わが国におけるがんの予防と検診の新たなあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201507026A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国におけるがんの予防と検診の新たなあり方に関する研究
課題番号
H26-がん政策-指定-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
津金 昌一郎(国立がん研究センター 社会と健康研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 笹月 静(国立がん研究センター 社会と健康研究センター)
  • 片野田 耕太(国立がん研究センター がん対策情報センター)
  • 斎藤 博(国立がん研究センター 社会と健康研究センター)
  • 濱島 ちさと(国立がん研究センター 社会と健康研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
9,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国におけるがんの予防および検診について、エビデンスは蓄積されつつあるものの、必ずしも正しく実践されていない、また、逆にプラクテイスがエビデンスより先行しているエビデンス・プラクテイスギャップが存在する。このギャップを低減するためのがんの予防・検診の新たなあり方に関する研究を行った。具体的にはリスク層別化に関する研究および検診における過剰診断の可能性に対する検討を実施した。
研究方法
I. リスク層別化に関する研究
多目的コホート研究20,000人のデータに基づく胃がんのABC分類を使用した予測モデルにおける外的妥当性の検討についてはc-indexおよびNam-d’Agostino’s Chi-square testを用いて検討した。がん統計に基づくリスク因子別の胃がん生涯累積罹患・死亡リスクの推定については、ABC分類のメタ解析の結果、地域がん登録に基づく2011年全国推計値、人口動態統計に基づく年齢階級別全死因死亡率および年齢階級別胃がん死亡率を組合せて、生命表法を用いて算出した。ピロリ菌感染・PG値のカットオフに関する研究については、多目的コホートの胃がんネステッド症例対照研究集団を対象とし、ABC法などのROC分析を行った。また、肺がんについて、リスク因子別の相対リスクの情報収集を行った。
II. 検診における過剰診断の可能性に対する検討
福島県で実施されている甲状腺検査の影響を定量化するために、甲状腺検査による有病数の観察/期待比(O/E比)を算出した。期待有病数は地域がん登録に基づく2001-2010年全国推計値の甲状腺がん罹患率から、観察有病数は福島県で報告されている2015年4月30日時点の診断数を年齢階級別受診率で補正した値を用いた。
結果と考察
I. リスク層別化に関する研究
多目的コホート研究に基づく胃がんのABC分類を使用した予測モデルにおける外的妥当性の検討については、妥当性集団における胃がん罹患率はA, B, C, Dの各群において0.306, 0.655, 2.501, 2.587であった。C-indexは0.786であり、オリジナル集団での値(0.768)とほぼ同等の良好なものであった。キャリブレーション分析の成績もp=0.74により有意ではなかった。集団のサンプルサイズは小さいことから、結果の解釈には注意を要する。がん統計に基づくリスク因子別の胃がん生涯累積罹患・死亡リスクの推定については、リスク因子別の胃がん生涯累積罹患リスクは、男性で、A~Dの各群の結果は2.6%、11.5%、28.3%、37.7%、女性で1.3%、5.9%、14.5%、19.4%であった。生涯で何人に1人罹患するかを求めると、各群、男性で38人、9人、4人、3人、女性で77人、17人、7人、5人であった。ピロリ菌の保有状況によって胃がんのリスクが大きく変わることが累積リスクという形でも確認された。ピロリ菌感染・PG値のカットオフに関する研究については2016年3月現在、論文投稿中であり、数値などの結果の詳細についての記載を控える。
II. 検診における過剰診断の可能性に対する検討
 福島県における20歳までの期待有病数は5.2、観察有病数は160.1、O/E比は30.8であった。期待有病数に甲状腺がんの増加傾向を考慮した場合(年増加率男性1.2%、女性4.5%)、期待有病数が7.2、O/E比は22.2であった。対象年齢を高くすると、もし被爆による影響があった場合の解釈が困難となることから、20歳までを対象とした。
結論
I. リスク層別化に関する研究
多目的コホート研究に基づく胃がんのABC分類を使用した予測モデルにおける外的妥当性の検討については、検証集団の規模は小さく解釈には注意を要するが、外的妥当性は良好な成績であった。今後、日本の記述データを用いたリスク因子別の累積罹患リスクの推定や、より現代に近いデータ集団を用いた妥当性検証を行い、実用化の範囲を広げていく必要がある。がん統計に基づくリスク因子別の胃がん生涯累積罹患・死亡リスクの推定においては、研究で用いた指標を他のがん種にも広げることで、効率的ながん予防法の立案につなげられる可能性がある。ピロリ菌感染・PG値のカットオフに関する研究については、1次スクリーニングとして用いることは必ずしも適切ではなかったが、除菌プログラムとの関連も含め、今後適切な活用法を検討すべきであろう。
II. 検診における過剰診断の可能性に対する検討
福島県における甲状腺がん有病数のO/E比の推定を行った。比較的安定的にデータが得られていると判断される20歳までを対象としたが、その場合の甲状腺がん有病数のO/E比は20~30倍であると推定された。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-09-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
201507026Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,300,000円
(2)補助金確定額
12,300,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,073,093円
人件費・謝金 4,549,026円
旅費 1,091,054円
その他 1,748,905円
間接経費 2,838,000円
合計 12,300,078円

備考

備考
自己資金:78円

公開日・更新日

公開日
2016-11-18
更新日
-