文献情報
文献番号
201450007A
報告書区分
総括
研究課題名
統合医療(機能性食品、運動療法、アロマテラピー、精神療法)による肥満症治療の有効性・作用機序の検討
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
浅川 明弘(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 藤宮 峯子(札幌医科大学医学部)
- 矢田 俊彦(自治医科大学医学部)
- 上園 保仁(国立がん研究センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【委託費】 「統合医療」に係る医療の質向上・科学的根拠収集研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
より豊かな生活・社会の実現に向け、西洋医学のみならず、伝統医学や医学以外の学問を統合し、医療を実践することが必要とされている。一方、統合医療を含んだ新たな療法の重要な問題点として、エビデンスレベルの精度の低さ、作用機序の解明の遅れが挙げられる。本研究は、麹、運動、アロマ、精神療法の有効性及び作用機序の解明を、特にこころの健康に焦点を当て、ヒトにおける研究とin vivoにおける動物、ex vivo、in vitroにおける細胞、受容体を用いた基礎研究によって行い、より科学的な根拠に基づく、肥満症などに対する統合医療のエビデンスレベルの向上に寄与することを目的として実施された。
研究方法
鹿児島大学、札幌医科大学、自治医科大学、国立がん研究センター研究所において、高脂肪食飼育マウス、レプチン受容体欠損db/dbマウスおける、紅麹抽出液の経口投与の摂食量、飲水量、体重、不安様行動、脂肪・肝臓重量、糖・脂質代謝、視床下部‐下垂体‐副腎への影響、高脂肪食飼育マウスにおける、自発運動の活動量、摂食量、飲水量、体重、不安様行動、脂肪・筋・肝臓重量、糖・脂質代謝、視床下部‐下垂体‐副腎への影響、健常男性における、ヨーガ実施の血圧、脈拍、心理テスト、血中のグルコース、インスリン、コルチゾールへの影響、正常マウス、レプチン受容体欠損db/dbマウスにおける、ラベンダー吸入の血中のコルチコステロン、視床下部の神経ペプチドの発現への影響、健常男性における、ラベンダー芳香浴の血圧、脈拍、心理テスト、血中のグルコース、インスリン、コルチゾールへの影響、肥満症罹患者における、臨床心理士介入のbody mass index (BMI)への影響、室傍核のcorticotropin - releasing factor (CRF)ニューロンにおける、ラベンダーの精油の細胞内カルシウムイオン濃度への影響、adiponectin発現細胞における、紅麹抽出液のadenosine monophosphate-activated protein kinase (AMPK)の活性化、発現量への影響、を検討した。
結果と考察
食餌性肥満モデルマウスへの紅麹抽出液の経口投与は、摂食量、体重を減少、糖・脂質代謝を改善させた。アディポネクチン受容体1、2型を発現するヒト肝細胞においては、紅麹抽出液は、AMPK蛋白発現量を増加させた。食餌性肥満モデルマウスにおける回転輪による運動は、体重を減少、不安様行動を減弱、糖・脂質代謝を改善させた。また健常者におけるヨーガ実施の前後において、収縮期血圧及び不安尺度得点が低下した。ラベンダーの吸入は、正常及び肥満マウスを用いた研究において、視床下部のCRFmRNAの発現を低下させ、室傍核におけるc-FosとCRFの蛋白レベルの発現に影響を与えた。CRFニューロンを用いた検討においては、ラベンダーの精油は、セロトニンによって誘発された[Ca2+]iの増加を抑制した。また、健常者におけるラベンダー芳香浴の前後において、血圧及び抑うつ尺度得点が低下した。症例数が限られた診療記録を用いた後ろ向き検討においては、臨床心理士の介入の有無は、肥満症罹患者のBMIに有意な影響を与えなかった。
結論
本研究において、紅麹、運動、ヨーガ、ラベンダー、精神療法の生体への作用及び作用機序の一部が解明されるとともに、肥満症をはじめとした生活習慣病の治療・予防に対する有効性が示唆された。今後、医療費の抑制、国民の健康、より豊かな生活に貢献するため、麹由来の食品、運動、ヨーガ、アロマテラピー、認知行動療法などの有用性に関する研究が、さらに進行することが必要であると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2015-05-19
更新日
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