発達障害児とその家族に対する地域特性に応じた継続的な支援の実施と評価

文献情報

文献番号
201516006A
報告書区分
総括
研究課題名
発達障害児とその家族に対する地域特性に応じた継続的な支援の実施と評価
課題番号
H25-身体・知的-一般-008
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
本田 秀夫(信州大学 医学部附属病院子どものこころ診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 篠山 大明(信州大学 医学部 精神医学教室)
  • 清水 康夫(横浜市総合リハビリテーションセンター)
  • 大澤 多美子(浅田病院)
  • 佐竹 宏之(福岡市立東部療育センター)
  • 高橋 脩(豊田市福祉事業団)
  • 大庭 健一(宮崎市総合発達支援センター)
  • 高橋 和俊(おしま地域療育センター)
  • 原田 謙(長野県立こころの医療センター駒ヶ根)
  • 関 正樹(大湫病院)
  • 山下 洋(九州大学病院)
  • 米山 明(心身障障害児総合医療療育センター)
  • 神尾 陽子(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健研究部)
  • 内山 登紀夫(福島大学 人間発達文化学類)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
8,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は,特性の異なるいくつかの地方自治体を選び,3年間でそれぞれの地域における発達障害の支援ニーズの実態の把握を行うとともに,地域の特性に応じた発達障害の支援システムの現状を調査し,具体的な地域支援のあり方についてのモデルを示すことを目的として行われた。また,地域特性による相違点と共通点の両者に配慮した標準モデルを呈示するための評価指標についても検討した。
研究方法
(1)地域特性に関する調査
 2年目に引き続き,全国の自治体を「政令指定都市」「中核市・特例市・特別区」「小規模市(人口が概ね10万以下)」「小規模町村」の4群に分け,地域の特性に応じた発達障害の支援システムの横断的比較検討を行い,地域特性による相違点と共通点について検討した。

(2)発達障害の支援ニーズに関する調査
 初年度は,平成25年度の小学1年生および小学6年生における発達障害の累積発生率と有病率を,発達障害全体および主たる発達障害の種別に調査した。さらに地域の学校教師が発達障害を疑っているが診断にまで至っていないケースまで含めた支援ニーズの実態をも調査した。調査は共通のフォーマットをそれぞれの地域の事情に合わせてアレンジして作成したアンケートを小学校,特別支援学校等に送付して記入を依頼した。また,発達障害の診療を行っている医療機関に依頼し,該当年齢で発達障害と診断した児について,診療録に基づき連結可能匿名化されたデータベースを作成し,集計を行った。2年目,3年目(今年度)は,初年度と同じコホートにおける発達障害の発生および有病の継時的変化の調査と,平成26年度,27年度の小学1年生の調査を,初年度と同じ研究デザインで行った。

(3)標準的な評価指標に関する研究
 2年目から開始していたBISCUITのデータ収集を終え,信頼性・妥当性を求めた。さらに,複数地域を対象に,地域の代表的な発達支援機関の支援内容に関してアンケート調査を行った。
結果と考察
(1)地域特性に関する調査では,「政令指定都市」「中核市・特例市・特例区」「小規模市」「小規模町村」の4グループそれぞれの地域特性,発達支援システム,人材育成に関して現状と課題を抽出し,それらをもとに行政への提言を作成した。

(2)発達障害の支援ニーズに関する調査では,初年度と同じコホート(平成25年度の小学1年生と小学6年生)における発達障害の発生および有病の継時的変化について,3年間の縦断調査を行った。また,実施可能な地域では,平成26年度,27年度の小学1年生の調査も同じ研究デザインで行った。多くの地域で,未診断例も含めた発達障害の支援ニーズは小学1年生で10%前後は存在すること,地域によっては就学前にその過半数が診断され早期診断を受けていることが示された。

(3)標準的な評価指標に関する研究では,米国で開発されたThe Baby and Infant Screen for
Children with aUtIsm Traits (BISCUIT)の日本語版の信頼性・妥当性を求めた。また,複数地域を対象に,地域の代表的な発達支援機関の支援内容に関してアンケート調査を行い,発達支援の実態と課題について検討した。多くの地域で発達障害に対応した支援の工夫がなされているものの,その内容はさまざまであること,標準的な評価は支援の現場に十分に活用されているとはいえないことが示唆された。
結論
 発達障害の支援ニーズは,地域特性によらずほとんどの地域で学校では生徒の1割前後に見られる。医療体制が整備されれば,その多くは就学前に診断可能であるが,診断時期が小学校入学後となるケースも存在するため,幼児期から学齢期にかけて幅広く対応できる支援体制が必要である。
 発達障害者支援法以降ある程度の標準的な支援体制が全国的に普及した現在,各地域の現場で何が達成されどのような地域固有の課題が残っているのかを明らかにすることが,次なる厚生労働行政の課題である。今年度は,地域特性に応じた発達障害の支援に関する提言を作成した。これをもとに,地域特性に応じた公的サービスが全国的に普及することが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2016-08-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2017-02-13
更新日
-

