胃がん予防のための感染検査と除菌治療を組み込んだ成人および中高生に対するピロリ菌感染対策のガイドライン作成

文献情報

文献番号
201507018A
報告書区分
総括
研究課題名
胃がん予防のための感染検査と除菌治療を組み込んだ成人および中高生に対するピロリ菌感染対策のガイドライン作成
課題番号
H26-がん政策-一般-019
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 元嗣(北海道大学病院 光学医療診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 菊地 正悟(愛知医科大学 公衆衛生講座)
  • 神谷 茂(杏林大学 感染症学教室)
  • 奥田 真珠美(兵庫医科大学 地域医療学)
  • 伊藤 秀美(愛知県がんセンター研究所)
  • 藤森 研司(東北大学 社会医学・医療管理学講座)
  • 吉原 正治(広島大学 保健管理センター)
  • 井上 和彦(川崎医科大学 総合臨床医学)
  • 中島 滋美(滋賀医科大学 消化器・血液内科)
  • 間部 克裕(国立病院機構函館病院 消化器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
5,129,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者:間部克裕 北海道大学大学院医学研究科(平成26年4月1日~平成27年12月31日)→国立病院機構函館病院(平成28年1月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
成人および中高生に対するピロリ菌感染検査と除菌治療を組み込んだ胃がん予防対策を構築して、胃がん撲滅の実現化を推進する。成人、若年者、次世代への予防システムを考えている。
成人:1.さなざまな健診・検診でHp陽性者を拾い上げる。2. 医療機関への受診の勧め。3. 内視鏡検査で胃炎の確診後、感染者に除菌治療を施行。4. 除菌成功後胃癌リスクによって1-3年ごとに画像スクリーニング施行。
若年者:中学高校在学中にHp感染診断と陽性者に除菌治療。
次世代への感染防止:1.Hp陽性の母親は第1子妊娠前または出産直後に除菌。2. 他の世帯員は第1子出生前に検査して陽性なら除菌。
以上の実現のため以下の5項目を研究する。1)胃がんリスク分類の基準値の検討と評価、2)画像を用いた胃がんリスク分類の検討、3)未成年者への除菌治療の具体策作成、4)小児への感染防止策の実施に向けた具体案作成、5)胃癌予防効果の評価。
研究方法
胃がんリスク分類の基準値の検討と評価では、Hp抗体・PG値の結果と地域がん登録データをレコードリンケージしたデータセットを作成する。これを用いて、胃がんリスク分類の最適な基準値と、胃がん罹患予測精度を計算する。画像を用いた胃がんリスク分類の検討では、X線造影データとHp抗体・PG値を対応させ、X線造影の背景粘膜リスク評価の精度を求める。自動判定装置を用いて検診受診者を対象にリスク分類を行い、この成績を踏まえて企業とタイアップして検診現場に導入する。小児の感染防止策の実施に向けた具体案作成では、自治体と協力して20-39歳成人、出産見込み世帯の成人にHp検査と陽性者の除菌を勧奨する。この過程で具体的な勧奨方法に関する課題を抽出して、小児への感染防止のガイドラインを完成する。未成年者への除菌治療の具体策作成では、中学生を対象に尿素呼気試験を基準とした尿中抗体の精度を評価する。小児除菌例のデータ分析、学会との共同で未成年者除菌の登録制度を作成して、中高生に適した除菌法と安全性を検討する。自治体から事業運営の情報を入手し、中高校生対策のマニュアルを作成する。企業とタイアップして除菌薬の未成年者の適用拡大を申請する。胃癌予防効果の評価では、厚労省のNDB(認可済)を用いて、除菌治療、胃がんの内視鏡的治療、外科切除、化学療法を指標として、それぞれの実数を集計する。Hp診療の実態を解明して胃がん予防効果を評価する。
結果と考察
成人および中高生に対するHp感染対策のパイロット試験、アンケート調査から構築されたエビデンスを基に、胃がん予防対策のガイドラインを作成した。1)胃がんリスク分類の基準値の検討と評価:検診と地域がん登録データのレコードリンケージを行うため、群馬、徳島、広島でがん登録データ使用手続を進めた。2)画像を用いた胃がんリスク分類の検討:胃X線検診で萎縮やひだ腫大は胃癌発生が高く、要精査にするアルゴリズムにした。自動診断法(CAD)が完成した。3)未成年者への除菌治療の具体策作成:中高校生へのHp検査と除菌の取り組みについてのアンケート調査では2.4%で施行または予定されていた。スクリーニング検査は陰性反応適中度 100% の尿中抗体法、除菌は2次除菌レジメで98.3%であった。これらから中高校生のHp検査の実施手順や留意点を整理し指針をまとめた。4)小児への感染防止策の実施に向けた具体案作成:2自治体でのパイロット試験の結果を踏まえて、実施手順や留意点を整理し指針をまとめた。5)胃癌予防効果の評価:電子レセプトのデータベースを活用して、北海道の除菌状況をモニタリングした。保険適応拡大を受けてHp除菌は3倍に増えた。
結論
以上の指針を基に胃がん予防策が行われば、わが国から胃癌死亡者を撲滅することが可能となる。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-09-14
更新日
-

