国際的な動向を踏まえた乳及び乳製品の試験法の研究

文献情報

文献番号
201522027A
報告書区分
総括
研究課題名
国際的な動向を踏まえた乳及び乳製品の試験法の研究
課題番号
H27-食品-一般-005
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
寺嶋 淳(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 岩崎 司(公益財団法人日本乳業技術協会 事業部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、乳等省令における試験法に関連する情報収集と修正が必要と考えられる試験法について検討し、最適な試験法の策定の可能性も含めて、将来的な展望を示すことを目的とする。特に、海外の乳及び乳製品に関する試験法を規定する成分規格に関する情報を収集し、乳等省令と比較することで国際的にも対応可能な試験法の確立を目指す。
研究方法
1. 海外における乳及び乳製品の成分規格及び試験法
 乳等省令で定められる乳及び乳製品の成分規格に関して、米国、EU、オーストラリア及びニュージーランドにおける乳及び乳製品の定義(範囲)、成分規格、試験項目等について情報収集を行った。なお、オーストラリアとニュージーランドについては同一の規格基準が適用されるため一体的に取り扱った。情報収集にあたっては、対象国・地域の関連法令やガイドラインを中心に検索を行った。
2. 乳等省令で規定される乳及び乳製品の試験法に関するアンケート調査
 乳業メーカーの技術者、大学や研究機関の専門家等で構成される、国際酪農連盟日本国内委員会(Japanese National Committee of International Dairy Federation (JIDF))の理化学分析専門部会員12名及び微生物・衛生専門部会委員16名を対象として、乳等省令 別表二(七)乳等の成分規格の試験法について項目毎に自由記入形式により実施した。
3. 試験法の比較
 牛乳、クリーム及び脱脂粉乳について、米国及びEUにおける乳及び乳製品の試験法について情報を整理し、比較を行った。
4. 乳児用調整粉乳および液状ミルクの規格基準
 米国、EU、オーストラリア/ニュージーランドにおける乳児用調整粉乳および液状ミルクに関する規格基準について、情報収集を行った。
結果と考察
乳等省令の試験法の妥当性を検討するために、平成27年度は、米国、欧州連合(EU)、オーストラリア及びニュージーランドにおける乳及び乳製品の試験法に関して情報を収集し、乳等省令の試験法との比較を目的として、当該国、地域における関連試験法を規定する法令の検索を行った。米国では、わが国に比べ乳および乳製品の品目がより細かく分類されており、それぞれの品目について成分規格およびそれに対応する試験法が規定されていた。CFR Title21 CHAPTER I SUBCHAPTER B—FOOD FOR HUMAN CONSUMPTIONでは、それぞれの品目ごとに乳および乳製品の成分規格が定められていた。試験法としては、それぞれAOAC International が公表しているOMA法が記載されていた。EUでは、乳および乳製品の成分規格と試験法はCouncil Regulation (EC) No 1255/1999 as regards methods for the analysis and quality evaluation of milk and milk productsで規定されている。また、乳および乳製品の微生物基準については、かつてCouncil Directive 92/46/EECで規定されていたが、2006年から施行された衛生パッケージで代替された。オーストラリアとニュージーランドはFood Standards Australia New Zealandのもと、2000年に食品規格基準法典(The Australia New Zealand Food Standards Code)を制定した。アンケート結果から、乳等省令の試験法は使用器具・試薬等の表現の古さ、現在の機器分析などの状況に十分対応していない点が明らかになった。また、無脂乳固形分の定量法に関する係数の妥当性や微生物学的試験法における細菌数の測定法などについて、試験法制定当時と比べて現在の乳質が大きく変化しており、係数の妥当性などを検討する必要があると考えられた。
結論
わが国の乳等省令では、乳および乳製品の成分規格として微生物基準が試験法を含めて規定されている。米国およびEUでは成分規格としての微生物基準は設けられておらず、オーストラリアおよびニュージーランドにおいても、食品の成分規格とは別に、残留農薬や食品添加物と並んで微生物基準に関する規定が定められていた。これらの国では、成分規格はあくまで食品のスペックを規定するものであり、病原微生物はハザードとして取り扱われていると考えられる。乳及び乳製品の成分規格に関する試験法は、OMA法やISO法などの国際的に認められた試験法を参照法とし、妥当性が確認された最新の方法が公的試験法として随時採用されていることから、我が国の乳及び乳製品の試験法についても国際的な参照法を基盤とした試験法の検討が必要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2016-07-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201522027Z