国際化・IT化に対応した視覚障害者の代読・代筆支援マニュアルの作成

文献情報

文献番号
201516048A
報告書区分
総括
研究課題名
国際化・IT化に対応した視覚障害者の代読・代筆支援マニュアルの作成
研究課題名(英字)
-
課題番号
H27-感覚-一般-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
木内 良明(広島大学 大学院医歯薬保健学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 浩彰(広島大学病院)
  • 牟田口 辰己 (広島大学大学院教育学研究科)
  • 氏間 和仁(広島大学大学院教育学研究科)
  • 田中 武志(広島大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
5,380,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
視覚障害者が必要とする代読・代筆の支援について、都道府県等の研修会等で活用するための全国共通のマニュアルとなるべき項目を明らかにした標準カリキュラムを作成することを目的とする。
研究方法
短期間での研究であるため広島市の心身障害者福祉センターで同行援護従事者養成に用いている「同行援護従業者養成研修テキスト」(中央法規出版)(以下、現行テキスト)の代筆・代読部分をベースにすることにした。

医療従事者、研究者、当事者団体、行政関係者(広島県、広島市)からなるWG(総勢20名程度)を組織した。そのメンバーで現行テキストの問題点、改善が必要な点を明らかにするための情報収集をい、改善が必要と思われる部分の記載を追加した。

iPhone, iPadをを応用した読み取り、翻訳技術を開発し、その取扱い方法をマニュアル化した。マニュアルの評価も行った。

個人情報保護の説明を追加した。

「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に基づいた申請を行った。
結果と考察
「障害者の権利に関する条約」についての記載を詳しく行った。
失明の時期(先天盲と後天盲)の違いによる特徴と配慮の記載を行った。             
原稿マニュアルには具体的な状況の代読例がないために具体例を追加した。
食堂での食事、お弁当の説明、料理の説明、トイレでの状況説明、グラフの説明、ポスターの説明、売店での買い物、およびカタログによるショッピング場面が追加された。
コンピュータの利用・IT化について問題点と現状での対応方法について説明した。
ロービジョン技術の応用が有用であることを案内した。
スマートフォン、タブレット端末を利用した代読に有用なアプリを選択し、その使用方法のマニュアルを作成した。またそのマニュアルの有用性を検討した。

実際の同行援護従事者養成研修ではまだこのテキスト案を使用してない。実際の研修での有用性問題点が明らかでない。また、必要とも追われるポイントをすべて網羅した。詳しすぎる点、他のカリキュラムと重なる点が出てくるかもしれない。今後、研修の場での経験を基に修正する必要がある。
結論
当初掲げたこのテキストをさらにブラッシュアップすることに加えて、1.多言語に対応できるようにすること、2.スマートフォン、タブレット端末などの最新のIT技術の応用できるようにすること、3.個人情報の保護の徹底、を盛り込んだ代読・代筆の支援のための全国共通の新たな標準カリキュラムを作成する。という目的は達成した。

公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201516048C

成果

専門的・学術的観点からの成果
スマートフォン、タブレット端末などの最新のIT技術の応用を紹介した。その技術を用いて多言語に対応できることも示した。スマートフォン、タブレット端末は広く普及しているものであり、使用するアプリも無料、もしくは低価格であり、その使用方法をマスターすることで生活がより便利になる。その技術を取得するためのカリキュラムを作成し、その有効性を視覚障がい者に指導する立場、指導される立場の両方から評価し、良好な成績が得られた。
臨床的観点からの成果
総論的な記載だけでなく、具体的な事例を挙げた。すべての生活の場面を挙げることは不可能であるが、生活に重要な食事、買い物、トイレの場面を挿入した。食事と買い物は複数の場面を設定している。研修者はこれを参考に状況を説明する訓練ができるようになった。視覚障がい者の立場からの意見も取り入れた。晴眼者が気づかない点も多く、視覚障がいを持つ利用者に満足度高くサービスを提供できると予想される。先天盲の方と後天盲の方の違いを解説した。
ガイドライン等の開発
本研究の目的は同行援護従業者養成研修テキストを改定することにあった。ガイドラインに取り上げられるような内容ではない。しかし、テキストとして採用されれば、全国で使用されるために、ガイドラインのようなものになる。
2017年夏を目途に新しいテキストとして採用される予定である。原稿は送付済みである。
その他行政的観点からの成果
医師、盲学校教員、同行援護従業者の研修を行っている施設の方、および視覚に障がいを持つ方など様々な立場の方からご意見をいただけた。その内容は本文や例文に反映されている。また、他県のロービジョン関係者からも意見を聞くことができた。全国共通の標準マニュアルとして十分耐えうる内容になっている。スマートフォンなどITの技術を応用することで国際化にも対応できる可能性を示した。2020年のパラリンピックの時にも本システムは活躍できる。
その他のインパクト
本研究の目的は視覚障害者が必要とする代読・代筆の支援について、都道府県等の研修会等で活用するための全国共通のマニュアルとなるべき項目を明らかにした標準カリキュラムを作成することにある。マスコミで宣伝するようなものではない。今後必要なのは研修施設での試用と、それを基にした内容のブラッシュアップである。

