急性期、回復期を含む医療機能に応じた患者の病態評価と医療資源配分のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201501023A
報告書区分
総括
研究課題名
急性期、回復期を含む医療機能に応じた患者の病態評価と医療資源配分のあり方に関する研究
課題番号
H27-政策-指定-009
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
伏見 清秀(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医療政策情報学)
研究分担者(所属機関)
  • 石川ベンジャミン光一(国立がん研究センターがん対策情報センターがん統計研究部がん医療費調査室)
  • 今中雄一(京都大学医学研究科・医療経済学)
  • 阿南 誠(国立病院機構九州医療センター医療情報管理センター)
  • 康永秀生(東京大学大学院医学系研究科)
  • 藤森研司(東北大学大学院医学系研究科医学部医療管理学)
  • 池田俊也(国際医療福祉大学薬学部薬学科)
  • 松田晋哉(産業医科大学医学部公衆衛生学)
  • 堀口裕正(国立病院機構本部総合研究センター診療情報分析部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
33,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的を以下の2つとした。
① 医療資源必要量を適正に反映する重症度を考慮した診断群分類の精緻化と急性期、回復期、外来診療を含む評価手法の開発
② 地域医療を含む医療機能と医療の質の評価につながるDPCデータ活用手法の開発
研究方法
研究に使用する厚生労働省DPC調査データ(各施設が厚生労働省に提出するDPC関連データ、様式1、様式3、D/E/Fファイル)は、医療機関と個別に守秘義務契約を結んだ上で収集し、分析資料とした。外来についてもE/Fファイルを提出できる施設については、それらも収集し分析対象とした。必要に応じて、救急、周産期、病棟機能等に関するデータを収集して研究を進めた。
結果と考察
昨年度までの研究に引き続き、傷病名、手術・処置等に基づく重症度を考慮した評価手法(CCP、Comorbidity Complication Procedure、マトリックス)の設計手法を検討した。在院日数および包括範囲医療費の医療資源必要度を指標とした多変量解析等により、重症度をより精緻に評価できる可能性を示した。
脳卒中領域では、脳梗塞のCCPM原案を作成した。入院時JCSに加えて、発症時期、発症前Rankin Scale、処置情報、副傷病情報を精緻化した定義テーブルを作成した。その上で、組み合わせ上発生しうる全ての分類を樹形図形式に書き下した素樹形図ごとに、在院日数(ALOS)、1日当たり包括範囲点数(dDPC)を集計し、ALOSとdDPCそれぞれを一定の範囲で階級化したカテゴリごとに集計し、最終的に7分類案を示した。手術フラグ99を中心に分類を集約しながら一定の説明力を維持して出来高となる分類を削減できることを示した。
肺炎では、0歳、15歳、65歳、75歳等の年齢区分、A-DROPによる肺炎重症度スコアを加えることによって、現行6分類を11分類に細分化したCCPM分類案を作成した。分散分析による統計的な評価で、現行分類に比して総合的な改善を認めるとともに、専門家から臨床的妥当性が評価された。
糖尿病では、年齢、インスリンの使用、微笑血管合併症、大血管合併症、認知症などの併存症が主に在院日数に影響する可能性が示され、これらの情報から5分類のCCPマトリックス分類案を提示し、現行3分類から精緻化され、説明力が改善することが示された。
循環器領域では、特に心不全、弁膜症、不整脈の相互に関係性の深い疾患群を一群と捉えて、主たる手術および様々な処置と重症度指標を用いた解析により、これらの疾患群を一つのCCPマトリックス構造で評価できる可能性が示唆され、引き続き検討を続けることとした。
CCPマトリックスは、より医療資源必要度の説明力が高い医療資源必要度の精緻な評価を、実地臨床への親和性の高さやDPC分類の様々な医療評価への応用可能性につながる傷病名分類を上位に位置づける現行の我が国のDPC分類体系に持ち込むための手法といえる。DPC分類構造を大きく変更することは、診療報酬支払い業務等を混乱させるリスクもあり、今回示したようなCCPマトリックスの導入方法は、今後、多くの分類に展開させる可能性を十分に持っていると考えられる。来年度の診療報酬改定での影響を分析した上で、CCPマトリックスの導入拡大について引き続き検討することとした。
地域における病院機能の評価に関して、患者住所地情報を用いて地理情報システム(GIS)を利用して詳細な検討を行い、個別病院の診療圏の可視化、地域内の病院の空間配置の可視化などを明らかとした。また、DPCデータによって、疾患別の診療プロセス時系列分析を行い、入院初期の医療密度が非常に高い期間、その後、一定程度の診療密度が必要とされる期間、退院に向けて医療密度が比較的低い期間があることを示し、それらを病床機能の評価に使う可能性を示した。これらを元に、病床機能ごとの医療需要とその将来推計を行う可能性を示した。
医療の質の評価手法の開発では、DPCデータの臨床疫学研究への応用手法を開発し、複数の査読付き英文専門誌に成果を発表した。
診療報酬支払制度の適正な運用に必要なDPC情報の質の確保に関して、医療資源病名、副傷病等の適正な選択、記録方法を明らかとするためにDPC傷病名コーディングテキストを公表し、改定を進めた。
厚労省との定期的な検討会において、DPC包括評価における再入院、転帰の評価方法、入院日数Ⅲの固定化の手法、より適正な診療報酬評価のあり方等について分析を行った。
結論
本研究は、DPC診断群分類の今後の維持・整備手法を明らかとし、次期以降の改訂手法の基盤を提供するとともに、DPC包括評価の妥当性の確保につながる分析と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2016-11-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201501023C

成果

専門的・学術的観点からの成果
当該研究は平成27年度単年度研究であり、研究結果の一部は平成28年度およびそれ以降の診療報酬改定におけるDPC制度の改定に反映されると考えられる。本研究の成果を活用して、データ分析に基づく診断群分類の統合または精緻化、コード体系の整備のあり方が検討された。平成28年度以降のCCPマトリックスを含む診断群分類整備方針が検討され、MDC別の研究班での検討資料を提供した。
臨床的観点からの成果
DPC病院の診療内容の透明化、医療の質の確保、DPC情報の精度向上等を目的とする病院指標については、平成29年度の病院情報の公表の導入の方向が中医協DPC評価分科会において決定され、今後詳細な手法を検討することとなった。
ガイドライン等の開発
適切な診療報酬制度の維持とDPCデータの精度向上のために平成26年度版のDPC傷病名コーディイングテキストの作成を行った。
その他行政的観点からの成果
内閣府の「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」および、厚生労働省の「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」に報告された疾病ごとの診療密度の時間経過の分析を応用して病床機能を評価する手法について、引き続き検討を進めた。診療密度の観点から、疾病の高度急性期、急性期、回復期、慢性期等の病期を分類し、それぞれの医療機能区分毎の医療需要を推計するとともに、疾病構造の変化を反映させた将来の地域医療費を推計する手法について検討を進めた。
その他のインパクト
全国10カ所でのセミナーの開催によりDPC制度の知識普及を図った

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
63件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
平成28年度診療報酬改定でのCCPマトリックスの導入
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-08-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201501023Z