バイオテロに使用される可能性のある病原体等の新規検出法の確立、及び細胞培養痘そうワクチンの有効性、安全性に関する研究

文献情報

文献番号
201517014A
報告書区分
総括
研究課題名
バイオテロに使用される可能性のある病原体等の新規検出法の確立、及び細胞培養痘そうワクチンの有効性、安全性に関する研究
課題番号
H26-新興行政-指定-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
西條 政幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 田島 茂(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 下島 昌幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 吉河 智城(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 森川 茂(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 梅山 隆(国立感染症研究所 真菌部)
  • 黒田 誠(国立感染症研究所病原体 ゲノム解析研究センター)
  • 中島 典子(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 永田 典代(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 小林 和夫(堺市衛生研究所)
  • 倉園 久生(帯広畜産大学 畜産衛生学研究部門 食品衛生学分野)
  • 鯉渕 智彦(東京大学医科学研究所 附属病院感染免疫内科)
  • 松本 哲哉(東京医科大学 微生物学講座 )
  • 金谷 泰宏(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
  • 横手 公幸(一般財団法人化学及血清療法研究所 国際戦略室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目標は以下の通りである.1)すでに確立されている特定病原体等に対する,遺伝子検出法,抗原抗体検出法,毒素迅速検出法等の迅速診断法の整備と標準化を行う.2)網羅的検出法として,網羅的ウイルス検出法,網羅的細菌検出法,超高速ゲノム解読法の確立する.3)電子顕微鏡を用いた検出法,免疫組織化学的検出法を確立する.4)地方衛生研究所や検査機関での対応と検査ネットワークの整備を行う.5)バイオテロ対応ホームページを整備し,関係機関への情報提供システムを確立する.備蓄されている細胞培養痘そうワクチンLC16m8の有効性,安全性,科学的基盤,製造における効率性,安定性,等を明らかにすることも目標である.
研究方法
【バイオテロに使用される可能性のある病原体等の新規検出法の確立等に関する研究】以下の項目[ウイルス性,細菌性,真菌性バイオテロ関連病原体の検出方法の開発と評価,超高速病原体ゲノム解読システムの構築と包括的な核酸迅速診断法の確立と開発,組織切片上で病原体遺伝子核酸を検出するin situ hybridization(ISH)法の評価,電子顕微鏡を用いた病原体の迅速検出法の確立]について研究した.バイオテロ発生事象発生時に地衛研が適切に対応するための課題の抽出と改善を試みた.さらに各医療機関のバイオテロ対策を支援するための方策(医療機関向けにバイオテロ対策のガイドライン)を整備・改良した.
【細胞培養痘そうワクチン(LC16m8)の有効性,安全性に関する研究】次の項目[LC16m8曝露後投与効果の解析,LC16mO型ウイルス(MSP)の迅速検出システム開発,サル痘ウイルスのマウス感染実験系の基礎検討,細胞培養弱毒生痘そうワクチンの疫学的有効性及び安全性評価に関する研究および情報管理及び提供法の確立と維持に関する研究,痘そうワクチンLC16m8接種者における中和抗体持続に関する調査研究,痘そうワクチンLC16m8接種による痘瘡ウイルスに対する中和抗体誘導に関する研究]を研究した.
結果と考察
【バイオテロに使用される可能性のある病原体等の新規検出法の確立】
 6種類全てのlineageに分類されるウエストナイルウイルスに対応可能な遺伝子増幅系,LAMP法によるコクシジオイデス属,ヒストプラスマ属,クリプトコックス・ガッティ遺伝子の高感度検出系,炭疽菌の新規検出法を確立した.炭疽菌およびその類縁菌の系統的位置関係を推定するウェブアプリケーションGcoGSA-BAを開発した.GcoGSA-BAにより炭疽菌毒素遺伝子を検出することが可能となった.デング熱国内対策にも資すると考えられるデングウイルス遺伝型を図示化するツールを構築した.炭疽菌,野兎病菌,ブルセラ菌,ペスト菌,類鼻疽菌の迅速遺伝子検出系を開発した.増幅産物を短時間に識別する野外仕様検出系も開発し,さらにボツリヌス毒素,コレラ毒素等に対する免疫学的迅速同定法も確立した.組織切片上で病原体遺伝子核酸を検出する3種類in situゲノム検出法(ISH-AT法,View RNA法,RNAscope法)の病原体検出における有用性を比較評価した.GHSAG Wet-Lab Workshopに参加し,バイオテロ関連病原体の電子顕微鏡を用いた迅速検出法を確立・改良した.
【バイオテロ対策のためのネットワーク構築】
 医療機関向けバイオテロ対策のガイドラインガイドラインの総論部分を充実させた.病原体検出マニュアルの整備,標準作業手順書の作成,地衛研全国協議会感染症対策部会員の増員など課題であった.『バイオテロ対応ホームページ』に関して情報の妥当性・正確性を確認し,インターネット上で一般公開も検討すべきであると考えられた.
【細胞培養痘そうワクチンの有効性,安全性に関する研究】
 エクトロメリアウイルス(ECTV)を用いたマウスモデル系を確立した.ECTV暴露後のLC16m8,Lister株の投与による効果は確認されなかった.プラークサイズのやや大きいLC16mO型ウイルス(medium size plaque; MSP)を定量的に検出可能な PCR 法を開発した.MSP含有率0.01~1%まで検出できた.LC16m8を1回接種された健康成人において抗体陽性率は時間が経過すると低下傾向が認められた.プロテオミック解析法を用いて,LC16m8接種30日後と接種1年後を比較すると,有意に低下した抗原があった.LC16m8追加接種の要否に関する議論も必要であると考えられた.
結論
バイオテロ関連病原体・毒素の迅速診断システム開発(検出法の開発を含む)を継続して行った.また,細胞培養高度弱毒痘瘡ワクチンLC16m8の有効性,安全性,品質管理検査法,等に関する研究を推進した.

公開日・更新日

公開日
2016-06-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-06-28
更新日
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収支報告書

文献番号
201517014Z