文献情報
文献番号
201510002A
報告書区分
総括
研究課題名
周産期(産褥性)心筋症の、早期診断スクリーニング検査の確立と抗プロラクチン療法の有効性の検討を含む、診断・治療ガイドライン作成研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 千津子(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 周産期・婦人科部)
研究分担者(所属機関)
- 池田 智明(三重大学医学部 産科婦人科学教室 )
- 吉松 淳(国立循環器病研究センター 周産期・婦人科部)
- 北風 政史(国立循環器病研究センター 臨床研究部・心臓血管内科)
- 植田 初江(国立循環器病研究センター 臨床検査部・病理科)
- 岸本 一郎(国立循環器病研究センター 糖尿病・代謝内科)
- 秦 健一郎(国立成育医療研究センター 周産期病態研究部)
- 大谷 健太郎(国立循環器病研究センター 再生医療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
670,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動
研究分担者 石田 充代
明治大学部農学部生命科学科(平成27年4月1日~8月31日)→国立成育医療研究センター 周産期病態研究部(平成27年9月1日以降)
研究分担者交替
石田 充代(平成27年4月1日~8月31日)→秦 健一郎(平成27年9月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
周産期心筋症は主な母体死亡原因の一つであるにもかかわらず、疾患概念すら周知されていない。息切れ・浮腫などの心不全症状は健常妊産褥婦も訴える症状である上、多くの場合で心不全初診医が産科医や一般内科医となり、診断遅延傾向にある。一方、診断時心機能が予後と相関するため、早期診断による予後改善が見込まれる。本研究班は、2009年より全国規模の当該疾患研究を継続しており、患者の8割以上が危険因子(高齢、妊娠高血圧症候群、慢性高血圧症、子宮収縮抑制剤の使用、多胎妊娠)を有していることが判明した。そこで、本研究は危険因子を持つ周産期心筋症ハイリスク妊婦を対象にした心機能スクリーニング検査行い、早期診断法を確立し、産科医を含む関連各科の医療従事者が、簡便に診断できるガイドライン作成を目的とする。
研究方法
(1)ハイリスク妊婦における早期診断検査研究:周産期心筋症患者の8割が危険因子(高齢、妊娠高血圧症候群、慢性高血圧症、多胎、子宮収縮抑制剤の使用)を有している。そこで本研究は危険因子をもつ妊婦を対象に、心臓超音波検査、心不全マーカーである脳性ナトリウム利尿ペプチドなどの検査を行い、当該女性における適切なスクリーニング検査とその時期について、目標被検者数1000例、研究期間3年で検討を行う。本研究は平成22年より継続実施している全国多施設共同研究を基盤とし、早期診断スクリーニング検査確立のためのPREACHER II研究と題しUMIN-CTRに登録済である。
(2)診断ガイドラインの作成:息切れ、浮腫、動悸などの心不全症状は健常妊産褥婦も訴える症状と類似している。そのため、本人が症状を我慢したり医療従事者が妊娠による症状と判断したり周産期心筋症は全般に診断遅延傾向にある。そこで(1)の研究をもとに自他覚所見・危険因子・家族歴などをスコア化し、点数に応じてスクリーニング検査、心不全精査へと続く診断フローチャートを掲載し、普段心不全診療に不慣れな産科医や一般内科医でも簡便に心不全スクリーニングできるガイドライン作成を目標とする。また除外診断名であり臨床像が不鮮明な周産期心筋症を明確に定義し、医療従事者間で疾患概念を共有するため病理組織診断、MRIや心超音波画像診断、遺伝子検査など、多岐にわたる内容の診断ガイドラインを作成する。
