多剤耐性結核の分子疫学的解析、診断・治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201447002A
報告書区分
総括
研究課題名
多剤耐性結核の分子疫学的解析、診断・治療法の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
服部 俊夫(東北大学 災害科学国際研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 小林信之(国立病院機構東京病院)
  • 永井英明(国立病院機構東京病院)
  • 加藤誠也(公益財団法人結核予防会結核研究所)
  • 慶長直人(公益財団法人結核予防会結核研究所)
  • 下内 昭(公益財団法人結核予防会結核研究所)
  • 野内英樹(公益財団法人結核予防会複十字病院)
  • 鈴木定彦(北海道大学人獣共通感染症センター)
  • 切替照雄(国立国際医療研究センター)
  • 露口一成(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
年度の途中での、研究者の交替、異動はありませんでした。

研究報告書(概要版)

研究目的
結核は世界の重要感染症であり、多剤耐性菌出現が問題となっている。特にアジア諸国では、さらに深刻な薬剤耐性結核が生じうる。ここでは多剤耐性結核の基礎データーを収集し、今後の対策に資する。故に
(1)多剤耐性結核患者の調査を行い、発症・拡大の防止と、早期発見治療を行う。
(2)アジア諸国の多剤耐性結核の情報を収集。
(3)結核菌の分子疫学的解析を行う。
(4)多剤耐性結核患者と免疫弱者の免疫状態を解析する。またHIV・腎不全合併多剤耐性結核の調査を行う。
また、研究を行う必要性としては、国内とアジア地域における多剤耐性結核の基礎データを収集し、結核対策立案に反映させる。
研究方法
(1)国内での多剤耐性結核の実態とその遺伝子解析
a.平成23年から25年まで海外から輸入される多剤耐性結核に関する研究を行い、外国人結核は多剤耐性率が高く保健行政において、多剤耐性を作らない努力が必要。
b.多剤耐性結核の遺伝子解析
SNPsを用いた遺伝子型分類システム。全ゲノムシークエンスによる分子疫学解析。簡便•安価な結核菌遺伝子型別法(SpoligoArray法)。
(2)アジア諸国での多剤耐性結核の実態とその遺伝子解析と宿主要因
a. アジア諸国の結核菌遺伝子の調査を行う。
b.多剤耐性結核菌の多い北京型を同定する。
c.ベトナムの多剤耐性結核患者の治療反応性と関連する指標を探索し、治療管理の指標とする。
(3)前研究班で作成した「外国人結核対策マニュアル」に新情報を追加記載
(4)HIVや腎不全などのリスクの高い群へのIGRA実施と発症予防対策
(5)DOTSを中心とする患者治療支援の強化と多剤耐性結核の迅速診断法と陰圧室治療の早期開始。
結果と考察
アジアの多剤耐性結核
1.2007~2012年の間の中国、黒龍江省のMDR結核は22.8%に検出され、再治療患者のMDR率は新規患者の3倍であった。
2.インドネシアの潜在性結核研究 (服部)
TB患者はHCとLTBI群と比較して有意に高い血漿中の抗TBGL IgA、IgG、抗TDM及び抗LAM抗体価を示した。
東京における結核
1.東京病院におけるMDR-TB症例は最近5年間で12例で、うち初回治療が4例、再治療が8例外国人が4例、HIV陽性が1例であった。
2.結核菌全ゲノム解読による分子疫学解析
2001年2月から2012年6月までに、国立国際医療研究センターにおいて診療した外国人および日本人結核患者由来の結核菌259株の全配列を決定した。薬剤感受性遺伝子の解析では、INH耐性が15例、RFP耐性が1例、LVFX耐性が2例に検出された。また、Lineage 2 がnon-Lineage 2 と比べて有意に耐性率が高いことが明らかとなった。
薬剤耐性株の解析
2010年にミャンマーで分離された多剤耐性結核菌株のkatG、inhA並びにrpoB遺伝子の塩基配列を分析した。その結果、約60.5%の株においてkatG、inhA遺伝子の何れかまたは両方に遺伝子変異が見出された。また、66.5%の株においてrpoB遺伝子に変異が見出された。
大阪市の活動
1. 大阪市における多剤耐性肺結核の状況
1.2009〜13年に登録された肺結核のうちMDRは43名(1.2%)であった。外国人の割合をみると、初回治療ではMDR群4名(16.0%)、再治療ではMDR群4名(22.2%)であり、初回治療・再治療ともにMDR群で外国人の割合が有意に高かった。
2.結核菌迅速薬剤感受性検査法の臨床応用に関する研究(露口)
LiPAで耐性と判定された検体のうち小川比率法で多剤耐性と判定されたのは71.4%でありLiPA
を用いて早期にMDRを隔離できた。
宿主要因解析
ベトナムのMDR-TBにおいてadiponectinと制御性T細胞の最も良いマーカーと言われるFOXP3遺伝子の発現が逆相関していた。
全国アンケートでHIV合併MDR-TBを1例認めたが、2007年からMDR-TB合併例は3例に過ぎず、増加傾向にはないと考えられた。
腎疾患患者のLTBIについてEli-spotで検索した結果、26.5%がLTBIであることが判明した。
結論
日本におけるMDR-TB症例は少ないが、確実に外国人のMDR-TBの比率が増加しつつある。
アジアにおいてはMDR-TBの患者は多く極めて深刻な状態である。
そのような結核菌の流布を防ぐためにNGSによる遺伝子の解析により薬剤耐性遺伝子の同定、系統樹解析及びアジア諸国で行えるPOC testing の研究が重要である。
またLTBIから結核に進展する際の、バイオマーカーの同定が大事である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201447002C

収支報告書

文献番号
201447002Z