未就学児の睡眠・情報通信機器使用の実態把握と早期介入に関する研究:保健指導マニュアルの構築

文献情報

文献番号
201606006A
報告書区分
総括
研究課題名
未就学児の睡眠・情報通信機器使用の実態把握と早期介入に関する研究:保健指導マニュアルの構築
課題番号
H27-健やか-一般-003
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
岡 靖哲(愛媛大学 医学部附属病院 睡眠医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 堀内史枝(愛媛大学医学部附属病院・子どものこころセンター)
  • 伊藤一統(宇部フロンティア大学短期大学部・保育学科)
  • 山本隆一郎(江戸川大学・社会学部・准教授 四国大学・看護学部)
  • 高田律美(四国大学・看護学部)
  • 上西孝明(広島文化学園大学・看護学部)
  • 福田光成(愛媛大学医学部附属病院・小児科)
  • 松原圭一 (愛媛大学医学部附属病院・周産母子センター)
  • 松原裕子(愛媛大学医学部附属病院・周産母子センター)
  • 上野修一(愛媛大学医学系研究科・精神神経科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
未就学児の睡眠をめぐる現状を把握するとともに,睡眠の確保を困難にする要因の中でも情報通信機器使用に着目し,睡眠・情報機器の適正使用についての知識の浸透をはかり,児の健全な睡眠を確保するために保育,医療,心理,家庭などの現場で幅広く活用できる指導マニュアルを作成することを目的とする.睡眠の現状把握としては,夜間の睡眠と日中の睡眠(午睡)を一体として把握し,年齢とともに変化する生理的睡眠と,通園や生活スタイルの違いによる睡眠・情報通信機器使用の違いとを総合的に把握することで,指導マニュアルに盛り込む必要の高い項目を絞り込み.最終年度において現場で指導に役立つマニュアルを作成するための,エビデンスの収集を行う.
研究方法
平成28年度は,睡眠習慣・情報機器使用の実態と,児の行動・発達への影響を検討するための横断面の研究の継続,平成27年度に実施した保育所を対象とした睡眠(午睡)実態調査の解析,睡眠・情報通信機器使用の指導の対象となる保護者(母親)の睡眠実態の解明と早期の指導の必要性についての検討を実施した.乳幼児健診における未就学児の睡眠・情報機器使用の実態調査では,愛媛県東温市の健診受診者(1.5歳時健診受信者:89名,3歳時健診受信者:63名)とその保護者を対象として,睡眠習慣,情報機器使用の状況に関する調査を実施した.乳幼児における午睡と睡眠時の安全確保の調査では,全国の認可保育所から2割を抽出し,平成28年2月に調査票を配布した.調査票で回答を求めた,午睡の状況,午睡時の安全対策,情報通信機器使用について分析を行った.メディアが子どもの睡眠に与える影響の調査では,愛媛大学医学部附属病院の受診者を対象に,子どもへの各種メディアの暴露の程度について,保護者からのアンケート調査を行った.妊婦の睡眠と情報通信機器使用の実態調査では,愛媛大学医学部附属病院を受診し,研究への同意が得られた妊婦を対象に,睡眠習慣・睡眠障害・情報通信機器使用についてのアンケートの記入を依頼し,妊娠中の睡眠の状況と,情報通信機器使用の現状を分析した.本研究に際しては,当該施設の倫理委員会において承認を受けてた上で実施した.
結果と考察
乳幼児健診における未就学児の睡眠・情報機器使用の実態調査では,1.5歳保育園児は,平日の起床時刻が早く,午睡時間が長いこと,3歳保育園児は,平日・休日の入床時刻が遅いことが明らかとなった.3歳児のスマートホンの使用率は保育園児と比較して幼稚園児に有意に多かった.乳幼児における午睡と睡眠時の安全確保については,睡眠中の安全対策は8割以上の保育所で実施されていた.午睡のとり方については,約半数の施設で年齢毎に午睡の時間などを調整していたが,就学前に午睡をやめるといった対策を実施している施設はわずかであった.メディアが子どもの睡眠に与える影響の調査では,最も使用しているメディアはテレビであり,半数が0歳からの超早期暴露であり、1日の使用時間も長いことが明らかとなった.また持ち運びの簡単な携帯ゲームは,子供部屋での使用が小学生になると増えることも明らかとなった.妊婦の睡眠と情報通信機器使用の実態調査では,妊婦の就床時刻の平均は23時8分であったが,深夜3時に就床している妊婦もあった.昼寝については,一日あたり平均30分以上の昼寝を取っていた. 情報通信機器使用について,テレビ視聴は平均33時間43分/週であり,一日10時間前後テレビを見ているとの回答もあった.スマートホンの使用は,平均週25時間44分であり,毎日長時間使用している妊婦が多くみられた.
結論
本年度までの研究において,横断面の調査の段階で,保護者のインターネット依存が,児の行動面の問題に影響することが示されており,さらに,年齢によって,あるいは通園状況の違いといった生活背景の違いが睡眠・情報通信機器使用に影響することも明らかとなった.未就学児の睡眠・情報通信機器使用をめぐる背景の多様性は従来より想定されていたが,多方面からの調査アプローチによって,より具体的な違いが明らかとなってきた.最終年度の保健指導に役立つマニュアルの策定に向けて,未就学児の睡眠とメディア使用が,児の発達にどのように影響しているかの調査を継続し,国内外のエビデンスとあわせて,児への影響を予防することに役立つ提言として,夜間の睡眠と午睡,情報通信機器使用,特に保護者の情報通信機器使用にどのようにアプローチしていく必要があるのかを明らかにする.

公開日・更新日

公開日
2017-06-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201606006Z