文献情報

文献番号
201507018B
報告書区分
総合
研究課題名
胃がん予防のための感染検査と除菌治療を組み込んだ成人および中高生に対するピロリ菌感染対策のガイドライン作成
課題番号
H26-がん政策-一般-019
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 元嗣(北海道大学病院 光学医療診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 菊地 正悟(愛知医科大学 公衆衛生講座)
  • 神谷 茂(杏林大学 感染症学教室)
  • 奥田 真珠美(兵庫医科大学 地域医療学)
  • 伊藤 秀美(愛知県がんセンター研究所)
  • 藤森 研司(東北大学 社会医学・医療管理学講座)
  • 吉原 正治(広島大学 保健管理センター)
  • 井上 和彦(川崎医科大学 総合臨床医学)
  • 中島 滋美(滋賀医科大学 消化器・血液内科)
  • 間部 克裕(国立病院機構函館病院 消化器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者:間部克裕 北海道大学大学院医学研究科(平成26年4月1日~平成27年12月31日)→国立病院機構函館病院(平成28年1月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
研究目的はHp感染と除菌治療による胃がん予防対策のシステム構築を行い、我が国からの胃がん撲滅の実現化を推進することにある。Hp除菌が胃がん発生を抑制するが、除菌では完全に胃がんを予防することはできず、除菌後も胃がんリスクが持続する。そのため胃がん予防には、成人には一次予防のHp除菌治療と二次予防の胃がんスクリーニング検査を組みあわせることが重要である。未成年者対策では、中高生に対するtest & treatと次世代への感染予防が重要である。2013年、Hp感染胃炎に除菌治療の保険適用拡大がなされ、医療機関での通常の診療の一環として、除菌治療を施行することが可能となった。実現のため以下の5項目を研究する。1)胃がんリスク分類の基準値の検討と評価、2)画像を用いた胃がんリスク分類の検討、3)未成年者への除菌治療の具体策作成、4)小児への感染防止策の実施に向けた具体案作成、5)胃癌予防効果の評価。
研究方法
胃がんリスク分類の基準値の検討と評価では、Hp抗体・PG値の結果と地域がん登録データをレコードリンケージしたデータセットを作成する。これを用いて、胃がんリスク分類の最適な基準値と、胃がん罹患予測精度を計算する。画像を用いた胃がんリスク分類の検討では、X線造影データとHp抗体・PG値を対応させ、X線造影の背景粘膜リスク評価の精度を求める。自動判定装置を用いて検診受診者を対象にリスク分類を行い、この成績を踏まえて企業とタイアップして検診現場に導入する。小児の感染防止策の実施に向けた具体案作成では、自治体と協力して20-39歳成人、出産見込み世帯の成人にHp検査と陽性者の除菌を勧奨する。この過程で具体的な勧奨方法に関する課題を抽出して、小児への感染防止のガイドラインを完成する。未成年者への除菌治療の具体策作成では、中学生を対象に尿素呼気試験を基準とした尿中抗体の精度を評価する。小児除菌例のデータ分析、学会との共同で未成年者除菌の登録制度を作成して、中高生に適した除菌法と安全性を検討する。自治体から事業運営の情報を入手し、中高校生対策のマニュアルを作成する。企業とタイアップして除菌薬の未成年者の適用拡大を申請する。胃癌予防効果の評価では、厚労省のNDB(認可済)を用いて、除菌治療、胃がんの内視鏡的治療、外科切除、化学療法を指標として、それぞれの実数を集計する。Hp診療の実態を解明して胃がん予防効果を評価する。
結果と考察
胃がん撲滅の実現化を推進するため、今研究の成績などのエビデンスを基に、成人および中高生に対するピロリ菌感染検査と除菌治療を組み込んだ胃がん予防対策の指針を作成した。また、行政が行う際の実施手順や問題点などを具体的に示した。成人、若年者、次世代への予防システムを以下のとおりである。
成人:1.胃がんX線検診を含めさなざまな健診・検診でHp陽性者を拾い上げる。2. 医療機関への受診の勧め。3. 内視鏡検査で胃炎の確診後、感染者に除菌治療を施行。4. 除菌成功後胃癌リスクによって1-3年ごとに画像スクリーニング施行。
若年者:行政、学校、医師会とタイアップし対策型として、中学高校在学中にHp感染診断と陽性者に除菌治療を施行。実施手順や留意点:①関係部署、医師会への説明と役割分担、予算化の目処、②保護者・住民への周知、検査機関の選定、問合わせ対応体制の整備、③1次検査:保護者への通知と容器の配布・収集、④検査結果の判定・通知、⑤2次検査の検査法と実施場所、陽性者の除菌と経過観察、副作用への対処。1次は尿中抗体検査、2次は便中抗原検査か尿素呼気試験
次世代への感染防止:1.Hp陽性の母親は第1子妊娠前または出産直後に除菌。2. 他の世帯員は第1子出生前に検査して陽性なら除菌。実施手順や留意点:①これから出産が予定される高校生以上40歳未満の男女に本事業の情報を流して受診を勧める、②保健センターなどで説明の上、検査容器を渡す、③除菌治療の案内を含めて結果を郵送する。
結論
以上の指針を基に胃がん予防策が行われば、わが国から胃癌死亡者を撲滅することが可能となる。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

