一類感染症の患者発生時に備えた治療・診断・感染管理等に関する研究

文献情報

文献番号
201517013A
報告書区分
総括
研究課題名
一類感染症の患者発生時に備えた治療・診断・感染管理等に関する研究
課題番号
H26-新興行政-指定-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 康幸(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 国際感染症センター 国際感染症対策室)
研究分担者(所属機関)
  • 西條 政幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 下島 昌幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部 第一室)
  • 黒須 一見(東京都保健医療公社荏原病院 感染対策室)
  • 冨尾 淳(東京大学 大学院医学系研究科 公衆衛生学)
  • 足立 拓也(東京都保健医療公社豊島病院 感染症内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
3,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
西アフリカにおけるエボラ出血熱(EVD)の流行は, 2015年に入り終息に向かっているが,依然として疑似症患者が国内で発生するリスクがあり,特定及び第一種感染症指定医療機関をワークショップの開催などを通じて支援し,国の厚生行政に貢献することを目的とした.
研究方法
全国の特定・第一種感染症指定医療機関においてワークショップを開催し,患者に医療を提供する際の諸課題について検討を行うこととした.
 EVD疑似症患者を収容した感染症指定医療機関を対象とし,各施設の病院管理者,感染症診療従事者,事務担当者に事前に質問票を送った後にインタビューを行った.特定,第一種,第二種感染症指定医療機関の院内感染対策担当者を対象に自記式調査票を用いた横断研究を行った.この他に国内外における会議への出席や文献検討を通じてウイルス性出血熱の治療, 欧米におけるEVD患者の検査体制, EVD検査機器について調査した.
結果と考察
長崎大学病院,りんくう総合医療センター,成田赤十字病院,がん・感染症センター都立駒込病院においてワークショップを開催した(計59施設から143名参加).重症患者の治療,職員の曝露,患者の死亡について課題を研究班が提示し、望ましい対応手順を確認した.ワークショップを行った4施設では,おおむね診療要員は確保されているが,複数の患者がいる場合や,患者の血液や体液に曝露された高リスク接触者が発生した場合などには,単施設で対応するのは限界があると思われた.より具体的な状況のシミュレーションが重要である.納体袋の選定基準や納棺方法についての指針はないが,課題が明確となった.
 EVD疑似症例に関して,特定および第一種感染症指定医療機関において組織的な対応が実施され大きな混乱はなかった.事前の計画や訓練の実施が有効であったと考えられる.いずれも入院期間は短く,他部門への診療や病院の収益への影響は軽微であったと考えられる.また,厚労省結核感染症課が指定医療機関に担当官を送るなどの連携も観察された.
共通の課題として,行政機関と医療機関との連携手順への不慣れ,患者の外部とのコミュニケーション手段の確保,診療する医療従事者の健康管理,廃棄物処理指針が不明瞭,旅行者のマラリア予防の不徹底などが指摘できる.また,検体の国立感染症研究所への搬送は大きな混乱はなく実施されたが,福岡県と大阪府の事例では,検体搬送から初回PCR結果報告までに10時間以上を要し,東京近郊との乖離が明らかになった.国内に複数の検査機関を設置することについても議論していく必要があるだろう.
 第一種感染症指定医療機関のほとんどの施設で,厚労省,国立感染症研究所,国立国際医療研究センター,本研究班による資料を参考にVHF疑い患者の対応に関するマニュアル,ガイドラインが整備されていたが,臨床上の課題,診断検査や症例の管理や治療,遺体の取り扱いといった実際の治療管理に関わる事項のカバーは相対的に低く,小児や妊婦,外国人などの難しい症例に関する事項をカバーしている施設は1割に満たなかった.感染症指定医療機関では,診療やケアを担当する人材が少ないことが課題となっている. 26施設には感染症専門医が0~1名しかいないため,感染症を専門としない医師の応援を前提とせざるを得ない.
 ファビピラビルは一類感染症病原体の出血熱ウイルス全てに対してin vitroにおける増殖抑制効果を示した.国内で開発されたファビピラビルは,EVDに限らず,他のVHF患者が発生した場合にも使用できる国内体制の構築を図る必要がある.米国ではエボラ治療センター47病院の87%が隔離病室内での検査等が可能であった.94%が臨床用実験室を持ち,うち半数がBSL3実験室であった.72%がBSL3実験室を持つ地方健康局と連携していた.欧米の医療機関は日本の医療機関よりもBSL3実験室へのアクセスが良いと判断される.医療機関検査室のバイオセーフティについて更なる検討が必要である.
結論
西アフリカにおけるEVD流行に対応するため,医療従事者,行政関係者を対象としたワークショップ等を開催し,特定及び第一種感染症指定医療機関の支援を行った.また,EVDに対する最新の抗ウイルス療法や欧米における医療,国内で発生したEVD疑似症患者の対応や感染症指定医療機関における準備状況の調査も併せて行った.国際化時代における日本国民の健康危機管理のために寄与するものと期待される.

公開日・更新日

公開日
2016-06-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-06-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201517013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,000,000円
(2)補助金確定額
4,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 892,164円
人件費・謝金 218,400円
旅費 1,538,856円
その他 427,580円
間接経費 923,000円
合計 4,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
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