食鳥肉におけるカンピロバクター汚染のリスク管理に関する研究

文献情報

文献番号
201522032A
報告書区分
総括
研究課題名
食鳥肉におけるカンピロバクター汚染のリスク管理に関する研究
課題番号
H27-食品-一般-010
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 茂貴(東海大学 海洋学部)
  • 森田 幸雄(東京家政大学 家政学部)
  • 中馬 猛久(鹿児島大学 共同獣医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は食鳥肉の生産・処理・流通の各段階において、カンピロバクター汚染低減に資する衛生管理手法に関する科学的知見の集積を図り、より衛生的な食鳥肉の生産~消費に至るフードチェーンの在り方に関する提言を行うことで、本食中毒低減に資するガイドライン策定等の厚生労働行政に寄与することを目的とする。
研究方法
本研究では、食鳥肉に関わるフードチェーンを、(1)養鶏農場での生産段階、(2)食鳥処理場における解体段階、(3)加工・流通段階、(4)消費段階、の4つに区分した上で、それぞれの工程における汚染低減手法に関する情報・データ収集を行うこととした。
結果と考察
(1)生産段階では、国内7養鶏農場由来のブロイラー鶏盲腸便について、カンピロバクター検出試験を行い、本菌陽性・陰性農場を識別した。検体構成菌叢を農場別に比較し、Bacteroides属菌の構成比率とカンピロバクター保菌との間に関連性を見出した。更に、本菌陰性農場1農場で飼養時期別に盲腸便を採材し、鶏の発育に伴う盲腸内菌叢変動を追跡したが、何れの日齢においてもBacteroides属菌が最も優勢である実態を把握した。当該属菌はヒトやマウス等における腸内環境の健全性を図る指標としても用いられており、本属菌を指標とした飼養管理は、鶏腸内環境の健全性評価に加え、カンピロバクターの保菌状況を探る術として期待される。(2)食鳥処理段階では、国内の食鳥処理場に導入されている複数の食肉処理機器メーカーを訪問し、聞き取り調査を実施した。現在、我が国の当該施設の多くでは、世界的に展開している大規模な処理製造機器メーカー製が汎用されていること、そして一つの食鳥処理場に複数のメーカーの機器が導入されていることもあること、機器の技術進歩は目覚ましく、食鳥検査制度が導入された平成4年当時と比べ、各段に腸切れ等が生じない等、性能が向上している実態を把握した。国内で2施設しか設置されていない、エアーチラー導入食鳥処理場の一つを訪問し、聞き取り調査及び視察を実施し、と鳥は塩素水槽に一旦、手で付けた後にエアーチラー処理を行っていることを把握した。(3)加工・流通段階では、食鳥肉加工施設に既設のクラスト冷凍装置および馬肉をはじめとして、多様な食品の冷凍処理に使用される、急速液体冷凍装置を用いて、鶏肉中のカンピロバクター汚染低減効果を検証した。計2食鳥肉加工施設に既設されるクラスト冷凍装置を用いることで、鶏部分肉を自然汚染するカンピロバクター菌数は施設或は部位の別を問わず、有意に低減を図る手法であることが示された。また、急速液体冷凍装置を用いた場合、鶏肉検体温度は速やかな低下を示し、緩慢冷凍に比べ品質への影響が少ないと目された。約7対数個/gのカンピロバクター株を接種した鶏肉検体中の生存菌数を、同処理過程で比較したところ、3時間処理による検体1gあたりの菌数低減値は1.10-2.19対数個となり、食鳥肉の加工から流通段階における冷凍手法の応用が鶏肉中のカンピロバクター低減に有効に機能しうることを示していると考えられた。(4)流通・消費段階では、南九州地方の郷土料理として根付く、鶏刺しが生食用として市販流通している実態を鑑み、同食品におけるカンピロバクター汚染状況の把握に関する検討を行った。鹿児島県内小売店にて購入した鶏刺しを含む生食用および加熱用鶏肉を対象として、半定量的に汚染度を推測した結果、加熱用鶏肉に比べて、生食用鶏肉の汚染度は有意に低く、推定汚染菌数は最大で36MPN/50gであった。生食用鶏肉の多くは表面を焼烙していることの他、食鳥肉の解体~加工工程においても衛生的な取扱いが行われていることなどが、同数値として顕れていると推察された。
結論
食鳥肉の生産・食鳥処理・加工流通・消費段階において、本菌の汚染実態把握および汚染低減に資することが期待される手法を抽出することができた。次年度以降はこれらの手法の実効性等について検証を深め、リスク管理手法としての有用性を見極めたい。

公開日・更新日

公開日
2016-07-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-07-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201522032Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,000,000円
(2)補助金確定額
7,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,421,789円
人件費・謝金 0円
旅費 858,770円
その他 1,719,441円
間接経費 0円
合計 7,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-11-28
更新日
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