文献情報
文献番号
201606014A
報告書区分
総括
研究課題名
HTLV-1母子感染予防に関する研究:HTLV-1抗体陽性母体からの出生児のコホート研究
課題番号
H26-健やか-指定-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
板橋 家頭夫(昭和大学 医学部小児科学講座)
研究分担者(所属機関)
- 齋藤 滋(富山大学大学院 医学薬学研究部 )
- 関沢 明彦(日本産婦人科医会)
- 鮫島 浩(宮崎大学医学部生殖発達医学講座 産婦人科)
- 木下 勝之(日本産婦人科医会)
- 時田 章史(日本小児科医会)
- 森内 浩幸(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 小児科学)
- 根路銘 安仁(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 離島へき地医療人育成センター)
- 杉浦 時雄(名古屋市立大学医学研究科 小児科)
- 伊藤 裕司(国立成育医療研究センター周産期・母子診療センター)
- 水野 克己(昭和大学江東豊洲病院 こどもセンター)
- 田村 正徳(埼玉医科大学総合医療センター 小児科)
- 楠田 聡(東京女子医科大学母子総合医療センター)
- 加藤 稲子(三重大学大学院医学系研究科周産期発達障害予防学)
- 米本 直裕(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻)
- 宮沢 篤生(昭和大学医学部 小児科学講座 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
1.HTLV-1母子感染予防コホート研究
HTLV-1母子感染を効果的に予防でき、子どもが健やかに発育できるような乳汁栄養法を提示すること。
2.母乳バンクに関する研究
我が国には公的に認められた母乳バンクはなく、日本において母乳バンクは必要なのか、必要であるとすればどのような運用形態が適しているのかを明らかにする。
HTLV-1母子感染を効果的に予防でき、子どもが健やかに発育できるような乳汁栄養法を提示すること。
2.母乳バンクに関する研究
我が国には公的に認められた母乳バンクはなく、日本において母乳バンクは必要なのか、必要であるとすればどのような運用形態が適しているのかを明らかにする。
研究方法
1.HTLV-1母子感染予防コホート研究
全国92の研究協力施設で登録されたHTLV-1ウエスタンブロット(WB)法による確認検査が陽性あるいは判定保留妊婦から出生した児を対象に3歳までフォローアップし、乳汁栄養法別に母子感染率や母親の不安・育児ストレス、児の健康状態を評価。
2.母乳バンクに関する研究
諸外国の基準を参考に昭和大学豊洲病院において自施設専用の母乳バンクを設置し、運用を開始した。
全国92の研究協力施設で登録されたHTLV-1ウエスタンブロット(WB)法による確認検査が陽性あるいは判定保留妊婦から出生した児を対象に3歳までフォローアップし、乳汁栄養法別に母子感染率や母親の不安・育児ストレス、児の健康状態を評価。
2.母乳バンクに関する研究
諸外国の基準を参考に昭和大学豊洲病院において自施設専用の母乳バンクを設置し、運用を開始した。
結果と考察
1.HTLV-1母子感染予防コホート研究
①これまでにリクルートされた妊婦は974名で、このうち877名がWEB登録されている。内訳はWB陽性が751名(85.6%)、判定保留が223名(25.4%)。②WB法陽性妊婦から出生した児のうち乳汁選択法が登録されていた751名の乳汁選択の内訳は、短期母乳栄養53.1%、人工栄養38.5%、凍結母乳栄養4.9%、長期母乳栄養3.6%であった。③判定保留妊婦のうちPCR法の結果が登録されている129名中23名(17.8%)が陽性であった。④途中経過であるが、3歳時点で母子感染が確認されたのは5名(長期母乳栄養、短期母乳栄養、凍結母乳栄養各1名、人工栄養2名)で、いずれもWB法陽性妊婦から出生した児であった。一方、現時点では判定保留妊婦からは母子感染は認められていない。なお、短期母乳栄養を選択してもその一部は6か月以上の長期母乳栄養となっていた。⑤1歳時点の育児ストレスインデックス(PSI)を検討したところ、選択された栄養法による差はなかった。
2.母乳バンクに関する研究
昭和大学江東豊洲病院で設置された母乳バンクを利用して、8名の極低出生体重児に安全に使用することができた。
①これまでにリクルートされた妊婦は974名で、このうち877名がWEB登録されている。内訳はWB陽性が751名(85.6%)、判定保留が223名(25.4%)。②WB法陽性妊婦から出生した児のうち乳汁選択法が登録されていた751名の乳汁選択の内訳は、短期母乳栄養53.1%、人工栄養38.5%、凍結母乳栄養4.9%、長期母乳栄養3.6%であった。③判定保留妊婦のうちPCR法の結果が登録されている129名中23名(17.8%)が陽性であった。④途中経過であるが、3歳時点で母子感染が確認されたのは5名(長期母乳栄養、短期母乳栄養、凍結母乳栄養各1名、人工栄養2名)で、いずれもWB法陽性妊婦から出生した児であった。一方、現時点では判定保留妊婦からは母子感染は認められていない。なお、短期母乳栄養を選択してもその一部は6か月以上の長期母乳栄養となっていた。⑤1歳時点の育児ストレスインデックス(PSI)を検討したところ、選択された栄養法による差はなかった。
2.母乳バンクに関する研究
昭和大学江東豊洲病院で設置された母乳バンクを利用して、8名の極低出生体重児に安全に使用することができた。
結論
1.HTLV-1母子感染予防コホート研究
①コホート研究は途中の段階である。信頼性の高い解析結果を得るためには、高いフォローアップ率を維持していかなければならない。②PCR法の実施や適切なカウンセリングが乳汁選択の決定や育児ストレスの軽減に有用である。③各地域のHTLV-1母子感染予防対策をさらに充実させるためには、今後、産科医と小児科医の連携やHTLV-1母子感染に関する普及・啓発が必要で、HTLV-1母子感染予防マニュアル(改定版)の利用が期待される。
2.母乳バンクに関する研究
母乳バンクから供給されたpooled human milkは極低出生体重児に安全に使用することができた。今後、壊死性腸炎や重症感染症の軽減効果や医療費削減効果について検証する必要がある。
①コホート研究は途中の段階である。信頼性の高い解析結果を得るためには、高いフォローアップ率を維持していかなければならない。②PCR法の実施や適切なカウンセリングが乳汁選択の決定や育児ストレスの軽減に有用である。③各地域のHTLV-1母子感染予防対策をさらに充実させるためには、今後、産科医と小児科医の連携やHTLV-1母子感染に関する普及・啓発が必要で、HTLV-1母子感染予防マニュアル(改定版)の利用が期待される。
2.母乳バンクに関する研究
母乳バンクから供給されたpooled human milkは極低出生体重児に安全に使用することができた。今後、壊死性腸炎や重症感染症の軽減効果や医療費削減効果について検証する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2017-06-20
更新日
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