労働者の健康状態及び産業保健活動が労働生産性に及ぼす影響に関する研究

文献情報

文献番号
201521006A
報告書区分
総括
研究課題名
労働者の健康状態及び産業保健活動が労働生産性に及ぼす影響に関する研究
課題番号
H25-労働-一般-007
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
森 晃爾(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 荒木田 美香子(国際医療福祉大学 小田原保健医療学部)
  • 林田 賢史(産業医科大学 産業医科大学病院)
  • 柴田 喜幸(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 梶木 繁之(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 永田 智久(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 永田 昌子(産業医科大学 産業医実務研修センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
労働人口の高齢化が進むわが国では、労働者の健康への投資は、企業や社会が活力を維持するために重要な取組みと考えられるが、厳しい競争環境にある日本企業の状況を考えると、法令を超えた積極的な産業保健活動の展開を促すためには、労働者の生産性の向上への貢献など、経営上の視点での効果が示されることが不可欠である。しかし、これまで欧米に比べてその取組みは遅れており、我が国の経営環境や雇用形態等の諸条件における知見は、ほとんど得られていない。今後、我が国における労働者の健康状態や事業場等における産業保健活動が労働生産性に及ぼす影響について検証することが必要であり、その第一歩として、生産性をアウトカムとした産業保健研究の方法や課題等について、3年間の研究を行った。
研究方法
開発中の日本版presenteeism尺度を用いて業務の特徴による影響を考慮した評価方法を検討した。
健康問題による生産性低下の評価指標として一般的に用いられるabsenteeismとpresenteeismについて、産業保健活動にかかる費用との関係を多施設共同研究のデータを用いて検討した。 
製造業1社および小売業1社において、経営上および産業保健上懸念される健康課題について、クラスターランダム化比較試験のデザインによる介入プログラムを実施し、その評価を行った。
研究過程で得られた成果をもとに、産業保健活動の生産性への貢献を意識したプランニングの在り方を検討し、ガイドを作成した。
生産性への貢献を目指す効果的な産業保健のあり方について、企業の統括産業医で構成する研究協力グループを活用して、企業経営に対する産業保健の貢献のアウトカムを企業の視点と労働者の視点で明確にし、それらを向上させるための方策を検討した。
結果と考察
産業保健活動の展開には、活動全般の計画・実施・評価・改善と特定の介入プログラムの企画・実施・評価・改善の二つの視点がある。生産性の向上に貢献する産業保健活動を考えた場合、後者の介入プログラムについても効果評価を健康面の指標だけでなく、生産性の指標を用いることが必要になる。また、企業にどのような労働生産性に影響する健康課題があるか、またはどのような産業保健プログラムが労働生産性の向上に貢献できるかといった視点でニーズ分析および介入プログラムの企画が必要となる。そこで、労働生産性を向上させる産業保健介入プログラムの在り方を検討するために、介入プログラムの生産性や経済面での効果を評価する方法とその限界および課題を整理したうえで、2つのクラスターランダム化比較試験を企画・実施した。いずれも介入も、評価期間が短いこともあり労働生産性への有意な効果が見いだせなかったが、ニーズ分析から評価までの過程を詳細に記述した。
企業の統括産業医で構成する研究協力グループを構成し、研究結果を適宜説明したうえで、3年間にわたって定期的に議論を行った。その結果、労働者の健康と関連して測定できる生産性は、健康状態によって損失した機会損失に限られることになり、貢献の範囲を狭小化することが指摘され、併せて労働者の長期の生産性の維持を持続可能性(Sustainability)として、労働者および企業全体の生産性と持続可能性に貢献できる産業保健を目指した活動を企業経営に対する産業保健の貢献として位置付けた。
結論
「産業保健活動の生産性への貢献を意識したプランニングのためのガイド」を作成した。
「企業経営に貢献できる産業保健に向けた提言」を取りまとめた。

