老人性難聴に対する詳細な聴取評価法と聴覚認知訓練の開発

文献情報

文献番号
201446012A
報告書区分
総括
研究課題名
老人性難聴に対する詳細な聴取評価法と聴覚認知訓練の開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山岨 達也(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 健(帝京大学医学部耳鼻咽喉科)
  • 狩野 章太郎(東京大学医学部附属病院)
  • 柿木 章伸(東京大学医学部附属病院)
  • 樫尾 明憲(東京大学医学部附属病院)
  • 小町 守(首都大学東京システムデザイン学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 障害者対策総合研究開発
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
7,361,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
老人における難聴では末梢性の聴覚障害の他に、音信号の分析・抽出・認知・記憶・理解といった中枢における聴覚処理の障害が大きく影響していることが明らかとなっている。本研究は、中枢聴覚機能の評価方法の開発及び、中枢聴覚機能のリハビリ・トレーニングを目的としたトレーニングプログラムの開発を行うことを目的とする。
研究方法
1.中枢聴覚機能の評価方法の開発
 中枢聴覚機能の評価方法として、下記3項目を検討する。
A. 雑音下におけるs67式語音聴取能検査
通常臨床において使用しているs67式語音聴取能検査の検査音にスピーチノイズを挿入し、ノイズの大きさに伴うその正答率を評価した。静寂下において正答率が最高となる音圧を用いて、S/N比+10より開始し正答率を測定する。その後正答率が20%をきるまでS/N比を5dBずつ下げてゆき、S/N比と正答率の関係を被験者の年齢に応じて解析する。
B. 長文節文章聞き取り検査
 長文節の文章・音声を作成するに当たり日本音響学会 新聞記事読み上げ音声コーパス(JNAS)を用いた。JNASは新聞記事文16176文を306名の話者により録音した音源である。この音源より、5~7文節という比較的長文の文章を抽出するプログラムを作成・抽出を行う。抽出した文章の聞き取りを若年健聴者・高齢者に対して施行し、正答率を比較する。
C. 事象関連電位の測定
 2種類の異なった音刺激を連続して聞かせ、経頭皮的に脳電位変化を測定した。健聴者を対象に様々な音刺激を聞かせることで電位変化の測定を試みた。
 2.中枢聴覚機能リハビリ・トレーニングプログラムの開発
 高齢者でも操作性がよく、かつプログラム開発も容易なApple社のi-Padをインターフェースとして採択し、開発を行った。
(倫理面への配慮)
開発した評価方法、リハビリプログラムを被験者を対象として行うに当たり、次のことを行う旨を東京大学倫理委員会へ届け出、承認を得た。1.対象者には事前にインフォームドコンセントを行い、同意書を得る。2.被験者資料については連結可能な匿名化を行い、対応表を厳重に管理する。データは施錠可能なロッカーあるいは外部と接続しないパスワードのかかったコンピュータに保管する。3.研究結果の発表においても、個人が特定できない形で行う。
結果と考察
1.中枢聴覚機能の評価方法の開発
 A.雑音下S67式語音聴取検査
東京大学及び分担研究施設である帝京大学においてすでに検査プログラムを完成し、データの取得を行っている。現在までに、49名のデータを取得した。感音難聴では静寂下での最高語音明瞭度が80%以上の耳に絞ると、若年者ではS/N=10dBまでは比較的正答率が保たれるのに対して、高齢者ではS/N=10dBより正答率の大幅な低下が認められた。

 B.長文節文章聞き取り検査
  コーパスより長文節文章を抽出するプログラムを完成した。ここより試験的に5文節、6文節、7文節の文章を抽出し、健聴者対象に施行した。今後高齢者を対象に聞き取りの正答率を評価する予定である。
C.事象関連電位の測定
 事象関連電位の測定システムを完成させた。健聴者を対象に異なる単音節刺激に対する事象関連電位の計測を確認した。今後刺激音を変更(母音・母音、母音・子音、後続母音が同一の子音など)し電位の変化の確認を行うとともに、高齢者を対象に同様の刺激に対する電位の変化を確認する予定である。
2.中枢聴覚機能リハビリ・トレーニングプログラムの開発
音高変化の弁別を行う課題、音の途切れ(Gap)の弁別を行う課題を基礎的な訓練プログラムとして、複雑な構文(~している~が~を~した)を実践的なプログラムとして聞き、それに合う絵を選択するプログラムを作成、ゲーム形式で行えるようにした。得られたデータはネットを介して回収が可能になっている。難易度はその正答率に応じて上昇するプログラムとなっており、継続して訓練が可能なものになっている。今後順次被験者を募集し施行していく予定である。
結論
本研究は、社会的に大きな問題となっている老人性難聴に対する新たな評価・治療手段を提供するものである。本年度の研究により評価・リハビリプログラムの骨格は完成しつつあり、来年度以降データを蓄積・改良することで、本邦における老人性難聴治療戦略を根本から変えることのできる成果を上げられると考えている。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201446012C

収支報告書

文献番号
201446012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,569,000円
(2)補助金確定額
9,569,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,968,201円
人件費・謝金 0円
旅費 286,328円
その他 110,260円
間接経費 2,208,000円
合計 9,572,789円

備考

備考
委託費全額執行のため、補助金確定額を超過する形で計上し、超過分の\3,789を「自己充当額」として別経費より支出。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-