総合研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-09-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201507018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
Hp除菌が胃癌発生を抑制するが、除菌では完全に胃癌を予防はできず、除菌後も胃癌リスクが持続する。そのため胃癌予防には、成人には一次予防のHp除菌治療と二次予防の胃癌スクリーニング検査を組みあわせが重要と示した。未成年者対策では、中高生に対するtest & treatと次世代への感染予防の重要性も報告した。Hp感染と除菌治療による胃癌予防対策のシステムを提案して、わが国の胃癌撲滅の道筋を示した。
臨床的観点からの成果
ABCリスク検診におけるA群に、Hp既感染者やHp陽性者が混入する問題については、内視鏡所見を加えて偽A群の割合を示し、またHp抗体価3~10をA群から除くと偽A群は8%になることを報告した。また、中高校生に対するHpスクリーニングとして尿中抗体法が適性陰性率が100%であった。RCTにとり除菌治療は二次除菌レジメで有意に除菌率が高いことを証明した。
ガイドライン等の開発
この研究の成果を以て、日本ヘリコバクター学会のHp感染の診断と治療のガイドラインが7年ぶりに改訂された。今回のガイドラインには新規項目として胃癌予防の項目が新たに追加され、成人と若年者に分けた記載がなされた。
その他行政的観点からの成果
IARCの勧告に従って胃癌撲滅の実現化を推進するため、行政として除菌による胃癌予防対策を行う場合のため、成人および中高生に対するピロリ菌感染検査と除菌治療を組み込んだ胃がん予防対策の指針を作成した。行政が予防策を行う際の実施手順や問題点などを具体的に示した。
その他のインパクト
2014年のWHO・IARCの勧告を受け、わが国の胃癌撲滅にはHp除菌と画像スクリーニングを組み合わせたTest, Treat, and Screeningを基本とした胃癌予防策を世界に先駆けて構築することができる。中・高校生についてのHp検査と除菌については、北海道医師会の輿望で道として動いている。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
17件
その他論文(英文等)
31件
学会発表(国内学会)
108件
学会発表(国際学会等)
17件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
121件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ueda J, Nakajima S, Kato M, et al.
Prevalence of Helicobacter pylori infection by birth year and geographic area in Japan.
Helicobacter , 19 (2) , 105-110  (2014)
原著論文2
Okuda M, Osaki T, Kikuchi S, et al.
Low prevalence and   incidence ofHelicobacter pylori infection in children: a population-based study in Japan.
Helicobacter , 20 (2) , 133-138  (2015)
原著論文3
Watanabe M, Ito H, Hosono S, et al.
Declining trends in prevalence of Helicobacter pylori infection by birth-year in a Japanese population.
Cancer Science , 106 (12) , 1738-1743  (2015)

公開日・更新日

公開日
2016-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201507018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,667,000円
(2)補助金確定額
6,667,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,310,817円
人件費・謝金 622,388円
旅費 1,599,660円
その他 665,667円
間接経費 1,538,000円
合計 6,736,532円

備考

備考
分担者 川崎医科大学 井上和彦先生は、必要物品を購入するため自己資金を投入したため。
自己資金:69,532円

公開日・更新日

公開日
2016-11-18
更新日
-