学 北海道大学病院脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
- 冨永悌二(東北大学大学院医学系研究科神経外科学)
- 宮本 享(京都大学医学研究科脳神経外科)
- 鈴木則宏(慶応義塾大学医学部神経内科学)
- 黒田 敏(富山大学医学研究科脳神経外科)
- 小泉昭夫(京都大学医学研究科社会医学系環境衛生学分野臨床遺伝学)
- 高橋淳(国立循環器病研究センター脳神経外科)
- 佐藤典宏(北海道大学病院臨床研究開発センター臨床試験支援)
- 数又 研(北海道大学医学部脳神経外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
6,731,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)の診断・治療に関する政策研究班はもやもや病診断基準の適正化、重症度基準に関するエビデンス構築、QOL調査、診療ガイドラインの適宜改訂を主な課題とする。また、行政機関、関連学会、患者会(もやの会)の組織間コミュニケーションを可能にする国内で唯一の組織である。
本年度の課題としてガイドライン改訂、診断基準、重症度基準、診療ガイドラインの関連学会における承認等が残されていた。また、疾患レジストリ構築も開始されているが、医療費助成の対象とならない軽症例を含めた登録による病態の包括的把握と的確な医療行政への助言も視野に入れている。さらに、診療の質の向上に寄与する科学的根拠を構築する難治性疾患実用化研究事業と連携して複数の多施設共同臨床研究を支援する。
本年度の課題としてガイドライン改訂、診断基準、重症度基準、診療ガイドラインの関連学会における承認等が残されていた。また、疾患レジストリ構築も開始されているが、医療費助成の対象とならない軽症例を含めた登録による病態の包括的把握と的確な医療行政への助言も視野に入れている。さらに、診療の質の向上に寄与する科学的根拠を構築する難治性疾患実用化研究事業と連携して複数の多施設共同臨床研究を支援する。
研究方法
もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)の診断・治療に関する研究課題を達成するため、日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本脳卒中の外科学会、及び日本を代表するもやもや病の研究者を招集し研究組織を構築した。これらメンバーは、現在行われている多施設共同臨床研究の主任研究者でもある。研究班会議の開催はH28年度に3回行った。議案は、多施設共同臨床研究の経過報告、レジストリ構築、ガイドライン改訂に関する事項等である。
結果と考察
H26-28年度までの3年間に臨床個人調査票の改訂、厚労省難病情報ホームページ上の疾患情報の更新を行った。以前より、疾患認定に関し、判定医の力量に起因する地域間格差や診断モダリティーの違いによる差が問題とされてきた。これらの点は、新たな診断基準を策定することにより改善が図られた。また、医療費補助制度の変更に伴い新たに重症度基準が策定された。また、最近の臨床研究により得られた科学的根拠を反映した診療ガイドラインの改訂(もやもや病ガイドライン2017(改訂版)を行った。さらに、新診断基準、診療ガイドラインは日本脳卒中、日本脳卒中の外科学会の理事会において1月31日に承認された。
診療エビデンスの構築を目的とする多施設共同臨床研究、無症候性もやもや病 (AMORE study)、高次脳機能研究 (COSMO Japan study)、出血に関するバイパスの予防効果に関する研究 (JAM trial)、高齢者の自然歴に関する研究(MODEST study)など実用化研究の支援を継続した。成人の再出血に対する外科的血行再建術の予防効果に関するRandomized control study (Japan Adult Moyamoya Trial)では、出血に関与する画像所見の特徴が明らかになった。また、無症候性もやもや病の自然歴を明らかにする多施設共同研究(AMORE)は, 2012年1月1日~2015年12月31日の期間に109症例が集積され、現在慎重に経過観察を行っている。高次脳機能障害の体系的診断化の確立に関する多施設共同研究は予定していた患者登録期間を終了し今後、解析が行われる。高齢化社会を見越し、60歳以上のもやもや病患者の自然歴、治療合併症を検討するMODEST研究が開始され、現在患者登録を継続している。さらに、疾患レジストリの構築に必要なweb登録システムの構築が終わり、研究計画は北海道大学内の倫理申請が承認された。
診断基準、重症度基準、診療ガイドラインの関連学会での承認は順調に行われた。実用化研究との連携により、疾患レジストリの構築が進み今後、患者登録が開始される。昨年、患者会との意見交換を行っているが、重症度基準に関しては医学的根拠の裏付けを適正な研究により行い適宜改訂を検討する必要がある。
発症機序、発症リスク評価等、診療に関する科学的根拠は未だ十分とはいえずレジストリ構築を端緒に研究が進むことを期待する。
診療エビデンスの構築を目的とする多施設共同臨床研究、無症候性もやもや病 (AMORE study)、高次脳機能研究 (COSMO Japan study)、出血に関するバイパスの予防効果に関する研究 (JAM trial)、高齢者の自然歴に関する研究(MODEST study)など実用化研究の支援を継続した。成人の再出血に対する外科的血行再建術の予防効果に関するRandomized control study (Japan Adult Moyamoya Trial)では、出血に関与する画像所見の特徴が明らかになった。また、無症候性もやもや病の自然歴を明らかにする多施設共同研究(AMORE)は, 2012年1月1日~2015年12月31日の期間に109症例が集積され、現在慎重に経過観察を行っている。高次脳機能障害の体系的診断化の確立に関する多施設共同研究は予定していた患者登録期間を終了し今後、解析が行われる。高齢化社会を見越し、60歳以上のもやもや病患者の自然歴、治療合併症を検討するMODEST研究が開始され、現在患者登録を継続している。さらに、疾患レジストリの構築に必要なweb登録システムの構築が終わり、研究計画は北海道大学内の倫理申請が承認された。
診断基準、重症度基準、診療ガイドラインの関連学会での承認は順調に行われた。実用化研究との連携により、疾患レジストリの構築が進み今後、患者登録が開始される。昨年、患者会との意見交換を行っているが、重症度基準に関しては医学的根拠の裏付けを適正な研究により行い適宜改訂を検討する必要がある。
発症機序、発症リスク評価等、診療に関する科学的根拠は未だ十分とはいえずレジストリ構築を端緒に研究が進むことを期待する。
結論
もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)の診断・治療に関する研究班の研究成果について総括した。現在、もやもや病に関する臨床、基礎研究は日本が世界をリードしている。しかしながら、診断基準、治療指針の国際標準は確立されていない。今後、診断基準、診療ガイドラインについての情報発信が重要な課題となる。
公開日・更新日
公開日
2017-05-26
更新日
2017-07-20