宮城県における東日本大震災被災者の健康状態等に関する調査

文献情報

文献番号
201525024A
報告書区分
総括
研究課題名
宮城県における東日本大震災被災者の健康状態等に関する調査
課題番号
H25-健危-指定(復興)-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 押谷 仁(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 松岡 洋夫(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 八重樫 伸生(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 永富 良一(東北大学 大学院医工学研究科)
  • 南 優子(東北大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
49,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
第1に、長期にわたり被災者の健康状態や生活環境の推移を把握し、被災者の健康管理のために必要な対応を図ること。これにより、被災者と被災自治体を支援する。第2に、コホート研究として被災者における生活環境や健康状態と予後を長期追跡し、震災後の生活環境が被災者の健康状態や予後に及ぼす影響を検討すること。これにより、大規模災害が発生した際における被災者支援のあり方を検討する。
研究方法
石巻市沿岸部の住民と仙台市若林区の仮設入居者および七ヶ浜町の住民を対象に、被災者健康調査(アンケート調査)を実施した。アンケート調査は年齢に応じて以下の通りとした。18歳以上の住民を対象に、健康状態、食事、睡眠、心理的苦痛、震災の記憶、職業・収入、周囲への信頼感などを調査した。18歳未満の住民を対象に、医療の状況、睡眠、保育・学校や友人に関する状況、こころと行動の変化、保護者のストレスなどを調査した(0歳から中学生までは保護者が回答、高校生相当は本人が回答)。また、65歳以上の者には基本チェックリストと生活不活発病チェックリストの調査を追加した。さらに本研究事業では、調査参加者の同意に基づいて、予後(生存死亡、医療受療状況と介護保険認定など)に関する追跡調査を実施した。
また、被災者健康調査の結果をもとに、当該自治体との連携のもとで、必要な保健医療上の支援(個別指導や医療機関への紹介、保健衛生施策に関する自治体への提言、心のケア・チームとの連携、運動教室や介護予防サービスへの支援など)を実施した。
なお、本調査研究は「疫学研究の倫理指針」を遵守しており、東北大学大学院医学系研究科倫理審査委員会の承認のもとに行われている。
結果と考察
本年度は、年2回の被災者健康調査(アンケート調査)を実施し、震災5年目の被災地域住民の健康状態や生活環境の推移などを把握した。参加者は、石巻市雄勝・牡鹿地区(網地島を含む)の住民、仙台市若林区仮設入居者、七ヶ浜町の住民を合わせて、第9期3,567名、第10期4,885名であった。調査結果の概要を述べる。第1に、成年調査の結果、健康状態はいずれの調査地区でも約70%は「良好」と回答し、悪化は見られなかった。睡眠障害が疑われる者の割合は、石巻市雄勝・牡鹿地区は第10期31.8%、仙台市若林地区は第10期37.5%で、全国平均28.5%に比べ、未だ高かった。心理的苦痛を感じている者の割合は、石巻市雄勝・牡鹿地区では前年度と変わらず(第8期12.9%:第10期13.0%)、仙台市若林区では前年度よりもわずかに減少した(第8期17.9%:第10期16.9%)が、全国平均11.0%に比べ、未だ高かった。また、七ヶ浜町では軽度心理的苦痛を示す者の割合は50%で、全国平均30%よりも依然高いことが示された。第2に、未成年調査の結果、小中学生において、行動の変化の複数の項目で問題を抱える者が見られたが、多数の中でランダムに現れるというよりも少数の者に集中して見られる傾向があった。第3に、高齢者における介護予防の二次予防対象者割合は、横ばいもしくはわずかな増加に留まっていた(石巻市雄勝・牡鹿地区第8期46.2%、第10期47.3%、仙台市若林地区第8期48.5%、第10期48.9%)。第4に、メンタルヘルスの推移について「地域のつながり」別に検討した結果、「地域のつながり」が弱いと回答した方では、常に「睡眠障害を疑われる」、「心理的苦痛が高い」の割合が高かった。第5に、就業状況、経済状況(暮らし向き)は、地域や個人の復興状態の影響によって違いが見られた。
保健医療上の支援として、被災者健康調査の結果説明や健康講話とともに栄養講話、栄養指導を実施し、地域住民の健康づくりに向けた支援を行った。こころや行動の変化に注意が必要な児童については、自治体に情報を提供し、アセスメントを行う契機としての役割を担った。高齢者においては基本チェックリストを使用して要介護発生リスクを評価し、自治体に情報を提供した。さらに、対象者の同意に基づいて、予後(生存死亡、医療受療状況、介護保険認定など)について追跡調査を実施した。介護保険認定は、各自治体の担当課から平成27年7月までの介護保険認定情報を収集した。医療受療状況は、平成27年12月診療分までの診療レセプト情報を収集した。
結論
本年度も年2回の被災者健康調査(アンケート調査)により、被災生活の長期化にともなう健康影響を調査した。調査結果から、被災者における睡眠障害や心理的苦痛は改善傾向を示したが、全国平均と比べて未だ高かった。また、就業状況、経済状況(暮らし向き)では、地域や個人の復興状態の影響によって違いが見られた。さらに、震災後の居住環境とその変化は、メンタルヘルス、運動機能、健診結果、介護保険認定、医療費などと有意に関連していた。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201525024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
49,000,000円
(2)補助金確定額
49,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 10,112,374円
人件費・謝金 10,809,994円
旅費 757,840円
その他 27,319,792円
間接経費 0円
合計 49,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-09-29
更新日
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