地域のストレングスを活かした精神保健医療改革プロセスの明確化に関する研究

文献情報

文献番号
201516033A
報告書区分
総括
研究課題名
地域のストレングスを活かした精神保健医療改革プロセスの明確化に関する研究
課題番号
H27-精神-指定-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
竹島 正(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神保健計画研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 立森 久照(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 )
  • 山之内 芳雄(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
  • 岩谷 力(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 河崎 建人(全国精神医療審査会連絡協議会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
9,220,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域のストレングスを活かした地域精神保健医療の開発プロセスを明らかにすることを目的とする。また,自立支援医療の適正な給付と精神科医療施設における精神障害者の人権擁護のあり方を検討することを目的とする。
研究方法
(1)人口万対病床数16.5以下の神奈川エリアを対象に地域ごとの課題の可視化と情報共有のプロセスの検討を行った。またunmet needs(対処されていないニーズ)を知るために人口10万対病床数と精神保健福祉法第23条による通報,措置入院の関連を分析した。さらに各都道府県における精神保健医療の改革に活用可能な関係者間の対話の場の調査を行った。(2)精神保健福祉資料(630調査)を二次的に分析した。(3)患者調査の目的外集計を用いて近年の精神病床の入院患者のトレンドを分析した。(4)育成医療から更生医療に切り替わった際,利用者の自己負担が急増する事例の有無を明らかにするため,全国のこども病院を対象とした調査を実施した。(5)全国67の精神医療審査会事務局に対して平成26年度の審査会活動の実績,過去1年間の審査過程で問題となった事例を報告してもらい内容を分析した。(6)精神保健統計の基盤になるICD-11「精神および行動の障害」の作成状況の情報を収集した。
結果と考察
(1)精神保健医療関係者が精神医療マップ等による情報を共有して地域のストレングスを活かした地域精神保健医療の開発につなげていくプロセスの構築は十分可能と考えられた。今後はこのプロセスが他の地域にも適用できることを検証すること,また神奈川エリアにおいては現在の精神保健医療の提供が地域のニーズに適合しているかどうかを検証する必要がある。都道府県別の人口万対病床数と精神保健福祉法第23条による人口10万対通報件数,人口10万対措置入院件数には,それぞれ有意な相関はなかった。全国の都道府県・政令指定都市の多数に存在する公的な対話の場は地方精神保健福祉審議会であって,精神保健医療の資源および機能の配置のわかるマップ等は対話を活性化するために必要とされていることが明らかになった。(2)平均退院率は'13年時点で数値目標とはおよそ4ポイントの開きが,退院率はおよそ5ポイントの隔たりがあった。統合失調症の在院患者数は一貫して減少傾向にあるが, 目標値とは2万人弱の開きがあった。認知症等の在院患者数は減少傾向にある地域もあれば増加傾向にある地域もあった。'13年時点での数値を改革ビジョンの数値目標と比べると達成は困難であると考えられた。(3)統合失調症では60歳未満では人口10万当たりの入院率が平成8年~23年までの15年間で年々低下していた。退院者の在院期間分布では入院期間は年々短縮しており,特に3か月未満などの短期での退院が増えていた。医療計画における精神病床の算定式を検討する際に,3か月・6か月・1年時点での患者の残存率に基づいた検討が求められる。(4)聞き取りによる予備調査の結果,18歳以降の自己負担額が1万円を越えた事例が確認された。当該事例は平成27年1月以降の難病医療費助成制度の対象難病であった。該当者が難病医療費助成制度,各都道府県の重度心身障害者医療費助成制度によって最終的な自己負担額は十分抑制されていることはあり得ることで,特に前者の関連で平成27年を境に状況が大きく変わった可能性も考えられた。(5)平成27年末現在,全国67の審査会に211の合議体があり1,369人の委員が任命されていた。平成26年度は全国で1,773回の合議体が開催され,267,929件(1回平均151.1件)の書類審査がなされていた。退院支援委員会は36の審査会から1,566件(1審査会平均43.5件)の審査報告があった。退院請求は3,432件が受理され,2,501件が審査され,現状継続2,308件(92.3%),入院形式変更112件(4.5%),退院勧告21件(0.8%),その他7件,審査未了53件であった。処遇改善請求は500件が受理され,342件が審査,16件(4.7%)に改善勧告がなされた。事例調査は23例の報告があり,従来からの事例に加えて,平成25年の精神保健福祉法改正によって生じたと思われる事例が見受けられた。(6)疾病負荷の軽減を目指す臨床的有益性に焦点を置いてICD-10の改訂作業が行われている。
結論
地域のストレングスを活かした地域精神保健医療の開発を精神医療マップ等をもとに展開する可能性があること,それに精神保健福祉審議会の活用の可能性があることを示した。630調査のモニタリング,平成8-23年の患者調査の動向から,近年の精神入院医療におけるトレンドを明らかにした。自立支援医療,精神医療審査会活動のモニタリングは今後も継続される必要がある。

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

その他
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201516033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,840,000円
(2)補助金確定額
10,840,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,087,465円
人件費・謝金 3,078,159円
旅費 1,640,774円
その他 2,413,602円
間接経費 1,620,000円
合計 10,840,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
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