文献情報
文献番号
201451020A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトiPS細胞由来肝/小腸細胞による再現性のある薬物代謝酵素・トランスポーター等の薬物誘導性評価試験の開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
石田 誠一(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター薬理部)
研究分担者(所属機関)
- 松永 民秀(名古屋市立大学大学院 薬学研究科)
- 粂 昭苑(東京工業大学 生命理工研究科)
- 樋坂 章博(千葉大学大学院 薬学研究院)
- 水口 裕之(大阪大学大学院 薬学研究科)
- 梅澤 明弘(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所 再生医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【委託費】 医薬品等規制調和・評価研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
厚生労働省より公布予定の「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(案)」によると、薬物のin vitro酵素誘導性試験ではヒト初代培養肝細胞(3ドナー以上)を用いること、経口投与薬では腸管上皮での薬物による酵素誘導の影響を考慮することが求められている。しかし、試験に用いる細胞に関しては、未だ、肝臓細胞の場合はドナー間差(ロット差)や供給の不安定さ、小腸の場合は細胞標本の入手困難が問題となっている。本研究では、これら問題を克服する細胞資源として期待が寄せられているヒトiPS細胞由来肝/小腸細胞を用いた、薬物代謝酵素やトランスポーター等の薬物による誘導を評価する試験法の開発を行う。本年度は、肝細胞では市販細胞における薬物酵素誘導性、腸管上皮細胞は分化誘導法の改良による成熟化を検討した。また、薬物誘導性評価に用いる標準物質を選定に着手した。
研究方法
1.iPS細胞由来肝細胞の培養、2.iPS細胞の腸管上皮細胞への分化誘導、3.iPS細胞由来肝細胞のゲノムDNAのメチル化解析、4.臨床試験の薬物相互作用の情報を小腸と肝臓の寄与を分離して評価する手法(CR-Fg-IR法)の開発、5.誘導能予測モデル開発のための基礎データ収集を行った。
結果と考察
入手したiPS細胞由来肝細胞はいずれも試験に用いる段階において、殆ど全ての細胞が敷石状の形状をしており、肝実質細胞へと分化していたと考えられる。 OmeprazoleによるCYP1A2の発現誘導とRifampicinによるCYP3A4の発現誘導が観察され、薬物誘導性評価への応用に向けて期待できる結果が得られた
生体内腸管組織は粘膜層、粘膜下層、筋層、漿膜下組織、漿膜に分かれており、吸収、免疫、蠕動といった複雑な機能を有する臓器である。腸管組織は、発生・分化・機能において複雑な器官であるが、経口薬物代謝評価系構築のためにはその分化誘導系の構築は重要である。今回我々が見出した低分子化合物を用いて分化誘導させた細胞は、スクラーゼ–イソマルターゼをはじめとした腸管上皮細胞マーカーやP-gp、BCRPなどの薬物トランスポーター、主要な薬物代謝酵素であるCYP3A4を発現していた。また、形態学的にも敷石状で腸管上皮細胞に類似した形態を示していたことから、この分化させた細胞は腸管上皮細胞様細胞であることが示唆された。さらに、薬物代謝酵素活性やペプチドの取り込み能に加え、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3による誘導能も認められたことから、腸管上皮細胞に特異的な薬物動態学的機能を有する細胞であることも明らかとなった。
CYP3Aの多数の基質薬と阻害薬について、CR-Fg-IR法に従うことで小腸と肝臓の阻害の程度を分離評価することに成功した。その結果、グレープフルーツジュースでは阻害が小腸選択的におきていること、そのほかの阻害薬では一般に小腸における阻害は肝臓よりもやや弱いことが明らかとなった。
薬物誘導性評価に用いる標準物質を選定に関しては、OECDガイドライン案に提示されている7種の化合物の誘導性評価における有用性を今後検討していくこととした。
生体内腸管組織は粘膜層、粘膜下層、筋層、漿膜下組織、漿膜に分かれており、吸収、免疫、蠕動といった複雑な機能を有する臓器である。腸管組織は、発生・分化・機能において複雑な器官であるが、経口薬物代謝評価系構築のためにはその分化誘導系の構築は重要である。今回我々が見出した低分子化合物を用いて分化誘導させた細胞は、スクラーゼ–イソマルターゼをはじめとした腸管上皮細胞マーカーやP-gp、BCRPなどの薬物トランスポーター、主要な薬物代謝酵素であるCYP3A4を発現していた。また、形態学的にも敷石状で腸管上皮細胞に類似した形態を示していたことから、この分化させた細胞は腸管上皮細胞様細胞であることが示唆された。さらに、薬物代謝酵素活性やペプチドの取り込み能に加え、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3による誘導能も認められたことから、腸管上皮細胞に特異的な薬物動態学的機能を有する細胞であることも明らかとなった。
CYP3Aの多数の基質薬と阻害薬について、CR-Fg-IR法に従うことで小腸と肝臓の阻害の程度を分離評価することに成功した。その結果、グレープフルーツジュースでは阻害が小腸選択的におきていること、そのほかの阻害薬では一般に小腸における阻害は肝臓よりもやや弱いことが明らかとなった。
薬物誘導性評価に用いる標準物質を選定に関しては、OECDガイドライン案に提示されている7種の化合物の誘導性評価における有用性を今後検討していくこととした。
結論
細胞資源として期待が寄せられているヒトiPS細胞由来肝/小腸細胞を用いた薬物代謝酵素やトランスポーター等の薬物による誘導を評価する試験法の開発を行った。その結果、本年度は、肝細胞では市販細胞における薬物酵素誘導性を検討し、CYP1A、CYP2C9、CYP3A4の誘導能を有する細胞を見出した。腸管上皮細胞は分化誘導法の改良による成熟化を検討し、腸管上皮細胞の成熟化を促進する化合物を見出すことが出来た。また、分化誘導された腸管上皮細胞は腸管上皮細胞マーカーを発現しており、CYP3A4の発現と1α,25-ジヒドロキシビタミンD3による誘導能が認められた。OECDガイドライン案等を参考に薬物誘導性評価に用いる標準物質を選定に着手した。
公開日・更新日
公開日
2015-06-25
更新日
-