(2)診断ガイドラインの作成:息切れ、浮腫、動悸などの心不全症状は健常妊産褥婦も訴える症状と類似している。そのため、本人が症状を我慢したり医療従事者が妊娠による症状と判断したり周産期心筋症は全般に診断遅延傾向にある。そこで(1)の研究をもとに自他覚所見・危険因子・家族歴などをスコア化し、点数に応じてスクリーニング検査、心不全精査へと続く診断フローチャートを掲載し、普段心不全診療に不慣れな産科医や一般内科医でも簡便に心不全スクリーニングできるガイドライン作成を目標とする。また除外診断名であり臨床像が不鮮明な周産期心筋症を明確に定義し、医療従事者間で疾患概念を共有するため病理組織診断、MRIや心超音波画像診断、遺伝子検査など、多岐にわたる内容の診断ガイドラインを作成する。
結果と考察
(1)ハイリスク妊婦における早期診断検査研究:平成26年度、倫理委員会の研究承認を得、研究を開始した。専用ホームページを作成し、データ収集→データクリーニング→データ共有システムを構築した。平成28年3月現在、国立循環器病研究センターをはじめとする全国12施設で研究開始され、既に100例ほどのエントリーを得ている。今後も協力施設を追加予定である。研究経過については、平成28年3月「第2回周産期心筋症ミーティング」にて報告した。
(2)診断ガイドラインの作成:平成26年~平成27年にかけて3回、診断ガイドライン作成ミーティングを開催。早期診断用フローチャート、病理診断や画像診断手引き、遺伝子検査まで網羅した診断ガイドラインの作成を目標としそのドラフトを作成した。病理組織研究の成果について学会発表を行うとともに、遺伝子研究については米独と共同研究を実施し、患者の15%に拡張型心筋症関連遺伝子変異を認めること、最大危険因子である妊娠高血圧症候群合併患者にはほとんど同遺伝子変異を認めないことを平成28年1月New England Journal of Medicineに論文報告した。
未曾有の少子化が進む中安心安全な妊娠出産を実現する医療は非常に重要である。周産期心筋症は母体間接死亡原因の上位疾患であるが、息切れ、浮腫、体重増加といった心不全症状が、健常妊産褥婦も訴える症状であるため、病的かどうかの判断が付きにくく、診断遅延傾向にある。そこで危険因子を有する女性を対象に早期診断法を開発する多施設共同研究を開始し、当初の計画通りに進行している。早期診断法を含む診断ガイドラインの作成は世界初であり実現すれば当該疾患の予後向上につながると考える。
(2)診断ガイドラインの作成:平成26年~平成27年にかけて3回、診断ガイドライン作成ミーティングを開催。早期診断用フローチャート、病理診断や画像診断手引き、遺伝子検査まで網羅した診断ガイドラインの作成を目標としそのドラフトを作成した。病理組織研究の成果について学会発表を行うとともに、遺伝子研究については米独と共同研究を実施し、患者の15%に拡張型心筋症関連遺伝子変異を認めること、最大危険因子である妊娠高血圧症候群合併患者にはほとんど同遺伝子変異を認めないことを平成28年1月New England Journal of Medicineに論文報告した。
未曾有の少子化が進む中安心安全な妊娠出産を実現する医療は非常に重要である。周産期心筋症は母体間接死亡原因の上位疾患であるが、息切れ、浮腫、体重増加といった心不全症状が、健常妊産褥婦も訴える症状であるため、病的かどうかの判断が付きにくく、診断遅延傾向にある。そこで危険因子を有する女性を対象に早期診断法を開発する多施設共同研究を開始し、当初の計画通りに進行している。早期診断法を含む診断ガイドラインの作成は世界初であり実現すれば当該疾患の予後向上につながると考える。
結論
本研究は、当該疾患の診断遅延をなくすため、循環器医のみならず、産科医や一般開業医が簡便に妊産褥婦の心不全・心筋症を診断するための診断ガイドライン作成を目的とした。妊娠高血圧症候群などの危険因子を持つ患者は、全体の7-8割を占めるため、同患者での早期診断が可能になる意義は大きい。また、早期診断法を含む診断ガイドラインの作成により、疾患概念を画一化し、臨床診療の現場や疾患関連研究における学際的体制の構築が進む。何より、当該疾患の予後向上の成果が期待される。
今後関連学会(日本産婦人科学会、日本循環器学会)と連携の上、現在のドラフトをもとに、診断ガイドラインを完成、学会承認を得る。
今後関連学会(日本産婦人科学会、日本循環器学会)と連携の上、現在のドラフトをもとに、診断ガイドラインを完成、学会承認を得る。
公開日・更新日
公開日
2016-07-19
更新日
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