公開日・更新日

公開日
2016-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-06-01
更新日
-

文献情報

文献番号
201521006B
報告書区分
総合
研究課題名
労働者の健康状態及び産業保健活動が労働生産性に及ぼす影響に関する研究
課題番号
H25-労働-一般-007
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
森 晃爾(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 荒木田 美香子(国際医療福祉大学 小田原保健医療学部)
  • 林田 賢史(産業医科大学 産業医大学病院)
  • 柴田 喜幸(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 梶木 繁之(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 永田 智久(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 永田 昌子(産業医科大学 産業医実務研修センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
労働人口の高齢化が進むわが国では、労働者の健康への投資は、企業や社会が活力を維持するために重要な取組みと考えられるが、厳しい競争環境にある日本企業の状況を考えると、法令を超えた積極的な産業保健活動の展開を促すためには、労働者の生産性の向上への貢献など、経営上の視点での効果が示されることが不可欠である。しかし、これまで欧米に比べてその取組みは遅れており、我が国の経営環境や雇用形態等の諸条件における知見は、ほとんど得られていない。今後、我が国における労働者の健康状態や事業場等における産業保健活動が労働生産性に及ぼす影響について検証することが必要であり、その第一歩として、生産性をアウトカムとした産業保健研究の方法や課題等について、3年間の研究を行った。
研究方法
本研究では、目的を達成するために、以下の事項について調査・検討する。
1.生産性の概念、そのうち労働者の健康と直接および間接的に関連する範囲、さらに実務場面で定量的に測定可能な範囲の明確化(生産性の概念、範囲、測定可能性)
労働者の健康状態が労働生産性に及ぼす影響の検証
2.疾病別の測定可能な生産性に及ぼす影響の明確化と社会制度において、疾病や健康問題による生産性低下等による損失における、労働者、企業、社会との負担関係の明確化(生産性低下等による損失の分担)
産業保健活動が労働生産性に及ぼす影響の検証
3.疾病や健康状態による生産性低下を評価する指標について、定量可能な指標および定性的な指標の明確化(日本版プレゼンティーイズムスケールの開発)
4.既存の産業保健活動の時間および投入費用と生産性に及ぼす疾病群との関係の検討(産業保健活動の費用と疾病群との関係)
5.産業保健活動による生産性への貢献の評価方法の検討および生産性の測定を前提としたプランニングの方策の検討(産業保健活動の生産性への貢献を意識したプランニング)
6.産業保健活動による生産性への貢献の可能性の検討と効果的な産業保健活動のあり方についての検討(生産性への貢献を目指す効果的な産業保健活動のあり方)
結果と考察
+労働者の健康に伴う生産性測定の限界等について考察した。その中で、生産性の定義や測定の実施には多くの課題が存在していることが明らかになった。
+就業年齢において一般的に罹患し労働者や企業、医療保険者等に相応の経済的損失を発生させる疾患・病態について負担関係全体が把握できることを目標にシナリオを作成し、疾患の特徴による負担分担の違いを分析した。次に、私傷病欠勤・休職制度と企業規模との間の関連性について、文献上に記載された既存データを用いて分析したところ、雇用保障期間の長さ、上乗せの給付、企業規模と賃金保障の総額は、企業規模が大きいほど充実していることが明らかとなった。
+Absenteeismは、「新生物」「精神および行動の障害」「循環器系の疾患」の順であり、一方、presenteeismは、「腰痛または首の不調や肩こり」の訴えが多く、次いでアレルギー症状、頭痛であり、presenteesimの総額はabsenteeismの大よそ2.8倍であった。
+日本の就労環境に合ったpresenteeism尺度を開発し、その妥当性、信頼性を確認するとともに、労働者のpresenteeismの職場への影響の検討を行い、一定の信頼性と妥当性を持つ8項目からなる日本版presenteeismを完成させた。また、個人のpresenteeismおよびpresenteeism職場への影響の算出手順を提案した。
+産業保健の費用負担は主に法令に基づく活動(健康診断、メンタルヘルス対策)が対象であり、presenteeismによる損失額の多かった症状に特化した活動が実施されていなかった。
+二つの介入研究の経過当から、労働生産性を向上させる産業保健介入プログラムの在り方を考察し、「生産性への貢献を意識した産業保健活動のプランニングガイド」を作成した。
+「企業経営に対する産業保健の貢献のあり方」について6項目にわたる提言項目を作成した。
結論
生産性への貢献を目指す産業保健においては、生産性に関わる評価指標の限界を理解したうえで、健康指標と併せて使用することが必要である。
産業保健活動全体の優先順位を検討する際には、疾病や症状による損失についても着目する必要がある。
特定の課題を改善するための介入プログラムのプランニングにおいても、企業に存在するニーズ把握から計画、実施、評価に至る全家庭で、生産性への効果を併せて評価することが望ましい。
生産性への貢献を目指す産業保健を展開する際、短期的な生産性とともに長期の生産性の維持を持続可能性(Sustainability)として位置付け、幅広い側面から企業経営に対する産業保健の貢献を志向することが求められる。

公開日・更新日

公開日
2016-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

総合研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
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研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-06-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201521006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
作成されたガイドは、事業場での産業保健活動に有用と考えられる
臨床的観点からの成果
該当なし
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
永田智久, 小田上公法, 森晃爾
産業保健活動の経済評価研究で用いられている効果指標に関する文献調査
日本職業・災害医学会会誌 , 62 (6) , 370-375  (2014)
原著論文2
 Nagata T, Mori K, Aratake Y et al.
Establishment of reference cost in occupational health services and implementation of cost management in Japanese manufacturing companies.
Jounrnal of Occupational Health , 58 (4) , 323-332  (2016)

公開日・更新日

公開日
2016-06-01
更新日
2018-07-06

収支報告書

文献番号
201521006Z