文献情報

文献番号
201516006B
報告書区分
総合
研究課題名
発達障害児とその家族に対する地域特性に応じた継続的な支援の実施と評価
課題番号
H25-身体・知的-一般-008
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
本田 秀夫(信州大学 医学部附属病院子どものこころ診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 篠山 大明(信州大学 医学部精神医学教室)
  • 清水 康夫(横浜市総合リハビリテーションセンター)
  • 大澤 多美子(浅田病院)
  • 佐竹 宏之(福岡市立東部療育センター)
  • 高橋 脩(豊田市福祉事業団)
  • 大庭 健一(宮崎市総合発達支援センター)
  • 高橋 和俊(おしま地域療育センター)
  • 原田 謙(長野県立こころの医療センター駒ヶ根)
  • 関 正樹(大湫病院)
  • 山下 洋(九州大学病院)
  • 米山 明(心身障害児総合医療療育センター)
  • 神尾 陽子(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健研究部)
  • 内山 登紀夫(福島大学 人間発達学類)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 発達障害の早期発見と早期支援の体制づくりは,各地域で具体的な取り組みが推進されている。しかし,今のところその進捗には地域較差がある。本研究は,特性の異なるいくつかの地方自治体を選び,3年間でそれぞれの地域における発達障害の支援ニーズの実態の把握を行うとともに,地域の特性に応じた発達障害の支援システムの現状を調査し,具体的な地域支援のあり方についてのモデルを示すことを目的として行われた。また,地域特性による相違点と共通点の両者に配慮した標準モデルを呈示するための評価指標についても検討した。
研究方法
(1)地域特性に関する調査
 基礎自治体で発達障害児支援に関わる担当部署を対象としたアンケート調査票を作成した。調査項目は,一般項目として人口,人口動態,産業構造,自治体の経済状態,住民の社会経済的地位の特性など,発達障害児の支援体制に関する項目として専門施設の有無と規模,専門家の有無,専門家養成の場とプログラムの有無,発達障害支援システムの特徴などを設定した。自治体の規模によって「政令指定都市」「中核市・特例市・特例区」「小規模市」「小規模町村」の4つのグループに分け,それぞれ地域特性,発達支援システム,人材育成に関して現状と課題について調査した。

(2)発達障害の支援ニーズに関する調査
 平成25年度の小学1年生および小学6年生における発達障害の累積発生率と有病率を,発達障害全体および主たる発達障害の種別に調査した。さらに地域の学校教師が発達障害を疑っているが診断にまで至っていないケースまで含めた支援ニーズの実態も調査した。調査は共通のフォーマットをそれぞれの地域の事情に合わせてアレンジして作成したアンケートによって行った。アンケートは対象となる地域の対象児が通っている可能性のある小学校,特別支援学校に記入を依頼し,各研究分担者が集計した。
 また,発達障害児の診療を行っている医療機関に依頼し,該当年齢で発達障害と診断した児について,診療録に基づき連結可能な匿名化されたデータベースを作成し,学年別,診断別および知能区分別に件数の集計を行った。複数の医療機関を受診している児童については,イニシャル,性別,生年月日によって照合し,重複を防いだ。
 2年目および3年目は,実施可能な地域では初年度と同じコホートにおける発達障害の発生および有病の継時的変化の調査と,平成26年度,27年度の小学1年生の調査を,初年度と同じ研究デザインで行った。

(3)標準的な評価指標に関する研究
 米国で開発されたThe Baby and Infant Screen for Children with aUtIsm Traits (BISCUIT) の日本語版を作成し,本邦での信頼性・妥当性を求めた。
 さらに,複数地域を対象に,地域の代表的な発達支援機関の支援内容に関してアンケート調査を行い,発達支援の実態と課題について検討した。
結果と考察
(1)地域特性に関する調査では,4グループそれぞれの現状と課題について整理し,3年間の成果をもとに行政への提言を作成した。

(2)発達障害の支援ニーズに関する調査では,多くの地域で未診断例も含めた発達障害の支援ニーズは小学1年生で少なくとも10%程度は存在すること,地域によっては就学前にその過半数が診断され早期支援を受けていること,同じ群を追跡すると小学校入学後も発達障害の発生および教師による把握は増加することが示された。

(3)標準的な評価指標に関する研究では,米国で開発されたBISCUITの日本語版が一定の信頼性・妥当性を示すことが明らかとなった。また,各地域の代表的な発達支援機関を対象としたアンケート調査では,多くの地域で発達障害に対応した支援の工夫がなされているものの,その内容はさまざまであること,標準的な評価は支援の現場に十分に活用されているとはいえないことが示唆された。
結論
 発達障害の支援ニーズは,地域特性によらずほとんどの地域で学校では生徒の1割前後に見られる。医療体制が整備されれば,その多くは就学前に診断可能であるが,診断時期が小学校入学後となるケースも存在するため,幼児期から学齢期にかけて幅広く対応できる支援体制が必要である。
 発達障害者支援法以降ある程度の標準的な支援体制が全国的に普及した現在,各地域の現場で何が達成されどのような地域固有の課題が残っているのかを明らかにすることが,次なる厚生労働行政の課題である。本研究で作成した地域特性に応じた発達障害の支援に関する提言をもとに,地域特性に応じた公的サービスが全国的に普及することが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2016-08-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201516006C

収支報告書

文献番号
201516006Z