発表件数

原著論文(和文)
13件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
27件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
木村浩彰、永冨彰仁、牛尾会
内部障害リハビリにおける骨格筋電気刺激
腎と透析 , 80 (2) , 285-289  (2016)
原著論文2
木村浩彰
重複障害のリハビリテーション3.脳・神経と骨・関節
重複障害のリハビリテーション , 63-68  (2015)
原著論文3
山根直哉、窪優子、木村浩彰
 iPadを使うことによりコミュニケーションおよびソーシャルネットワークが可能になった1例
国立大学リハビリテーション療法士学術大会誌 , 37 , 100-104  (2015)
原著論文4
柳田直美、木村浩彰
発達性読み書き障害児に対する視覚認知機能を必要とした課題の試み
日本作業療法学会抄録集 , 47 , 778-778  (2013)
原著論文5
Mikami Y, Fukuhara K, Kawae T,et al.
The effect of anti-gravity treadmill training for prosthetic rehabilitation of a case with below-knee amputation
Prosthet Orthot Int , 39 (6) , 502-506  (2015)
原著論文6
Yuichi Nishikawa, Junya Aizawa, Hiroaki Kimura
Immediate effect of passive and active stretching on hamstrings flexibility: a single-blinded randomized control trial
J. Phys. Ther. Sci , 27 , 3167-3170  (2015)
原著論文7
田中武志、津久間秀彦、池内実
視覚障がい者Web Accessibilityに配慮した病院Webpage標準仕様の必要性
医療情報学  , 36 (1) , 25-31  (2016)
原著論文8
田中武志、氏間和仁、藤田利恵
視覚障がい者のWeb Accessibilityに配慮した病院標準Webpageの試作
医療情報学  , 35 (Suppl) , 1244-1247  (2015)
原著論文9
津久間秀彦、島川龍載、渡邉春美、他
電子診療看護記録の信頼性向上のための真正性の問題点に関する予備的調査~6W1Hモデルに基づく課題整理方法の検討~
医療情報学  , 35 (Suppl) , 814-817  (2015)
原著論文10
田中武志、他4名
障がい者Web Accessibilityに配慮してGrid-Layoutを採用した 医療機関用Webpageの試作
医療情報学  , 37 (Suppl) , 1225-1229  (2017)
原著論文11
門脇 弘樹・牟田口辰己
白杖歩行の偏軌に歩行速度がもたらす影響
視覚リハビリテーション研究 , 5 (2) , 53-62  (2016)
原著論文12
氏間和仁 他7名
弱視の高校生を対象にした広大連携プログラム
弱視教育 , 56 (5) , 20-29  (2019)
原著論文13
落石美菜子・氏間和仁
弱視者における視覚補助具の使用について
弱視教育 , 53 (1) , 1-9  (2015)
原著論文14
氏間和仁
視覚特別支援学校における3年間のタブレット端末の活用状況
弱視教育 , 53 (3) , 6-16  (2015)
原著論文15
Sakamoto E, Ishida W, Sumi T,et al
Evaluation of offset of conjunctival hyperemia induced by a Rho-kinase inhibitor; 0.4% Ripasudil ophthalmic solution clinical trial.
Sci Rep. , 9 (1) , 3755-  (2019)
10.1038/s41598-019-40255-9.
原著論文16
Nagasato D, Mitamura Y, Semba K,et al.
Correlation between optic nerve head circulation and visual function before and after anti-VEGF therapy for central retinal vein occlusion: prospective, interventional case series.
BMC Ophthalmol , 16 , 36-  (2016)
10.1186/s12886-016-0211-7.
原著論文17
Nakamura-Shibasaki M, Latief MA, Ko JA,et al.
Effects of topical adrenergic agents on prostaglandin E2-induced aqueous flare and intraocular pressure elevation in pigmented rabbits.
Jpn J Ophthalmol , 60 (2) , 95-102  (2016)
10.1007/s10384-016-0428-2.
原著論文18
Hirasawa K, Nakakura S, Nakao Y,et al
Changes in Corneal Biomechanics and Intraocular Pressure Following Cataract Surgery. 
Am J Ophthalmol. , 195 (11) , 26-35  (2018)
10.1016/j.ajo.2018.07.025.
原著論文19
氏間和仁
デジタル・リーディングにおける表示形式が読速度に及ぼす影響-視野狭窄シミュレーションの影響について-
日本ロービジョン学会誌 , 16 (1) , 24-32  (2017)
原著論文20
29. Nakao Y, Kiuchi Y, Okimoto S.
28. A Comparison of the Corrected Intraocular Pressure Obtained by the Corvis ST and Reichert 7CR Tonometers in Glaucoma Patients.
30. PLoS One , 12 (1) , e0170206-  (2017)
10.1371/journal.pone.0170206. eCollection 2017

公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
2020-06-08

収支報告書

文献番号
201516048Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,994,000円
(2)補助金確定額
6,994,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,950,000円
人件費・謝金 600,000円
旅費 1,200,000円
その他 630,000円
間接経費 1,614,000円
合計 6,994,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
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