医療機器のMRI装置からの影響の評価と情報提供のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201451003A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機器のMRI装置からの影響の評価と情報提供のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
黒田 輝(東海大学 情報理工学部 情報科学科)
研究分担者(所属機関)
  • 青木 茂樹(順天堂大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【委託費】 医薬品等規制調和・評価研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 体内埋め込みあるいは一時留置型医療機器に対するMRIの影響については,既に国際技術仕様に基づく評価方法が整備されつつある一方,わが国で統一された評価手法がまだ存在しない.また当該機器の添付文書においてはMRIに対する影響が統一された形で記載されていないため関係者に必要な情報が提供されていない.そこで本研究ではまず海外状況の調査を行ない世界における現況を把握した後,国際規格に基づいて国内における評価を行なうためのガイドラインの作成を行った.さらに医療従事者へのヒヤリング等に基づいて適切で実効的な情報提供方法,具体的には添付文書におけるMRI安全に関する情報の記載方法ならびにそのような安全情報の記載を必要とする対象機器の絞り込み方法を検討し提案した.
研究方法
 まず海外状況調査については,評価手法・基準として,ISO(国際標準化機構)のTS(技術仕様書)10974 第1版ならびにこの技術仕様の基礎となっているASTM(米国材料・試験協会)の試験規格F2182,F2213,F2052, F2119, F2503の内容を精査した.
 海外におけるガイドラインの調査として,FDA(米国食品医薬品局)による"Establishing Safety and Compatibility of Passive Implants in the Magnetic Resonance (MR) Environment, Guidance for Industry and Food and Drug Administration Staff"ならびに"MRI Safety Standards, Guidelines & Regulations for Medical Devices in the USA"を精査すると共に,FDAの担当者らの議論を行い,現状に関する情報交換を行なった.
 上述の作業と併行して,医療従事者などへの適切な情報提供のあり方を検討するために,放射線科の医師・技師を対象としたヒヤリングを行ない,現実に検査の現場が必要としている情報ならびに情報提供のあり方を詳細に調べた.
 以上の内容を踏まえ,添付文書等への記載内容を検討し,記載方法の案にまとめた.加えて,このようなMRIに関する安全性情報の提供が必要な対象機器を絞り込むための具体的な方法の提案及びそれによる機器リストの作成を行った.
結果と考察
 海外における評価手法・評価基準の検討結果として,ASTMの試験規格F2182,F2213,F2052, F2119, F2503を含む,ISO/TS10974の,和文要約を作成した.次に海外におけるガイドラインに関する調査結果として,FDAによる"Guidelines & Regulations"の要約を作成した.またISO・ASTMの規格・技術仕様の国内向けの要約を作成した.
 医療従事者などへの適切な情報提供のあり方に関する検討では,60の医療機関に対するアンケートを実施し,10項目についての回答を得た.その結果98%の施設が添付文書における情報提供を望んでいる現状が明らかになった.
 以上の結果に基づき,添付文書への記載方法案として,まずMR安全性試験を行なっていない場合にはその旨を明記すること,安全性試験を行なった場合には、その結果に基づいてASTM2503に準拠した用語と表記を用いて安全性のレベルを記載すること,MR安全性のレベルを決定するに至った過程に関する情報についても記載すること,などをまとめた案を作成した.対象機器を絞り込むため,体内埋め込み型医療機器については全てMRI安全性を記載すること,一時留置など体内埋め込みでない機器については複数の放射線科医師ならびに診療放射線技師の意見に基づいて,当該機器がMRI検査室あるいはMRI装置に入りうるかどうか,ならびに当該機器の取り外しのために医師を含む専門技術者による作業が必要かどうかを目安にするという方法を提案した.この方法に基づいて,実際に,118品目の(体内埋め込み型ではない)医療機器に対する判定を行い,対象機器リスト案を作成した.
結論
 本研究で得られた医療機関に対するアンケート結果を踏まえて,まずは各医療機器メーカがMRI安全性情報の重要性を認識することが望まれる.同時にMRI安全性試験・評価方法に関する規格・技術仕様を十分に理解し,本研究で得られた対象機器の選択案や添付文書への記載案に基づいて,医療従事者に対して適切な情報提供をして下さることを希望する.
 一方,医療機関においてはそういった添付文書の内容を十分に理解し,尊守することが必要である.またこれらメーカと医療現場,さらには海外認証機関との調査を図るべく,放射線科関連学会が研究・啓蒙に務めるべきことは当然である.

公開日・更新日

公開日
2015-09-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-02-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201451003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 体内埋め込み・一時留置型医療機器に対するMR安全性に関する海外状況調査を行なった後,国際規格に基づく国内評価を行なうためのガイドラインを作成した.さらに医療従事者へのアンケートに基づき,添付文書におけるMR安全性の記載方法ならびに対象機器絞り込み方法を具体的に提案した.加えてこれら規格・基準において今後採用される可能性が高い,区分励起法ならびに局所要素モデルを使った方法の解説資料を作成した.以上の成果は,これまで放射線科において懸案だったMR安全性の問題の解決に対する重要なステップである.
臨床的観点からの成果
 これまで体内埋め込み・一時留置型医療機器に対するMR安全性の評価・記載はメーカ・製品毎に様々であった.添付文書にMR安全性のことが触れられていなかったり,MR適合性試験を行なっていないのにMR禁忌といった表示がなされていたりという問題があった.本研究の成果に基づいて(1)MR安全性を明示すべき機器の絞り込み,(2)対象機器製造者に対するMR安全性ガイドラインの呈示,ならびに(3)統一された書式によるMR安全性の明示,が行われれば臨床現場における機器装着患者のMR検査の安全性を大いに改善できる.
ガイドライン等の開発
ガイドラインとしてISO・ASTMの規格・技術仕様について国内向け要約を作成すると共に,対象機器絞り込み方法,添付文書への記載方法を具体的に示した.さらにFDAによる"Guidance for Industry and Food and Drug Administration Staff"と"MRI Safety Standards, Guidelines & Regulations for Medical Devices in the USA"に基づく添付文書書式を提案した.
その他行政的観点からの成果
 上述のガイドライン作成・添付文書書式開発などの研究作業の実施にあたって,厚生労働省及びPMDA担当者,医療機器業界団体である日本医療機器テクノロジー協会(Medical Technology Japan, MTJAPAN)関係者ならびに医療従事者を交えた意見交換会,FDA担当者らとの意見交換会,ならびに本省・PMDA研究分担者・協力者による班会議を頻回に行った.2014年4月28日(月)の初回打ち合わせを含めて,このような会合は延べ10回に渡って行った.
その他のインパクト
 本研究の成果物,すなわち規格の要約,ガイドラインの要約,添付文書への記載方法などについては,日本磁気共鳴医学会安全性委員会主催の,「MR安全性講演会」ならびに同学会のMR適合性研究会,を通じて広く公表した.体内埋め込み型・一時留置型をはじめとして,医療機器がMRI装置内あるいはMRI検査室内に入る可能性がある場合には,本研究成果に示した記載案に基づいて,添付文書においてMRI安全性に関する適切な情報を提供すべきである,というのが我々のメッセージ(健康危険情報)である.

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-02-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201451003Z